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マシンナード ~機械オタクと魔女5人~  作者: 於田縫紀
第3章 迷い考えて作るんだ!~魔法工学生の夏~

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第25話 小話2終話 やり過ぎの夢が覚めた後

 香緒里ちゃんは俺のヒントには気づいていないようだ。

 なら正解を教えてやるか。


「櫛形の金属片でも作って包丁の上に置いて、それから見える面から2ミリの深さ、って感じで魔法付与すれば簡単なんじゃないかな。」

「確かにそうです。でも櫛形を簡単に作る方法がわからないです。」


 そうか、工作機械の使い方に慣れていないんだな。

 考えてみれば当然だ。この春に入校してまだ2ヶ月程度。

 工作室で1年過ごした俺と年季が違う。

 なら先輩らしく教えてやる事にする。


「この部屋のCADと工作機使えば簡単だよ。まあ見てな。幅は5ミリでいい。」

「5ミリがいいです。」


 俺はCAD画面に5ミリの方眼紙を呼び出す。

 一つ置きに方眼を塗りつぶしたものを5個作ってカット&コピー。

 あっという間に長さ30センチ深さ10ミリの櫛形が完成。


 これをさっき作った包丁の最終型に合わせてベジェ曲線で曲げて上から見た図は完成。

 あとは厚さを板厚自動に設定して、マシニングセンタに端材の3ミリ鋼板をセット。

 ボタン一発で魔法マスク用の櫛形が完成する。


「今のは工作室のCADとマシニングセンタでも同じことが出来る。まあ香緒里の場合はここの機械を使えばいいけれど。こっちの方が高性能だしね。」

「鮮やかな手並みです。ちょっとその域に行くのは時間がかかりそうです。」

「1年もこの学校にいれば慣れるよ。」


 まあ俺の場合は1年みっちり第1工作室に通った成果というか結果なのだが。

 香緒里ちゃんは丁寧に包丁の上に櫛形を置き、真上から見下ろす形で魔法をかける。


「これで完成の筈です。あとは試し切りをしてみたいのですが。」


 でもこの部屋に適当な食品はない。

 待てよ、有機物なら何でも切ろうと思えば切れるんじゃないかな。

 ならば。

 俺はストック場所から適当な木片と板を取り出す。


「有機物は何でも切れるならこれも切れるんじゃないかな。厳密には刃の厚さ分斬りにくいはずだけど大丈夫だろ。」

「ちょっと不安だけれどやってみます。」


 香緒里ちゃんは板の上に木片を置いて包丁を滑らせる。

 あっさりと木片は両断された。

 まな板代わりの板は浅い傷はついたが切れてはいない。

 これくらいなら許容範囲だろう。


「何かあんなに悩んでいたのにあっさり完成したです。やっぱり修兄は凄いです。」

「まあ同じ学科の先輩だしね。これくらいは出来るよ。」

「絶対それは謙遜だと思います。でもありがとうございました。これで安心して今日は眠れます。」


 香緒里ちゃんが喜んでくれたようなので俺も満足だ。

 でもそのうち刃物作りに関しては香緒里ちゃんに抜かれるような気がしないでもない。

 少なくとも俺より刃物を鍛えるセンスがありそうだ。


 

 なお2日後香緒里ちゃんはその包丁を課題の作品として提出。

 魔法が付加されたあの包丁の斬れ味は先生方にも好評で高得点がついた。


 でも先生は改めてあの包丁を観察して気づく。


『この包丁の作りと素材なら魔法なしでも斬れ味に文句はないんじゃないか?』


 あの包丁に付加魔法無視の魔法を重ねがけして食材切断試験を実施。

 結果は魔法無しでも普通の包丁以上の斬れ味であると判明。


 その斬れ味に惚れた先生が鑑定魔法で出た2万円の価格でその包丁を自費購入。

 現在は付加魔法無効のまま先生の自宅で使用されているとのことである。

小話その2終了です。

次は小話にしては少し長めです。

よろしくお願いいたします。

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