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螺旋の世界ー終焉に至る者ー  作者: 姫御護来兎
一章『龍の槍』
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強敵現る(3-2)

 教室に戻る。 屋上から二階に戻ってくるのは存外につらい。 無駄にこの建物は五階建なのである。 まったくもって無駄だ。


「どこ行っていたの?瑛君」


 席に座ると、優菜が何処に行っていたのかと聞いてきた。


「ああ、ちょっと屋上にね。 風に当たりたくなったんだよ」


「そうなんだ。 それでさ、宗君が『カレーはダメか?』って言ってね。雫も『べつにいいんじゃない』って言うし…でも私は」


 宗のカレー好きはここでも大暴れをしている模様。 中等学院時代のバカバカしい思い出をふと思い出したが、すぐに忘れてしまった。


 優菜は辛いのがそうとう苦手だと聞いた事がある。 辛子とかは論外で、寿司も当然さび抜き。


「パスタは?」


 ちなみにそれは瑛の好物でもある。 特にナポリタンであれば、彼は一週間これで過ごせるほどに好きなのだそうだ。


「それなら私も…」


「明太子だけど?」


「もう! キライ!」


 ちょっとした悪ふざけだったんだが――拗ねてしまった。


――でもさ、文化祭でまでカレーは食べたくないよね。 って、僕だけ?

………

……


 放課後。 今日は部活が無いので宿舎に戻る。


「またあいつと話をしないといけないのか…」


 ため息が漏れる。 3日前からだ。僕が天空杯とかいう杯を賭けた争奪戦に巻き込まれたのは。


「それにしても。 まったく…可笑しな事に巻き込まれたものだな」


 3日前から瑛はNO'Sと呼ばれる人ではない存在と一緒に暮らしている。 この事は誰にも言っていないし、誰かに知られた場合、即退学という最悪の結末しか待っていない。


 宿舎は学院のすぐ隣にある。 ちなみに、この学院は全寮制なのに男女混同というあたり、いろいろと配慮が足りないと思う。

 そして、遅刻した場合は指導部の教師が部屋に乗り込んでくる。 土日は帰ってもいいというらしいが、瑛は三日ペースでの掃除以外では家には帰えらない。 学院に入学してから、妹ともあまり話さなくなったな。 そういえば学級委員長なんてやっていた気がする。


「あいつも大変だな」


 ――そういえば隣って誰なんだろうか…空き部屋だったはずだが、転校生が数人来たから誰か入ったはずだろう。


 表札を見る。


「『アーヴィング』?って、誰だっけ?」


 とりあえず隣人が入った事だけを確認して帰宅する。


「ただいま」


「お待ちしておりました、マスター」


 彼女こそが、僕のNO'S、NO.11。考え方が古風というか、硬すぎて話し合いがいつまでたっても結論に達しない。


「お帰りなさい、瑛上がらせてもらっているわよ」


「なぜ、君がここにいる?飛燕」


 飛燕が瑛の部屋に上がりこんでいる。ワンルームだから玄関と部屋が直結しているために、冬は寒い。


「どうやって入ったんだよ」


 あまり気にしない。 聞きながらダイニングのイスにカバンを置く。


「ドアからよ。 お隣さんなんだから、別にいいでしょ?」


「隣? 隣の部屋は空き部屋の………」


 ――お隣さんとはあの?


「あ、ああ、そうか。 アーヴィングって飛燕の事か」


「自己紹介くらい聞いとけ!!」


 内臓をえぐる様なパンチ。 あまりの痛さにその場にうずくまる。


「ナイス――パンチ………」


 どさっと倒れる瑛、そしてその後の数時間、瑛は目を覚まさなかったらしい。


「マスター!」

………

……


「一瞬だが、花園と川が見えたような気がしたぞ」

「だから謝っているじゃないのよ!」


 逆ギレしながら謝ったと言い張る飛燕。 また、耳痛いです。


「それで何しに来たんだよ」


「昼休みに言おうとしたことを言いに来たのよ」


 昼休み。 屋上で話を聞こうとしたところ、紅兎 光が割り込んできたおかげで結局は話の重要なところは聞けなかったのだ。


「ああ、邪魔な奴が来たせいで聞けなかった事か。 他のNO'Sのこと…だっけ?」


「そうよ」


 やっと本題の話が聞ける。


「結局、結論として、学院内全体には、私たちを入れて九人のマスターがいたわ。

NO.9にNO.11…


NO.1。

NO.4。

NO.6。

NO.7。

NO.10。

NO.13。

 これも全部NO.9のおかげだけれど」


 敵というのはこんなにも身近に、しかも六人もいるものなのだろうか。


「って、ことは…敵は六か………」


「学院内のマスターはね」


 どういう意味なのだろうか…


「本当は、この町に来たときからイライラしていたのよ」


「なんでだ?」


「普通一つの町に魔術使いは多くて五家。 でもこの町にはその数十倍の魔術使いが住んでいるのよ。 どの家が潜伏先なのかわかったものじゃないわ」


――だからあんな無茶な事を言ったのか…納得できなくもないが、納得したくはない。


「それで、マスター。 私から提案があるのですが」

 それまで黙っていたNO.11が口を開いた。


「我々の…NO.11とNO.9の組み合わせだからこそできる事なのですが、夜の巡回をしてみるのはどうでしょうか」


「それは敵を誘うという事でしょう?」


 生き残らなければ勝利は無い。 それは三日前の出来事で得た情報。 この戦い、生きていられれば得る物はある。 戦闘の経験と敵の情報。 生憎だが瑛たちは敵の情報はあっても役に立つものではない。 でも、戦闘での経験は手に入れている。


「僕はNO'Sの攻撃でも死ねない身体みたいだからね、その意見に賛成するよ」


 奇襲は効かない。 NO'Sは一度召喚されれば殺されない限り、死ぬことはない。 よって基本はNO'Sを召喚したマスターを狙うのだが。 瑛にはそれは効かない。 例外だ。 どのような物にでも当然例外が存在するものだ。


「それは貴方だけよ、瑛。 というかそれは、自惚れだと思うわよ? 死ぬ時はどうやったって死ぬの、その不可解な身体だって理由がわからないだけで回数制限があるかもしれないのよ?」


 もっともらしい言葉だ。


「それでマスター、巡回はするのですか?」


「ああ。しようじゃないか。 見回りだろ? 簡単なことさ。 死ねない身体かもしれないし、死ぬかもしれないけどね。 でも、それでも僕は戦わけらばならない。 そんな気がする」


 そもそも実行するのを遅くすると意味がない。

………

……


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