第35話 小話4の1 まず市販品を購入だ
それは少し前のことになる。
香緒里ちゃんが誘拐されかけた次の日のこと。
「やっぱり香緒里も身を守れる何かが必要だよね。」
由香里姉がその話をきりだした。
「でも私の魔法は付与限定で攻撃出来ないです。」
「私の剣みたいなのを作ってもらえば。製作者もそこにいるし。」
「剣を振り回す腕力ないですし、技術的にも自信ないです。」
まあそうだ。
例の魔法を開発してしまったけれど、香緒里ちゃんは基本的には魔法工学科のごく標準的なタイプ。
特異なのは付与魔法だけ。
あとは倍率20倍の入学試験を乗り越えられた頭脳と運。
他は基本的に普通の人間と変わらない。
「そうなると、これは修君が取り組むべき事案でしょうか。」
そうかもしれない。
「なら修兄頼むです。私が使えてポシェットに入る大きさの護身用具をお願いします。お金はいくらかかっても構いませんから。どうせならクラウ・ソラス級の攻撃能力が欲しいです!」
とまあ俺はお願いされてしまった訳だ。
なので色々見繕って、必要な部品に一部18歳以下購入不可ものがあったので由香里姉の名前を借りて通販で購入し、学生会幹部室宛で送ってもらう。
荷物が届いて手狭になった例の部屋で色々細工をする。
ちなみに届いたのは特殊警棒型スタンガン、電動エアガン、ベアリング用鋼球6ミリ1キロ入り。
他は使う度に補充しているこの部屋のストックで足りる筈だ。
まず確認したのはスタンガン。
何故自分で作らずに製品を購入したのかというと、手間を省くのもあるが安全性も考慮してだ。
下手に俺がコイル巻いたりコンバータ自作したりして自作すると、人を確実に殺害してしまう威力にもなりかねない。
その点市販品は安全面をある程度は考慮して作ってある。
ある程度振ったり使ったりして確認したが、これはこれで完成した製品だ。
なのでほとんど改造せず香緒里専用に簡単なカスタマイズをするだけ。
電池部分を外して魔力電気変換器を付ける。
これは触れている者の魔力を電力に変換する汎用品。
香緒里ちゃんは攻撃魔法は使えないが魔力は十分にあるので大丈夫だ。
念のため発生電圧を6Vに調整するレギュレーター付けてグリップに銀で作った魔力導線を埋め込めば完成。
これを握って魔力を通せばスタンガンの放電が始まる。
俺のあまり自信がない魔力でもパチパチと放電音が鳴って威嚇効果は抜群。
まあこれは狭い場所での接近戦という限定された状況限定の武器だが。
本命はエアガンの方だ。
これを改造してある程度は抑止力のある性能にする予定。
なおこの島内というか特区内では銃刀法の適用はかなりゆるくなっている。
戦術級の戦闘力を持つ魔法使いがうようよいるのだから拳銃や刀など可愛いものだ。
特区内で銃刀法関連で禁止されているのは持ち込みのみ。
保持は認められているし正当防衛等の理由があれば使用もある程度は認められる。
そうでなければ鈴懸台先輩のクラウ・ソラスなんて持ち歩けない。
なのでエアガンを改造するのはこの島に限っては合法だ。
一応メカボックスを強化品に変えてシリンダーその他もアルミ製にしてギアも超硬工具用の鋼で作ったものに変える。
この辺は実物を元に俺の魔法で作成された逸品だ。
これくらいの大きさの部品なら魔法で加工してもそれほど負担はない。
バネもちょっと強力な俺の手製に変えた。
モーターはそのままだが俺の能力を駆使してファインチューン済。
後は使用者本人に必要な魔法をかけてもらうだけだ。
まずは分解したままの状態でバレル部分を取り出す。
工房の中央でバネに魔法をかける作業中の香緒里ちゃんが休憩に入ったのを見て声をかけた。
夏の小話シリーズ最終「護身武器」編になります。
よろしくお願いいたします。




