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音ゲーの魔術師

 高校に入学してから二度目の週末です。学校では徐々にグループができ始めていますが僕はどうやらその波に乗り遅れたようで……しかし! 僕にはここがあります!


「志垣さんこんにちは!」


「おう、来たか!」


 先週末にここムゲンゲームスで会ったとき志垣さんは帰り際に来週は面白いものが見れると話してくれました。一体何が見れるというのでしょうか?


「もう始まってっから行くぞ!」


 そう言われて付いてきたのはクレーンゲームとは別で壁際に配置されたマシーンが連なるエリア。その中の一台だけ軽く人だかりができています。


「こっから見てみな」


「えっ……」


 人々の隙間から見えたのは目にも止まらぬ早さでボタンを押しまくる少女、しかも音楽に合わせているようです。


「あれは何という芸当ですか!?」


「芸当? ……まぁそうだな、あれは音ゲーっつーんだけどその中でも今人気の機種『サウザンドサウンド』だ! 見せもんじゃねーと思うが言うなれば練習の賜物だな」


 僕でもあんなことができるようになるということでしょうか? とはいえあれだけ芸術的なことをやってのけるんですから何か天性の才能か、はたまた小さい頃から音楽の英才教育を受けていたと考えても不思議じゃありません。

 考えを巡らせているうちに一曲終わってしまいました。


「いくぞ」


「ちょ……志垣さん!?」


 志垣さんは人だかりの間をすり抜けてその中心となっている少女に歩み寄っていきます。声をかけたいほど感動したということでしょうか?


「ブラボーブラボー!」


「うぇ、志垣……」


 拍手をしながら近づいていく志垣さんの声を聞いた少女は明らかに嫌そうな顔をしています。

 そりゃあ自分のパーソナルスペースを知らない人に侵害されたら嫌な気がしても仕方ありません。ここは撤退を促して……


「聞け太一! こいつは仁藤奈緒(にとうなお)っつって俺の古い友達でな、音ゲー界ではわりと名の知れたやつだ!」


「なっ!? 勝手に友達にするな!」


 ふむ、仁藤さんは志垣さんに対してあまり好意的ではないようです。親しき仲にも礼儀ありというように次曲までの間で水を差されたことに怒っているのでしょうか?


「そっちの子供は何者なのよ?」


「あぁ、こいつは冨山太一! 先週ここで会ったんだが……年聞いてなかったな」


「……僕は高校一年生の十五才です! 子供じゃありません!」


 前々から身長が低いことはコンプレックスではありましたが見た目は年相応だと思っていました。ですが、推定同年代の仁藤さんが子供扱いするということは僕は中学生以下に見られているということにはならないでしょうか?


「同い年だったの? 悪かったわね子供扱いして」


「それはもういいですよ。ところでそれについて教えてもらえませんか?」


「これについて知りたいの? そうねぇ……じゃあ百聞は一見にしかず、百見は一動にしかずってことでデモプレイやってみなさいよ、タダだから」


 何か名言的なことを言う仁藤さんの後ろで何故か志垣さんはただただニヤニヤしています。それはさておきサウザンドサウンドといざ勝負です!


「簡単に説明すると十六個のボタンそれぞれに色が割り振られてて、画面に出てくる同じく色のついた音符的なものがヒッティングゾーンに入ったときにボタンを押すの」


「分かりました」


 仁藤さんが説明してくれたのとほぼ同じ内容が画面でも説明され二度手間だったのではと思いつつデモプレイは終了しました。


「ここからが本番ね、今のがキツいと思ったらイージーモードでもいいのよ?」


「いえ、ハードでお願いします」


「これ今日初めてでしょ? ノーマルならまだしもハードは初心者には無理よ!」


 僕の判断を否定する仁藤さんの声には怒気が含まれており、さすがに強行だったかなと思っていると……


「まぁいいじゃねーの、損になるわけじゃあるまいし」


「私が教えたんだから下手なことしてもらっちゃ困るのよ!」


「そうかもしれねぇ……が、今こそお前の言う百見は一動にしかずを立証するときだ!」


 僕のために喧嘩するのはやめて! とは口が避けても言えませんでしたが、志垣さんは仁藤さんを論破した勢いで画面に表示されていたハードモードのボタンを押してしまいました。


「あっ……百円無駄にすることになるわよ」


「それはどうだろうな」


 今まで出ていたローディングの表示が消え、いよいよ先程デモプレイで見た画面に切り替わりました。

 期待に応えたいと思うと同時に昂りが突き抜けてお二人の声は聞こえなくなり、足場は安定しているものの僕とこのマシーンだけが宇宙空間に放り出されたかのような感覚に陥りました。


          ◆◆◆


「ふぅ……はっ!」


 息をつき、喧騒が戻ってきてお二人を見るとフリーズしています。意識が飛んでいたようで曲中の記憶がなく、どんな曲だったのか思い出せないのですが固まってしまうほど悪い結果だったと言うことはやはり僕にハードモードは早すぎたと言うことでしょう。仁藤さんの言うように百円無駄にしてしまいました。


「嘘でしょ……」


「俺が言うのもなんだがまさかここまでとはなぁ」


 志垣さんも音ゲーに関してはあまり自信がないと言うことでしょうか?

 それはさておきここはもう仁藤さんに譲ってクレーンゲームの修行を……ん? これは何でしょうか? ニックネームを入力してください……?


「えっと、これは……」


「そこに自分の二つ名みたいなもんを入れるってことだ。ランキング登録するためにな」


 なるほど、スコアはどうあれ結果は残るということですね。それでは個人情報的なこともあるので「T.T」としておきましょう。


「まさかハードのランキングに入るとはね、初心者を装っておいて経験者ってパターンね?」


「それはないと思うぞ? 先週初めてクレーンを知ったやつが音ゲーだけ特化してるとは思えんしな」


「くっ……み、認めないわよ! そうねぇ……」


 うーん、このままだと日が暮れてしまいそうなんですが……


「久々に勝負しなさいよ」


「俺と勝負して何か分かるのか?」


「人に教える立場ならその道で最高の質が求められる。つまり、あんたが私の半分くらい実力があれば太一に示しがつく。且つ私が認めるに値するかもってわけよ!」


「なるほど、その話乗った!」


 仁藤さんと志垣さんが勝負を!? ですが仁藤さんは明らかに強いですし、業界で名も知れているらしいとなると志垣さんは不利なのでは!?


「あいつが音ゲーやるの見るのはホント久々だなぁ」


「あ、吉崎さんどうも。久々っていうのは……」


 突然現れた吉崎さんはやはり志垣さんと古い付き合いなのでしょう。それよりサボってていいんですかって言いたいです。


「あいつ小学生の頃からムゲンゲームス(ここ)来ててその時は私も客だったんだけど、一時期ここにあるゲーム全部制覇するんじゃないかってときがあったんだ。その時見たのが最後だよ」


「それはどれくらい前ですか!?」


「んー、確か四ヶ月弱前くらいだったかな」


 クレーンゲームだけじゃなかったんだ……ということはその時は仁藤さんより上手かったってことになりませんか? ですが、吉崎さんの言い方だと全て制覇することはできなかったようですね。


「難易度は……」


「ゴッド一択だ!」


 志垣さんは有無を言わさず「ゴッド」を選んだようです。


「いかにもな感じですがゴッドは何段階中何番目なんでしょうか?」


「愚問だねぇ、ゴッドは七段階中一番上だ。君がさっきやってたハードは上から四番目だね」


 思ったより細かく難易度分けされてるみたいですね。それにしても(ゴッド)と言われるレベル、一体どれほど難しいものなんでしょうか……それに聞く限りかなりの実力者である仁藤さんとの勝負をあっさり受けた志垣さん、果たして大丈夫でしょうか?

どうも!ロカクです!

先週は飛ばしてしまって申し訳ないですm(__)m

なんとか来週も投稿しますので!

では、また次回!

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