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螺旋の世界ー終焉に至る者ー  作者: 姫御護来兎
一章『龍の槍』
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その在り方を否定する(5−3)

 桐吾が偶然にも発現させたその召喚陣から一人の少女が顕現したのだが…。


「フム、空気が美味い!」


「………」

「………」

「………」


 その最初の一言に、始まったばかりの戦いは停止した。

「童はNO'S NO.07『厄難の復讐姫』ヴィーラ・ターンシェである。童の敵は何処におるか?いや、敵の前に我が主は何処におる?」


 その場にいる人間は桐吾ただ一人。必然的に、彼女は桐吾のNO'Sということになるのだが…。


「これが…俺のNO'Sだと?」


 様々な意味で驚きを隠せない桐吾。ヒラヒラしたスカート、煌びやかな装飾の軽鎧。そして、この言動。


「おー、おー、世界は輝きに満ちておる!して、童の主は何処!」


 名乗り出たくもなくなるであろう彼女の言動。そして、感情表現がすぐさまに表現されるその表情。


「すみませんが………あなたは本当にNO'Sなのですか?」


 複雑な表情を見せるNO.01。


「童がNO'Sであるということに間違いはないが、NO'Sがなんなのかが思い出せん! ハッハーッ!」


 顔を片手で覆う。どうやら戦意を挫かれたようだ。


「だが、一つだけわかる事がある…」


 急に真面目な顔つきになり、リオンにその標的を定めたのか、一気に零距離までつめ、


「お前達が童の敵であるということだッ!アヴォルグ・ラ・ヌマ真名解放『破断す定めの楔』」


 零距離から必殺の一撃を放とうとするヴィーラだったが、その一撃が放たれる直前にリオンは直撃を回避するべく大きく飛び退く。


「油断できない奴だな…こいつ…コイツは…」


 NO.03はNO.07との一瞬の攻防にどこか思い当たる節があるようだ。


「お前は…確かにいた。思い出したぞNO.07お前の在り方を…でも、お前はそれを思い出してはいないのだろう…何故だ…何故誰も覚えていない!」


 リオンの叫びが木霊する。


「おい、紅いの…お前は戦場を乱す…おい、NO.01、NO.07まずはコイツを仕留めてしまわないか?」


 リオンの言葉に苛立ちの限界を感じたNO.06はその様な提案をする。


「私は構いませんよ。複数で囲むのであれば、彼は倒しやすそうだ」


 簡単に了承するNO.01彼には最初から倒す順序が決まっていたようにも見える。


「童はなー童は……」


 再び、何を考えているのかわからない天真爛漫な表情をうかべながら、幼さを感じさせる口調でそうつぶやく。


 NO.07。先ほどの事もあり、リオンは警戒し、リュード、NO.06は答えを待つ。

「童は…敵を殲滅するだけだッ!」


 狂気を感じさせる表情をつくり、今度はNO.06との距離をつめようと、一息に詰め寄ろうとするが、


「行動が読めないな…ッち…」


 舌打ちをしながら、NO.06は弓を構え、そして矢を放つが、NO.06が放った矢を拳で打ち払い、NO.07は一直線に向かっていく。


「この程度か!つまらないとはこのことか!む?お前たち以外の魔力を感じるぞ!フム、さて主はそなたか?」


 ようやく桐吾の存在に気が付いた様に、急に動きを止めるNO.07。実際、今のところの行動のすべては何も考えてはいないのではないかと言わざるを得ない様に見える。


「はぁ、たぶんそうだ。で? どうするんだ?戦うんだろ?お前」


 と気が付かれてしまったと、嘆く桐吾。


「主が望むなら戦おう。だが、望まないというのなら…やはり、戦うだけだッ!」


 まったく行動が読めないNO.07の登場に、自らの戦いをすることができないでいるNO.06とNO.01だが。


「ッち…ここは光の後を追った方がよさそうだ…決着はいずれ付けるか!」


 思うように戦えず、撤退を決意するNO.06だが、やはりNO.07はそれを遮る。


「逃がすと思うな!お前たちは童の敵だッ!」


「させるか!イルマリオン!」


 NO.06にNO.07の拳が迫る。が、その間にリオンが割って入り、NO.07を一時退ける。


「礼は言わんぞ」


 そう言い残すと、NO.06は姿を消した。


「邪魔をするな…そういったはずだ!」


 NO.07は拳に魔力を込め、リオンに殴りかかる。


「アヴォルグ・ラ・ヌマ真名解放『破断す定めの楔』ッ!消えろ、消えろ、消えろッ!」


 NO.07の魔力を込めた連打をリオンは自身の武器、大鎚イルマリオンで受ける。が、徐々にNO.07の連打の速度についていけずに、攻撃が決まり始める。


「ッく…かハぁ…」


 三発程が腹部に当たり、弾き飛ばされるリオン。


「技のキレだけは変わらずか…まったく、性質が悪い…だが俺は退くわけにはいかない!紅蓮に染まれ…我が心象の如く…イルマリオン真名解放『焦がす炎天の紅蓮』」


「待ちなさい…その技は!」


自分の口から出た言葉に驚く。


NO.01は、それを知っている。その技を、その技がもたらす物を、その結果を。


「待てるかッ!」


 イルマリオンのその全体から焔が吹き荒れ、焔が周囲に拡散していく。


「お、これはまずいまずい…主退くぞ」


「な? あ…おいッ!」


 NO.07に引っ張られ、桐吾は抗うことができずに、強制的にこの戦場から退避させられた。


 あたりの木々を次々と燃やし、イルマリオンの紅蓮は周囲を侵食していく。


「さぁ、続けるか。残ったのは俺たち二人だけだ…NO.01…思い出せたか?」

「私は…私は…」

 先ほどの自分の言葉に、NO.01は周囲の状況などに気にかける事もできずにいた。

「思い出してくれよッ!」

 イルマリオンを地面に落し、NO.01の胸倉に掴み掛る。


「思い出せ!俺たちの目的…存在意義を!」


「私は…NO'S NO.01『天空の公王』…NO'Sは存在するその全ての世界を世界を………世界を―――」


 NO.01は急に意識を失った様にその場に膝をつく。


「おいッ!」


 立ち上がり、真っ直ぐ前を見つめる。その瞳は何処か虚ろで、そして何より。先ほどまでの威厳の様な気配は完全に消え失せていた。


「NO'Sは世界を―――破壊する者だ」


 リオンを蹴り飛ばし、ラングラッドを構える。その様は完全に何者かに支配されているように見える。


「何が…一体どうなっていると言うんだ!」


 リオンの絶望を宿した叫び声が響き渡った。その声は、先に退いた者たちにも届いているだろう…それほどの深い哀しみを含んだ絶叫であった。

………

……


 戦うだけの機械の様になってしまったNO.01の攻撃を避けながら、リオンはこの状況をどう打破するか。この最悪な事態を、どう修正するか。そのことだけを考える。


 本当は戦いたくはないだが、こうなってしまっては戦う以外の選択肢を見出すことはできない。


「何があんたをそんな風にしちまったんだ…なぁ!答えてくれよ…答えろよ!」

 NO.01に殴りかかるが、今の彼は顔色一つ変えずに、虚ろな瞳だけがこちらをとらえている。本当に、これでは機械と一緒だ。


「おいッ!」


「ウゥウウゥー」


 低く唸るNO.01。先ほどのしっかりとした人としての意思は何処に行ってしまったのだろうか。


「俺があんたの心を連れ戻す…」


 槍剣ラングラッドを乱暴に振り回しながらリオンに向かってくる。


「ッく…」


 振り下ろされたその一撃を大鎚イルマリオンで防ぐ。


「先ほどとは威力が段違いだ…。無意識に手加減していたとは…NO.01、あんたはやはり覚えていた…これならどうにか…」


「何を言っている…」


「誰だお前は…」


 NO.01の口から彼の声ではない声が放たれる。


「私は彼のマスターにして、この病院の医師、城山凛華(シロヤマリンカ)だ。ようやく私の人形にすることができたよ。君のおかげだ…彼は聊か私の手法が気に入らないらしくてねぇ…だが、君が彼の精神に揺さぶりを与えてくれた。それに合わせて彼を私の完全な支配下に置かせてもらった。ありがとう…だが、君にはここで死んでもらおうか」


 先ほどの機械の様なそれとは違い、確固たる意志を感じる。だがそれは本来の彼のものではない。NO.01の意思は消えてしまった。彼をどう救い出せばいい…


「俺は…あんたを仲間を救うぞ、NO.01」

………

……

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