第16話 ついに完成移動基地
「何か思った以上に進んでるんじゃない。」
夕方6時に工房に来た由香里姉が言う。
確かに最初に俺が立てた予想以上のペースで製造が進んでいた。
ポンプの方は香緒里ちゃん一人でほぼ完成させた。
あとは俺が作るアルデュイーノ改造の制御部分だけだ。
自動車の方も大きい工作部分はほぼ今日だけで終わった。
後は細かい部分と制御系、そして魔法を香緒里ちゃんにかけてもらうだけ。
「この分だと金曜夕方には終わるでしょうかね。」
「なら土曜日には思い切り試運転できるな。」
例によって学生会幹部3人共この工房に来ている。
「試運転って車の。」
「それとポンプね。」
車の試運転はわかるがポンプは何に使うのだろう。
実は作業を香緒里ちゃん任せにしていたので仕様書をちゃんと読んでいない。
だから何に使うのか用途の予想も出来ない。
「まあ期待していて頂戴。」
そう言って由香里姉がウィンクする。
予定通り金曜日の午後4時過ぎ、仕上げ作業と工房の片付けを含めて作業が終了した。
俺が最後の点検をしている間に香緒里ちゃんが先輩方を呼びに行く。
やってきた学生会幹部3人が微妙に色々荷物を持っているのが気になった。
香緒里ちゃんも何かスポーツバックを持ってきている。
「ポンプも車に積んでね。予定より早いけれど今日実際に使ってみたいわ。」
との事なので廊下の空いているところにポンプも置く。
他にPVC製らしい水色の大きい物体とか色々持ち込んで切る。
何をするのか俺には想像がつかない。
皆で乗り込みシャッターを開け、マイクロバスを発進させる。
倉庫から出た所でシャッターを閉じて運転方法の説明。
「ハンドルの上部分を手前方向に引けば上昇で、押し込めば下降です。車の姿勢は着地時以外は水平で固定。飛行中にアクセルを踏めば前進でハンドルで左右に曲がります。」
ハンドルのチルト機構を改造して操作系を作ったので一見普通の車に見える筈だ。
飛行時の運転方法もちょっと慣れれば直感的に動かせると思う。
まあファイルセーフは二重以上にかかるようにしてるので大丈夫だと思うが。
「地上を走ったまま飛行へ移行は出来るの。」
「向きが合っていて邪魔がなければむしろそうしてください。その方が移動エネルギーを稼ぎやすいです。」
「OK。だいたいわかったわ。」
基本的に由香里姉は飲み込みが早い。
基本スペックは大変に優秀なのだ。
一部性格と審美眼と趣味が間違っているだけで。




