第101話 でっかい魚は食えるのか
「どうしました。」
「やべええ、でかいのキター!踏ん張りきかねー!」
後ろを見ると奈津希さんが足と肘で何とか身体を支えつつ竿を握っているのが見えた。
リールを巻くなんて動作は出来そうにない。
とにかく竿を離さず持っていることと、自分が外へ落ちないようにするので精一杯という感じだ。
「何なら魔法で始末して下さい。海へ落ちるよりマシでしょう。」
「そそそ、そうだな。」
何せ魚の引く力でマイクロバスまで横に動き出している状態だから俺も運転席から離れられない。
と、不意に横への動きが止まった。
「よっしゃ!何とか仕留めたぞ。」
「どうです。どんなですか。」
後ろでリールを巻き上げる音。
「ちょっと持ち上げるのが無理っぽい。できるだけ岩を避けて、浜の方へ超ゆっくりと前進できないか。獲物はとりあえず凍死させたから大丈夫だ。」
どんな大物だ。
そう思いながら俺は注文通りできるだけ岩のない深めのところを選んで、ゆっくりバスを走らせる。
「よしよしよしよしよし、っと。じゃあな。」
ちょっと車が揺れた。
ミラーを見ると、いたはずの奈津希さんがいない。
浜についた途端飛び降りたらしい。
しょうがないので俺はバスを狭い浜の上に横になるように動かして、砂の上に降ろす。
外へ出てみると、ちょうど奈津季さんが竿とリールと波とを使って獲物を浜へと引き上げているところだった。
ってこれはひょっとして。
「まさかマグロですか。こんな近場で。」
「惜しいな。こいつはイソマグロ、似てるけどマグロ程美味くはないかな。でも悪かない。」
丸々とした胴体に長さは奈津希さんの頭と胴を足したくらい。
でかい。そして太い。
「うーんこれ運が悪いとシガテラ毒あるんだよな。」
「って、どうすれば毒があるか分かるんですか。」
「医療魔法使える奴なら毒があるか判定できる……って、あいつもう寮に帰っているかな。」
奈津希さんはホットパンツのポケットからスマホを取り出し、どこかへ電話をかける。
「もしもし私リカちゃん、おい切るな冗談だ。実はちょっと頼みたいことがあってさ、学校の修の工房前まで来てくれないか。あ、それは大丈夫だ僕も昨日入ったから。ん、8日朝までは修だけらしい。ん、わかった。あ、それは僕が用意する。じゃあ頼むな。」
何だろう。
何度か俺の名前が聞こえた気がする。
不安だ。
しかし奈津希さんは妙に爽やかな笑顔で俺の方を向く。
「毒見役は確保したぜ。そういう訳で、学校の修の工房前まで、レッツゴーだ!」




