第15話 頼まれ仕事もやりましょう
ハイになりすぎたところでちょっと反省。
スケッチブックとボールペン、巻き尺とノギスを取り出してマイクロバスの下に回る。
どこに飛行用の器具を取り付けるか、まず実車の寸法を測って考えるためにだ。
そこで便利な工具がここにはあることを思い出す。
魔力仕様自動寸法測定機。通称ノギスファンネル。
付属パソコンを起動させてファンネルに魔力を注ぎ込んで起動すると、自動的にビームだの超音波だの飛ばしつつ飛行して寸法をCADに起こしてくれるという優れものだ。
起動して暫く経つと、パソコン画面上に立体図面が自動で起こされる。
ふむふむ、ラダーフレームの上内側のスペースにレールを作って重りを前後に動くようにすれば例の魔法で飛行システムを作れるな。
動かす重りは由香里姉が用意した角材300キロ4本で十分だろう。
それだけで最高2400キロの幅を持たせることが出来る。
アナログ魔力コンバータ使ってアルデュイーノで自動制御してやればスクーターのときと同じように作れる筈だ。
俺はマイクロバスの中央扉を開け、中に入り用意してあったおもり用角材にマルチプルフィクスチャーを取り付け車外へと運ぶ。
魔力リニアモーター用の銀シールを貼り付けたり色々やっていると。
いつの間にか香緒里ちゃんが来ていた。
「あれ、いつの間に。」
香緒里ちゃんはあきれた顔でこっちを見る。
「うーんもう、結構前から来ていましたよ。何か修兄浮かれていて何も見えていないようでしたけれど。」
「ごめん、確かに浮かれていたのは認める。」
ここの設備と部品在庫のお陰でかなり浮かれていたようだ。
と、ふと気づく。
香緒里ちゃんの俺の呼び方が前に戻っている。
まあここは第1工作室と違いほぼ身内しか来ないので、呼び方を戻したのだろう。
それ以外に特に意味はないと思う。
「香緒里ちゃん、もし手が空いていたらそこの仕様書読んでポンプ2台を作ってもらっていいかな。制御部分は後で作るから取り敢えず本体だけ。向こうにある太めのMJ管使えば簡単にできると思う。」
「うーん、しょうがないですね。」
そう言いつつも香緒里ちゃんは俺の指示に従って図面を見る。
MJ管とはマジックジェット管の略。魔力を通せば内部の液体や気体を一方向に加速させる機能を持つ魔法部品だ。
主にポンプに使われるが加工と制御次第では飛行機のエンジンにも使える出力を出すことも出来る。
今回は依頼のあったポンプと飛行自動車の姿勢制御に使う予定だ。
生産数が少なく納期がかかるので飛行スクーターには使わなかったが、ここには結構在庫があったので惜しまず使うつもりだ。
香緒里ちゃんも魔法工学科だしMJ管を使えばポンプ位作れるだろう。
俺は飛行自動車の浮力調整部分の制作に集中する。




