因縁と再会(10−5)
教会へ向かおうと燕条邸を後にしようと皆で玄関に向かう途中、インターフォンが鳴る。
『アリーシア』へ向かうことで頭がいっぱいでこの強大な気配に気がつかなかったとは…。
「白哉、この魔力量は!?」
「今まで気がつかなかったのか…敵ではないのだろうが…アーヴェル、これは誰だ?」
アーヴェルに問う白哉。
「これは………今まで接触していないNO'Sだ。NO.13、サミュエルだろう」
「って言うことは…雫か。白哉、教会へ行くのは雫と話してからでも遅くはないだろう。 皆、居間で待っていてくれ」
瑛はそういうと皆を待機させ、一人玄関へ向かいその玄関の扉を開ける。
「わかっているって顔ね、瑛」
「そうだな。 雫、とりあえず入れよ。お前も『アリーシア』に行くんだろ?」
雫の顔をまじまじと見ていると、雫は耐えられなくなったふうに笑い出す。
「瑛ったら面白い事言うのね、『アリーシア』へ私が行かないわけないでしょ、でも…ちょっと上がらせてもらうわね、瑛」
そう言うと雫はずかずかと家に入っていった。いいとは言ったものの、堂々とし過ぎではないだろうか。
「って、ちょっと待て! 雫」
瑛の制止も聞かずに雫は居間に到着する。
「ごきげんよう、龍閃君、彩ちゃん」
「雫…お前、要件は?」
「NO.01のリュードに、NO.10のアーヴェルね、それに………NO.11ね。あなたの名はなにこれ。モヤみたいになってわからない。あなた自身も自分の名前を知らないのね。名前はわからなかったけれど、あなたのことは知ってたわよ、瑛の部屋にずっといたNO'Sでしょ?」
瑛と同じ質問をする白哉だが、その質問は完全に無視される。雫はやはり全て知っていた。
「ってことは、飛燕がマスターだってことも知ってたわけか、どうやって誤魔化したんだ?」
「ええ、知っていたわ。 聞かれたときは正直困ったけど、魔力をコントロールして何とか誤魔化したのよ。そうしたら彼女、剣崎君に会いに行ってそれっきり。私も行方を知らなかったけど、敵に寝返ったみたいね」
「違う!!!」
雫のそんな言葉に瑛は怒りを露にし雫に詰め寄ろうとするが、雫と瑛のその間に雫のNO'Sサミュエルが現れる。
「それ以上近づくな。雫、この程度の男にあのような評価をしたのか?」
「瑛!」
NO.11は瑛を引っ張り、自分の後ろに瑛をおく。
「貴方はいきなり現れてなんですか! サミュエル」
武器を抜くNO.11だが、サミュエルはその姿を冷静に見つめ…。
「武器を下ろし退け。 お前程度では私には傷一つ付けられはしない」
「やって見なければ…わからないだろう!」
NO.11はヘイズルーンを片手にサミュエルに斬りかかるが。
「手間をかけさせないで貰いたかったのだが、仕方あるまい。 私は退けと言ったからな」
サミュエルは最後通告だと言わんばかりにしつこくそう言うが、それが逆にNO.11の逆鱗に触れたようだ。
「断る!!!」
「………禁ずる」
サミュエルはNO.11に向け瞬時に左手を向け一言言い放つとその場にいたはずのNO.11の姿突如が消えた。
「なにをした!?」
「この空間は私の支配下になった。逆らわないほうが身のためだぞ?」
どうやらNO.11の姿が消えたのはサミュエルの能力によるものだが仕組みがわからない。
「不服だが従おうサミュエルの言うとおりにしよう」
白哉はそう言うが、とてもこんな奴の言うことは聞けない。これでは相手の都合が良すぎはしないだろうか。
「雫…お前!」
「瑛、黙って聞きなさい。これはもう個人の感情で動いていいような問題ではないのよ?」
「くそ………わかったよ」
瑛は感情を押し殺す。ここで自分が反抗したって何の意味もないという事がわかってしまった。
「それで、何をしに来たんだよ」
「貴方たちの覚悟がどれほどのものか、それを確かめに来たのよ。ま、必要なかったみたいね、邪魔したわ 瑛」
そう言うと、雫は居間から出て行こうとする。
「どこに行くんだよ、雫!」
「決まっているでしょ、教会よ。 瑛達も行くんでしょ? 着いて来て」
雫を先頭に教会へと向かうことになった。答えは出した。これで、ヘルシンを納得させられるだろう。
………
……
…
再び教会へと戻ってきた。
そして、再び瑛達の前にこの男が立ふさがる。
「何があったか知らないがずいぶん遅い到着だな、燕条。僕は先に『アリーシア』へ向かおうかと思っていたところだが、お前を倒すのは僕だ。他の誰にも殺させはしない」
「光…」
一回目に教会へ来たときの事を思い出し、身構える瑛だったが。
「中に入るぞ。 そこで最後の確認だ」
そう言って光は教会のドアを開き、中に入って行った。その後に続くように教会に入る。
「待っていたぞ、燕条 瑛 答えを聞かせて貰おう。 こっちへ来るがいい」
ヘルシンの言葉に従うのは嫌だが、ドアの前にいるのもどうかと思ったので、歩き出す。
「それで、僕たちはどうすればいいんだ?」
歩きながらヘルシンに問う。
「迷いはないか?」
「ない。 僕は、世界を護る」
一歩一歩確実に前に進む。
「何が待っているかわからないぞ?何が起こるのかもこの先の未来の保証はしない」
「わかっている。それでも僕は進むんだ。大好きな、この世界を護るために行くんだから」
更に前へと進む。迷いを振り払い。臆すことなく前へと進む。
「後悔はないか」
「後悔すると思ったら、ここへは来ないさ、ヘルシン」
ヘルシンの前に立つ。
「質問は終わりか?なら、教えてくれ。『アリーシア』へはどうやって行く」
「そんなことか、簡単だ。己がNO’Sの手をとれ、そして『アリーシア』への道を作るだけだ。そら、簡単だろ?」
ヘルシンは簡単に言うが、そんな簡単なことなはずがない。
「もっと詳しく教えろ。ヘルシンお前の遊びにつき合ってる暇はないんだ」
ヘルシンに詰め寄る。
「教えてあげなさいよ、ヘルシン。でなきゃ、サミュエルを呼び出すわよ」
「ほぉ…それは恐ろしい事を…仕方あるまい。教えてやる」
ヘルシンが柄にもなく冷や汗をかき、素直に答えた。
「NO’Sとマスターの祈りがとどけば、『アリーシア』への道は開ける…筈だ」
「おい、筈ってのはどういう事だ? ヘルシン」
「俺が見本を見せればいいのだろう? 流希、手伝え」
「流石の独裁者も、支配者には敵わないのね」
「黙れ! 俺にも恐怖の一つや二つある!」
それでも一つや二つなんだ…。
「やるぞ、流希。 来い」
ヘルシンが流希を近くに呼ぶと、その周囲に魔法陣が出現した。その魔法陣は、いつの日か瑛が見た物に似ている気がした。
「さあ、中に入れ、貴様等!」
ヘルシンの言葉と共にその魔方陣に飛び込んだ。 後悔なんてしない。
仲間達がいるから…。
………
……
…