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螺旋の世界ー終焉に至る者ー  作者: 姫御護来兎
一章『龍の槍』
7/48

強敵現る(3-1)

――あの日(魂魄をNO.08の手から取り返して)すでに、3日が経過していた。


 その時間は長いとも、短いともいえないそんな時間の長さだ。


 そんな何処か宙に浮いてしまった気持ちの中、学院の僕のクラスではある話題でここ2日間騒がれていた。どうやら転校生が来るらしい。それも2人だという。こんな珍しいことはそうはないだろう。もしかすれば、そのうちの1人は彼女ではないだろうか、とそう思っていたんだ………飛燕。


「ちょっと………ちょっと、燕条君? 話聞いてる?」


 意識がふらついていたらしい。


「え? なんだ雫か…どうした?」


「人の話は聞くものよ。 二度も言わないわよ。 まったく…優菜に聞いて」


 瑛の態度にあきれた雫は自分の席に座った。 どうやら今はHR前の登校時間のようだった。 瑛の腕時計は8時15分を示している。


「それで…何の話していたんだっけ?」


「もう少しで学院祭があるのはさすがに覚えているよね? 瑛君」


 ひどく馬鹿にされている様だが、ここで突っかかっても仕方がない。


「ああ。 覚えてるよ、『東院祭』だろ?」


――東院祭と言うのはこの司馬東高等学院で夏が過ぎた秋頃に行われる。 言わば文化祭と言うことだ。


「そうだよ。 その東院祭で私たちのクラスだけが――2日目の縁日に出店する店が決まってないから実行委員の私たち4人で話していたんだよ瑛君」


 と、優菜の解説終了。 その4人とは、燕条 瑛、聖零 雫、都橋 優菜そして


「だから…なぜ俺が、実行委員になっているんだ…雫、何とかならないのか?」


 さっきからうだうだうるさいと思っていたら、どうやらコイツだったか…4人目の剣崎 宗。


「寝てたからよ。 HR中に寝るって言うことは「どうぞお好きに」って言っている様な物じゃないの。終わってから嫌だ嫌だって、駄々こねても誰も代わってはくれないわよ? 剣崎君」


「っち、わかったよ。 で、どうすんだよ」


 無理やり納得して話を進める宗。 決まってしまった事はしかたないと諦めたらしく非常に潔い。


「プリントにはなんて書いてあんだよ雫」


 乱暴に雫に聞き返す。


「保健所に届出を出さないといけないから――あまり無理な物は選ばないようにね。 魚介類は論外よ。 きちんと加熱したものじゃないとダメみたいね」


 と、ここで予鈴がなる。


「それじゃまた昼休みにでも話そう」


 瑛は自分の席に座る。 といっても3人の席は瑛を中心に、左隣が雫。 前が優菜。後ろが宗。 右隣は予備の席らしい。 今日転校してくる留学生2人の内の1人が座るのだろう。 そして剣崎 宗の後ろは龍閃 白哉が座っている。 そしていつも通りに窓から外を眺めている。 ちなみに今日の天気は快晴だ、さぞ見通しがいい事だろう。


 8:45教師が教室に入ってくる。


「今日からこのクラスは33人から35人に増える事になった――自己紹介してもらうから入ってきなさい」

 教師が促す。 1人目は男。 それも平均よりも高い身長に、整った顔達だ。 そして、問題の2人目なのだが、それは………。


「飛燕ッ!?」


「なんだ燕条。 知り合いか?」


「あ、ああ。 ハイ」


 まさか本当になるとは思ってもいなかったのだろう。瑛は眼大きく見開き、開いた口が塞がらないの言葉の様に驚いている。


「ま、いい。燕条だけが知っていても意味ないからな。さ、自己紹介を頼むよ、まずは紅兎君から」


「どうも、紅兎 光[コウウ ヒカル]です。 前の学院では洋弓部………無理に日本語にしなくてもいいですね、アーチェリー部に所属していたので、こちらの学院でもそこに入部する予定です。 どうぞよろしく」


 上手い日本語。 とても外人とは思えない。 と言うか外人には見えない。 紅兎 光は日系人のようだ。


「私は飛燕・アーヴィングよ。 部活とかは特にしていなかったわ…こちらでも入部する予定はありません。 あとは………無いわね。よろしく」


―――二人の自己紹介が終わる。光の自己紹介は一般的だったが、飛燕の自己紹介は何処か印象が良く感じられない。


「そうだな~知り合いみたいだから、 アーヴィングは燕条の隣に。 紅兎は剣崎の隣に座ってくれ」


「「わかりました」」


――と、担任の教師が教室を後にする。紅兎の方は宗に質問攻めに遭っている。 飛燕は3日前とはうって変わって、とても静かだ。 どう見ても本人みたいなのだが…。


「なに?」


 ずっと見ていたからだろう。目があった


「いや…その。 同じクラスだな、って思って」


「そうね」


「言ってくれればよかったのに」


「…」


 飛燕は窓から外を見ている。 瑛の話に興味がないのか、会話が続かない。 気に入られていないのだろうか…瑛はそのまま黙ってしまった。


「昼に屋上で」


「え?」


 そんな誘いを受けた。

………

……


 そして昼休み。 一通り東院祭の話をした後に、屋上に向かった。 時間の指定はされていなかったから、今向かってもいいだろう。


「遅い!」


「…」


――と、屋上の扉を開けた瞬間飛燕の怒声が響いた。


「だ、だって…時間決めてなかっただろ? 君のミスだろ?飛燕」


「瑛、女の子を何分待たせるつもり?まったく、なってないわねッ!」


 またしても怒声…。 かなり怒っていらっしゃるようだ。 悪い事をした自覚が少しわいてきてしまった。


「ごめん」


「反省している?」


「反省しているよ」


 言い切った瑛。 勢いでだが反省はしているのは確かな様だ。


「ま、いいわ。 確かに時間言ってなかったし、私にも落ち度があるわ」


 とりあえず、許しを得たので話の本題を聞くことにする。


「それで、用ってなに? わざわざ屋上にまで呼び出してさ」


 本題に移ろうとする瑛。


「ええ、問題はそれよまったく………」


 飛燕は大きく息を吸い込むと、それを吐き出すかの様に、


「…?」


「あのクラスどうなっているのよ!?」


 またもや怒声。 ビリビリビリッと、そろそろ耳が痛くなってきた。


「な、なにがだ?」


「私たちの他にもマスターが数人いるのよ」


「な、」


――なにぃいいい!!!!


「本当か!それは!」


「嘘ついてどうするのよ。 お互い協力するんでしょ? なら、嘘なんてつく意味無いでしょ」


「それもそうだ。 それで誰がマスターなんだ?」


 誰がマスターで、誰がそうではないのか…まったくわからない。 このままでは戦闘に差し障りがある。


「そこまではわからないわよ。 知りたいのなら一人ずつ潰していけばいい。 そうすればはっきりするわよ?」


「そんなやり方、僕は認めない。 乱暴すぎるし、問題だ」


「それじゃあどうするの? 向こうが攻撃してくるまで待つつもり?」


 攻撃してきた者を倒していけばいい。 向こうから攻めてくるんだ。 返り討ちにあっても文句は言えないだろう。


「それでいいじゃないか。 こっちから攻撃しても勝てる見込みはない。 向こうの手を先に見れるのだから、常に警戒していればいいだろ?」


「――なんだい君たち。 さっきから危ない事言ってさ、攻撃とか…って。 そう言う話するんだったら、きちんと周りの気配くらいは探らないとだめだよ。君達の言う『敵』って奴はは何処に潜んでいるかわからないんだからね」


 いつの間にか。 屋上でも一番高い貯水タンクの上にいるそいつ――紅兎 光は姿を現した。


「盗み聞きとは趣味が悪いじゃないの、貴方でしょ光。どこぞの史上最優の魔術使いが育てあげたっていうのは」


「あれ、まさか、僕の魔力を感知できていたのかい? 一般程度まで魔力の放出を抑えていたというのに、この国の魔術使いの魔力出力は大したことないみたいだね。…うまく隠したつもりだったのに、まったくもって残念だよ」


 話しながら笑い出す光。その言葉の節々には人を馬鹿にしたような態度が表れている。


「でもさ、僕としてはここで戦う気はまったくないわけだから、そう構えないでくれよ。君達程度が僕とやり合ったらそれはただの一方的な狩りになってしまう。そのあたりを弁えて話してくれよ。 さて、君たちも教室に戻りなよ」


 と、言い残し貯水タンクから飛び降り、屋上から出て行く。


「あいつ、なんなんだよ」


「紅兎 光。 世界中の魔術使いが集まる場所の最も厳しいと言われる訓練カリキュラムを、二年半という速さでやり終えた奇才よ。 あんなのがマスターにいるなんて…」


「それにしてもそこら辺の事情に詳しいな、飛燕もそうなのか?」


「そうよ、私もそこにいた、二年前のことよ。 いきなり来た光がカリキュラムを全て終えたせいで、私の他にも数人いたのだけれど――そこから追い出されたわ。 とんだ災難よ」


――飛燕も飛燕なりに苦労しているようだ。

 と、ここで予鈴がなる。


「急いで戻るぞ」


「わかってるわよ、もう!」

………

……


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