少年と少女のカンケイ
アレイザード学園入学式の日、入学式が行われている講堂の中、舞台の上で一人の少女が立って挨拶をしていた。
その少女は肩の下まである金髪を真っ直ぐにのばし、まだ新しい制服に身をつつみ、深紅の瞳を正面に向けて話している。その様子は堂々としていながら初々しく慎ましく、総合してとても美しい。それまでの緊張を忘れてその姿に見とれる新入生もいる。そして、新入生の最前列の方からはヒソヒソとした声がきこえる。
「まあ、あのかたが魔法師科にトップで入学なされたセレナ・シルフィードさまでしょうか」
「噂どおり、お美しい方ですのね、お友達になりたいですわ」
「ええ、そうですわね」
おおむね好意的な意見が占めているようだ。彼女の学園生活は賑やかなものとなるだろう。
しかし、最前列に座る少年は好意的でも悪意的でもない視線を彼女に向けていた。
(ふむ、過度な緊張もしていないし萎縮もしていないようだ。さすがだな)
そんなことを考えていると、挨拶も終わったのであろう、少女が舞台をおりて少年の方に歩いてきた。そして少年と目が合う、その瞳が『どうでしたか?』と聞いてきているように感じたので、少年は『とても良かったよ』という意味をこめて微笑んだ。すると少女は満面の笑みをうかべ、再び席に着いた。
その様子を見て、周りの視線(特に男の)が少年に集まる。その視線は怪訝や嫉妬といったとても正の感情とは言いがたいものであり、少年の学園生活の前途多難さを思わせた。
そんなことがあったが、入学式もつつがなく終わり、次は校舎案内である。 この学校は王国に一つしかないので、生徒数は多く、校舎も広い。最初にある程度知っておかないと後で大変なのだ。
各学科の先輩達が自分の後輩を案内するために一ヵ所に集めようと大声をはりあげている。周りでは、もう既にいくつかの生徒達のかたまりができていた。その中でも一番大きなかたまりは、一人の少女を中心に形成されていた。入学式で挨拶をしていた少女である。どうやらさっそくかこまれてしまったようだ。少女は困った顔をして助けを求めるように視線を周囲をはしらせていた。それを見た少年は、
(はあ、助けにいかなきゃいけないよなあ)
そう思いながらかたまりの中心に向かって歩き始めた。
「ちょっと通してくれ、どいてくれ」
そう言いながらひとごみを掻き分けて進む、掻き分けられた人は『なんだこいつ』といった視線を向けてくるが今は気にしない。そして中心に行き、少女と目が合う。すると少女は、
「あっ、兄さま!」
とさけんで少年の腕に抱きつき、手と手を絡めた。
そう、少年と少女は兄妹だったのだ。それもかなり仲がいいタイプの。