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螺旋の世界ー終焉に至る者ー  作者: 姫御護来兎
一章『龍の槍』
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天ヲ翔ケ地ヲ裂ク龍ノ槍(6−1)

 ――ずっと昔の話、ずっとはじめに記憶した事柄、それが俺の行動原理の主軸に他ならない。


 これを知っているのは俺と親父殿だけ、他の奴には話したこともない。 魔術師として才能を見出された俺は、親父殿に引き取られた。


 もともと剣崎の家系は剣術と魔術の両方を習得している変わった家系だった。 親父殿に聞いた話だが、それはどちらかが効かない敵にはどちらかで対抗するしかないからだと教えられ、どちらも覚え、親父殿を超えた。


 俺が誓ったことは一つ。 親父殿に拾ってもらった恩を返す。 そのために俺は、天空杯を手に入れなくてはならない。 天空杯は望みを叶える聖なる器だと親父殿に教わった、知識は親父殿の物を。 力はこの身を最大限に、今できうる限り鍛えたものだ。


 たとえ古くからの知人でも、あれを手に入れるためには犠牲になってもらうしかない。 この前のは最後の甘え、俺に許された最後の甘えだ。 これから俺は、その甘さを捨て、唯一無二の戦人となろう。

………

……


「宗も学院に来なくなったな」


「そうだな」


 龍閃 白哉と燕条 瑛の二人は、学食で昼食をとる事にした。学院祭も近いって言うのに日に日に学院に顔を出す生徒が少なくなっている気がする。


「この街で何か起こっているのか、…はてさて。 俺には関係ないか…つまらん」


 そのほうがいいだろうに、龍閃はつまらないとこぼす。


「なんだよ、人間平和が一番だろ?」


「お前は何かしら刺激があるからいいだろ? 雫も、お前に気があるみたいだが?」


「ゴホォ!!!」


 ジュースが気管に詰りそうになり、逆流した。


「―――そ、そんなわけないだろ!? 優菜で手一杯だよ、僕は二股かけれるほど器用じゃない」


「二股じゃないだろうが。 飛燕は別か?」


 飛燕か、そういえば彼女を見なくなってからすでに二日が経過している。 あれ以来、他のマスターとも遭遇していない。 飛燕も積極的にマスター狩を始めたのだろうか…。


「ま、僕もそろそろ始めないとな」


「―――始めるって、何を始める気だ? 瑛、お前はまず、雫、都橋、飛燕の誰かに決めろ」


 眼前に迫る白哉の顔。瑛はそのことを言った訳ではないのだが、勘違いされたらしい。それならそれでいい。


「近いぞ、白哉…誰かに決めろってそれは白哉には関係ないだろ?」


「関係ないっていうのは友人としてさすがに傷つくぞ、瑛。だが、確かに、お前の言うとおりだ。じゃあ何を始めるんだ?」


 ……どうやってごまかそうか、この男をごまかすのはそう簡単なことではない。


「部屋の改装。 そろそろ狭くなってきたからな。 反対側が空き部屋だから広げようと思っていたんだ」


 陣取る場所としては一級品になるはずだ。


「ほぉ…改装かそれは大変だな。がんばれよ」


 と、実際のところ、僕は学院に来ている余裕なんてないのだ。 NO.06のマスター紅兎 光。 それに、NO.8に狙われている身の上なのだが、学院にのこのこ通学していては回りに迷惑がかかりはしないのだろうか、そろそろ自宅に――と言っても、自宅には彩がいる。 こういう場合、どこかに移動するべきなのだろうが、逆の発想だ。ここにいる限り他のマスターは下手に手を下せまい。


「今のところは大丈夫のようだが…」


「瑛!」


 その声と共に瑛を覆うように龍閃 白哉は燕条 瑛を押し倒した。


「何だってんだよ白哉………白哉!?」


 龍閃 白哉の肩には紅い染みができていた。そして、布に染み込むことができなくなった紅い鮮血は地面にぽたりと雫を落とした。


「おい! 白哉、大丈夫か!?」


「でかい声を出すな…。こ、これくらいなんともっ、な、い。大丈夫だ」


 なんともなくない筈はない。 その肩の傷口は貫通していた。 傷口の形から武器は考えられる。 こんな攻撃してくる奴は一人しかいない。


「あの野郎!」


 反対側の建物の屋上からこちらに薄く笑い挑発している男――紅兎 光の姿が見えた。


「瑛! 気をつけろ…お前が本気で戦おうとするれば誰もお前には太刀打ちできない」


「白哉…ああ。行ってくる」


 光を睨みつける。 とうの光は『来いよ、決着をつけてやる』と、瑛を挑発しているような表情をしている。


「いいだろう。 終わりにしてやる」


 誰にも聞こえない声で呟き、反対側の屋上を目指した。

………

……


「光!」


 屋上のドアを勢いよく開け放った、瞬間。


「マスター!」


 NO.11のおかげで光の攻撃を受けずにすんだ。


「この卑怯者め、奇襲とは相応の死に方を望んだか、NO.6のマスター!」


 右腕のミドルシールドで攻撃を防いだ。NO.11、流石に守護者のNO'Sだけはある。


「卑怯者?それは違うぞ、NO.11僕の戦いは正攻法ではないが、戦としては至極まともだ。敵を一撃で仕留められるのなら、急所を狙うのは当然だろ?なら逆に問うが、NO.4の戦いは暗殺が実だが、それすら否定するのか?NO.11!」


 光はその両手にもつ銃を瑛とNO.11に向ける。


「貴方が言いたいのはつまり、油断している方が悪いと? なら、武器も持っていない者を攻撃するのはどういう事だ、NO.6のマスター」


「そんな事は簡単だ、僕たちは敵同士だ。 気を緩めてぬけぬけとあんな所にいるほうが悪い。 第一、君にはそんな余裕があるのか、燕条」


 確かにあいつの言っていることは正しい。 戦いをしているのに学院になんか来ている方が間抜けだ。 だが、


「お前は護りたい日常はないのか?」


「ないな…。僕にはそんなものは必要ない。今の僕の日常は、この世界の修正…この世に蔓延る諸悪の根源たる魔術使いを全て消し去ることだ」


「僕には、それはわからない。 それがお前の望みだって言うんならな、光。それなら、僕は僕自身の命を守るために、お前を倒す…」


「わかっているようだな、NO.11のマスター。 武器を持て、NO.11。 私たちは私たちで決着をつけよう」


 黒いコートの男、NO.6はNO.11と接近戦で殺り合うつもりらしい。 戦いを熟知しているものの考えとはとても思えない。


「貴方は…本気か?」


「光はあの男を倒してください。 私のことは気にせずに、楽しかったですよ、この時代も」


 NO.6は死を覚悟しているようだ。 それでも向かってくるのは何故か…


「ああ。勝つぞNO.6。アイツを倒して飛燕を今度こそ取り戻す。 準備はいいな燕条、行くぞ…NO.6!」


「了解した。 弱音は終わってからもう一度言わせて貰いましょう!」


 NO.11の攻撃を一度受け、右に跳んだ。 それを追うようにNO.11はNO.6追撃する。


「待て! マスター、御武運を」


「ああ…………………さて、そろそろ始めようか…光」


「………行ったか……さて、そろそろ始めようか…燕条」


 互いに向き会う瑛と光。


「僕を撃ったのはお前の意思か、それとも誰かの命令か…どっちだ?」


「決まっているだろ。 そこには僕の意思しかない。 お前を倒し、僕は飛燕を取り戻す」


 頭にくる。白哉を撃っておいて謝罪の意思の一つもない。アイツは本格的に自分の意思で倒さなければならない。


「言っただろ。僕はこの世界を修正する。飛燕には訊かなければならないことがある。彼女は今どこにいる、燕条」


 妙に冷静になった光が銃をホルスターから抜いた。


「武器を持てよ、燕条。まさか手ぶらで来たって訳じゃないだろ?」


 光の挑発を受けたわけではないが、二つにしてあった槍を繋げ、頭の上で数回振り回し、構える。


「覚悟はできているよな、光」


「お前に言われるまでもなく、僕は覚悟を決めたんだよ燕条…お前をここで撃ち抜く為にな!」

………

……

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