第99話 新型猛獣女子、確認
目覚めたら目の前に足があった。
ぼやーっとした思考回路と視界で確認する。
細めだが程よく肉がついていて、かつ綺麗に日焼けしていて健康そうな足だ。
ふくらはぎも程よくしまってきれいな形。
うーん、でも何故だろう。
そこまで考えてふと気づく。
これは、ひょっとして。
見慣れた天井と布団。
寝ているのは間違いなく俺のあのだだっ広いベッド。
そして俺と反対方向にト音記号のような形で伸びているのはTシャツにホットパンツ姿の奈津季さんだった。
何故こうなった。
俺は必死になって昨晩の記憶を辿る。
① 風呂でしょうもない馬鹿話をした。
② 酒じゃない清涼飲料水だけどアルコール11パーセントを飲んだ。
③ いい加減のぼせてきたので上がって、リビングでテレビ見ながら話した。
④ 奈津季さんが冷蔵庫に常備菜を仕舞うついでに磯辺揚げやアスパラ炒めを作ったので食べながらコーラを飲んで話した。
⑤ 流石に眠くなったので寝た。
⑥ 寝た時は俺は一人だった。
うん、記憶に欠落はない。
手を出したりやばいことはしていない。
では、これは何なのか。
考えても関連する記憶や情報は出てこない。
ならば。
昔の人は言いました。
三十六計逃げるに如かず。
俺は極力音や振動を発さないように、ゆっくり動いてベッドから出ようとする。
だが、突如脚を掴まれた。
「こっそり逃げようだなんて寂しいじゃないかハニー。」
「誰がハニーですか!」
さては既に起きていて、俺の出方を伺っていたな。
「そんな、昨日はあんなに激しく愛し合ったのに、酷いわ酷いわ。」
声が凄く嘘くさい。
「そんな記憶も実績もありません。」
「バレたか。」
「当然です!」
奈津季さん俺の脚をやっと離してくれた。
「しかし何がどうなってこうなったんですか。説明と釈明を求めます。」
「簡単なことだよワトソン君。君が寝たあと僕も布団に入ったが、どうにも退屈だし一人だと寂しい。なので君の部屋に来てみると添い寝してくれと言わんばかりのでかいベッドがある。なので君の布団に潜り込んで一緒に寝てみた。上下逆なのは単に僕の寝相が悪いせいだ。Q.E.D。」
「誰がホームズですか。それに勝手に異性の布団に入り込まないで下さい。」
通常と性別が逆の気がするがそんな事かまっていられない。
「まあまあ落ち着け。かの登山家マロリーも言っている。何故人は布団に潜るのか。そこに布団があるからだ。」
「いいかげんな名台詞作らないで下さい!ここはチョモランマじゃないんです!」
駄目だ。
こんな人相手にしたら俺が持たない。
「まあそれは別として、昨日漬けておいた鶏肉を塩抜きしてしながら朝ごはんでも作ろうじゃないか。という訳でリビングでのんびり待っくれたまえマイ・ダーリン。」
俺は文句を言おうとしてやめる。
今までにないタイプの猛獣女子だ。
いちいち反応していたら身が持たない。
ここはいちいち反応せず体力をセーブしよう。




