第19話 小話1の2 しょうがないから具申しよう
「とすると、あとは海の中しかないわね。」
「でも釣り道具を持っていらっしゃる方、この中にいます。」
皆、首を横に振る。
ここは確かに面白い魚が釣れるらしい。
でも、釣り道具を船や飛行機の運賃かけてわざわざ持ってくる者は少ない。
釣りの趣味を持っている者だけだ。
そしてこの島唯一のスーパーでは釣り道具も釣りの仕掛けも売っていない。
魚を突く銛は売っているが。
「貝類も今ひとつ安全じゃないですしね、このあたり。」
ここは程よく南なので貝類も結構シガテラ毒を溜め込んでいたりする。
「やっぱりここは修を剥いて銛を持たせて海の中へ放り込むか。」
「俺の運動神経をなめないでくださいよ。」
勿論運動神経が悪いという意味で言っている。
自慢じゃないが小中学校で体育の成績が5段階評価の3より上だったことは一度もない。
下だったことは実はあるけれども。
でも1は無いぞ。
「俺より先輩方の方が泳ぐの上手いんじゃないですか。」
「私が本気を出すと周りの水が凍りだすからな。一度それで溺れそうになった。」
さすが氷の女王。
「私は泳ぐのは苦手かな。クラウ・ソラスを水に漬けると水蒸気爆発起こすし。」
鈴懸台先輩の剣は魔法で炎や光の属性を持たせている。
だから海は苦手ということか。
「私はお肌が荒れるので海水に浸かるのは御免被ります。」
月見野先輩は体力系じゃないからしょうがない。
「え、私ですか?」
残ったのは香緒里ちゃん。
でも香緒里ちゃんに銛を持たせて潜らせるのは少々気が引ける。
ならばしょうがない。
できれば関わり合いたくなかったのだけれど。
「わかりました。何とか魚を捕る方向で善処しましょう。」
しょうがないので俺は話を請け負う。
「ただそれなりの準備が必要なので、魚捕りは明日でいいですか。勿論晴れたらですが。」
船が欠航でも常に天気が悪いわけじゃない。
少しは晴れ間もある。
「わかったわ。今日はカフェテリアのご飯で我慢するわ。その代わり明日が晴れていても準備が出来ていないようなら、ひん剥いて銛持たせて海へ放り出すから覚悟してね。」
そんな覚悟はする気はない。
一応対策は考えてはあるのだ。




