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螺旋の世界ー終焉に至る者ー  作者: 姫御護来兎
一章『龍の槍』
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天空杯争奪戦始動(2-1)

 虚空を漂う。


 何もない無の空間を途方もない間、或いは一瞬のことかもしれない。


 何が起きてここにいるのか、ここが始まりなのか、それとも終わりなのか。


 無限の時が廻る。


 この世界は廻る。果てはなく、その様は螺旋の如く。


 巡り繰り返されるは悪夢か希望か、そしてまだ見ぬ世界へと続いて………。

………

……


 その場から消えてしまおうとした。


 でも何かを聞かなければいけないのではないかと、頭はそう訴えかけてくる。 そして僕は彼女に漠然とした様でいてこれ以外に聞きようがない質問をする。


「死なない方法はないのか? まさか…なにも無いっていうことはないだろ?」


「生きていたいの? ここで死んだ方が楽かもしれないわよ?」


 どうやら嘘泣きだったらしいが、演技にしては涙の跡が残っている。


「でもさ…僕はまだ生きていられるんだろ? この命を繋ぐ行動を起こせばの話だろうけれど…さ」


 ヒェイエンは黙っている。 僕の様子を言葉を判断するかの様だ。


「アイツは何処にいる?」


「貴方まさか…その体でNO'Sと戦おうって言うの?それは 無茶よ! ダメ、それは私が行かせない」


「なら――このまま死ねって言うのか! 黙ってこのまま。 何かできるんだろ!? その方法を僕に教えてくれ………頼むよ」


 あの外国人は僕に死ねと言った。 そして、これから何かが始まろうとしている。 それなのに、僕は未だその何かの外にいる。 自分の今の状況を把握する必要がある。


「私は………」


 一旦何かを言いかけ、彼女は少しの沈黙の後、予想しえない答えの中から一際予想できない答えを出した。


「ふぅ、本当のところ――私は貴方のようなマスターを探していたの、ルールを知らないマスターを…そもそも、現れたマテリアルは召還されたNO'Sが最後の1人になるまで殺し合って…」


 一息つき、彼女は本心を語ったようだ。余計な一言も………。推測だが、これは彼女の天然ではないだろうか。


「つまりは、僕がNO'Sを呼び出した直後に、僕を殺そうと考えているんだな?」


「はい―――あ゛。 い、いいえそんな事しないわよ!」


「…」


 自然体の彼女は嘘の下手な正直者なのだろう。現状、信じるしかない。今の僕は完全に無力なのだから。


「あの男に対抗するんだったらこっちにもNO'Sが必要な訳だろ? いったい、どうすればいいんだ?」


「それもそうね…貴方は何も知らないから召喚できないものね、わかったわ。 私のNO'Sを召喚しましょう」


 儀式の準備は非常に難題で、成功するかどうかも怪しいものらしい………のだが。


 手順1――召喚の為の魔方陣を描く。

 手順2――召喚の呪文を唱える。

 以上………って。


「ちょっと待て」


「何か問題でも?」


 まず、問題しかないのだが、最初に聞いていた非常に難題、成功する事が難しいというのはいったいなんだったのだろうか。 11年間の修行の内容を是非とも教えてもらいたい。


「この内容なら小学生程度でもできそうだが」


「呪文の方はそうはいかないわよ。 さぁ、 始めるから。 危ないから少し離れていて」


 まぁ、見てなさいと飛燕は魔方陣を書き終わった。綺麗な円(直径2メートルくらい)の中に何処の言語なのか理解できない様な文脈が綴られている。 その完成した魔方陣は少し芸術色の強い子供の落書きの様に見える。その落書きの様な魔方陣の端に手を当てる。


 始動‐始まる‐


 開け、扉


 閉ざされし扉よ。我が問いに応えよ


 天空の杯に選ばれし大いなる魔術の使い手よ


 今ここに、契約は成された


 扉は開かれた。ここに体現せよ、NO'S


 それらしい呪文(言葉の羅列)の後、魔方陣から吹き荒れる突風。突然の事に両腕で顔を覆い、突風に耐える。


 風が止むと飛燕の描いた魔方陣の中央には巻き上げられた土が煙のように漂っているが、その中に人の形をした何かが立っている。


「成功…したの?」


「僕に聞かれても…わからない」


 土煙が落ち着くとそこにはローブを深く被り、体系を隠すような分厚いコートを羽織っている様で、その外見からは性別の判断はできなかった。


「貴方がマスター?」


 第一声のその高い声色から女性ではないかという憶測がたったが、定かではない。


「違う。僕じゃない」


 瑛は即座に否定した。 あの男と対峙した時の様な強烈な恐怖は感じられない。 だが、一応何時でも逃げられるように瑛は思考だけを切り替える。


「なら貴女ね、召喚に応じて参上しました。 マスター」


「NO'Sってのは、男だけじゃないんだな」


「「は?」」


 カチッと音を立てて、空間にヒビが入ったように空気が軋んだ。


 どうやら口を滑らせたようだ。 しかも飛燕と呼び出されたNO'Sは性格が似通っているらしい。


「何を言っているの? アキラ」


「NO'Sは、天空杯を欲する。 者たち、性別は関係ありません!!」


「………」


 またもや呆気にとられてしまった。


「コホン。 それで…ですがマスター飛燕。 彼は何者ですか?」


 僕を見据えるNO.9。


「彼はNO.11のマスター………なんだけれど、今は魔力が循環できなくって召喚できない。それどころかこのままの状態が続くと、彼は自身の存在を維持する事すらできなくなってしまう」


「はぁ~ん。 そう言う方針ですかマスター」


 NO.9がそういった瞬間。瑛でもわかるほど空気が凍りついた。先ほどの空気の軋みも飛燕のピキィッと言う音が立つほどだ。


「NO.9? 何がわかったのか言ってくれるかしら?」


 恐らくこの状況を解説すると、NO.9が何かを誤解して飛燕が激怒してるってことがよく理解できる。


「つまりは、もうしばらくそこのマスターと行動を共にするわけですね?」


 誤解していたのは飛燕の方だったらしい。 少し驚いている。


「……そうよ。 わかっているじゃない」


「早とちり」


 聞こえない音量で言ったはずだが、聞こえてしまったらしく睨まれてしまった。

………

……


「そうそう、少しだけ長くなるけれど説明しておくことがあるわ」


 一体どんなことだろうか、恐らく。 戦いの心構えだろうと思うが…。


「さ、座って」


 瑛は飛燕に言われたとおりにその場に座る。


「まずは、マスターについて、教えておくわ」


「ああ、」


「まず、マスターはNO’Sの召喚を行える選ばれた人間のことよ。 全部で15人。 例外はなし、マスターになる条件は『魔に通じる者』、よ」


 マスターになるために必要な条件は、結構曖昧なものの様だ。命を獲り合うというのにこんなことでは巻き込まれるという表現は間違いではない。


「つまり魔術の素質がないものはマスターにはなれないと言うことよ」


「でも、魔術の才能は必要ない。 …魔力さえあれば、どんな人間でもマスターになれるっていうのは物騒すぎやしないか?」


「そうね。よくわかっているじゃないのよ、見なおした。あなたの他にも、似たような状況にいる人間もいるかもね」


「迷惑すぎてため息が出そうだ」


「よくよく考えるとそうなるわね。私も、貴方に会うまでは実際にそんな人間がいるとは思わなかったわ。あと、マスターに選ばれた人間はこの先、生きるか死ぬか分からないの行動の選択は迷わず迅速に」


 死と隣りあわせか…今もそうだけど、


「まぁ、簡単に言うと、何にも知らなくてもマスターになってしまう。ある程度の人数が揃ってしまうと、NO'Sは勝手に召喚されてしまうらしいわ」


「そうか…」


 勝手に召喚されるというのは少し気になるが。話を続けて貰おう。


「マスターの説明はこんなものね、」


 戦わなくてはならないのだろうか、最後の一人になるまで、生き残るために、僕は武器を取ることになるのだろうか…。 祈るべきは優菜たちがマスターになっていないことだ。

………

……

2話目、ここまでで結構な人数になってきていると自分でも少々呆れる頃合いです。

さて、今回はヒロイン格の飛燕・アーヴィングについて。基本的に活発な性格だが、闇が深く考え込むと他人の話を聞かない。困ったさんです。1、2話では、導き手になっていますが、彼女自身は誰かに導いて欲しいと願っている…ようだ。

本編について、

1、2話でオープニング部分が終了です。長さの関係で1、2話になりました。次の話では、もう少し今まで出てきたキャラクター達との関係性も見えてくればいいと思います。

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