第33話 小話3の8 みんな鬱憤溜まってる
結論は出ている。
諦めること。
ほとぼりがさめるのを待つこと。
バネの見本を販売してから2週間が経過したが、今でも一日一時間位香緒里ちゃんはバネに魔法をかけている。
注文数は極力絞っているのだが、上級官庁からの恫喝じみたお願いやら学会の要請やら色々と断れない筋の依頼が結構あるのだ。
勿論断れない筋と言っても依頼を受けるからには代金をきっちり請求する。
お陰で香緒里ちゃんが急遽作った銀行口座の残高がとんでもないことになっているらしい。
「もし一生分くらいのお金が溜まったら、南の島でも買ってこのメンバーで一生遊び暮らしたいです。何もかも忘れたいです。」
「でもそうしたらきっと島の近辺に不審船がやってきて、香緒里を狙う組織と戦う刺激的な毎日が始まっちゃうよ、きっと。」
「せっかく修兄囲って優雅に暮らそうと思ったのにだいなしです。」
「なぬ!」
香緒里ちゃんの不用意な言葉に由香里姉が食いついた。
「その物件は私が先に予約済みの筈よ!」
「でも田奈先生も公認したのです。この魔法は修兄のお陰で出来たのだから、ヒモとして囲っておけと言ったのです。修兄も同意してくれると言ったのです。」
「修、本当?」
由香里姉がジト目で俺を見る。
「あれは言葉のアヤというやつで……それにニュアンスも変わっている気が……」
部屋の気温が一気に下がったようなきがする。
気のせいではない。
由香里姉付近にダイヤモンドダストが浮かんでいる。
氷の女王はお怒りだ。
「んもう!言いよってくる男が変なのばかりだからここに逃げてきたのに、ここでも言いよってくるのは駄目なのと変なのばかりだし。攻撃魔法使いなんて自衛隊か外人部隊か研究者くらいしか職が無いから食いっぱぐれのなさそうな幼馴染育てていたのに妹に食われかけているし……もう!」
霜のドレスを纏った女王が立ち上がる。
「よろしいならば戦争だ!」
「助太刀するよっ。」
光を放つ聖剣を構えた鈴懸台先輩が香緒里ちゃんの前にに出て由香里姉に立ちふさがる。
「ミドリまで私の敵になるのね。いいわよ。地獄で後悔しなさい。」
そして始まる魔法大戦。
次で小話「魔法開発記編」ラストです。




