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螺旋の世界ー終焉に至る者ー  作者: 姫御護来兎
一章『龍の槍』
14/48

その在り方を否定する(5−2)

「返事をするわけないじゃないですか、あの人は馬鹿なのですか?」


「はぁッ!?」


 そのとんでもない反応に驚いて声を上げてしまった。

―――やばい…。


 ばれた。絶対に気が付かれた。そう思ったのだが…。


「桐吾さん、こんな夜中にそんな大声あげるなんて、非常識っすよ」


 宗―――が、なぜこんな時間にここに…。とこれはチャンスと思い、瑛はNO.11を連れ、ここから離れる。


「剣崎、お前自分が何をしたかわかっているのか?」


「いやいや、桐吾さん。今夜の俺が普段の俺と同じだと思っているんですか?」


 どこからどう見ても普段通りの剣崎 宗なのだが、この意見は本人以外の全員であろう。


 根拠のない自身に満ち溢れている。それが剣崎 宗である。


「どの角度から今のお前を観察して見ても、普段通りなんだが?」


 桐吾は少々苛立ちながら、宗にそう問う。


「ああ、それはちょっと待ってくださいね、桐吾さん」


 と、そういうと、桐吾にそのままそのままと合図をしながら、瑛の隠れていた近くまで来る。


「よッ!」


 近くの木に足をかけると宗は一気に木に登り。


「ちょッおま…やめろ、放せ。落ち――――あああああぁぁあぁ」


 宗は誰かを木から突き落としたようだ。危険な高さではないが。乱暴すぎるだろう。


「っと、こんな具合な訳ですよ。桐吾さん」


 どんな具合な訳なのだろう。


「非常識なのはお前だ!剣崎、僕が何をした!」


「何って、堂々と学院から出て行ったお前を連れ戻そうとしたんだよ、光」


 光というと、紅兎 光だろうか…こんなところで一体何をしようっていうんだ…。


「はぁ?いい迷惑だ。剣崎、君は少々他人に干渉しすぎる傾向にある。やめてくれ」


 宗に文句を言う光だが、状況が悪い。明らかに、宗に分がある。理由は…


「お前か、いろいろと問題を起こしてくれている転校生というのは…初めましてだな、紅兎 光。俺は霧夜 桐吾だ」


「だからなんだというんだい? 君が誰であろうと、それは僕に関係ないのだが? どうした、剣崎、いつもの君らしくない様に見えるが?」


 桐吾相手に何も知らない光はいつもの調子で話を続ける。頭を押さえ、残念そうな顔をする宗。


「おい、」


「なんだ?上級生。多少早く生まれたというだけでその態度、君に僕より優れた点があると?」


 宗はあきらめた様に、光に近づき肩をたたく。


「がんばれよ、光。」


「何を言って…」


 光はとっさに躱したが、光のいた場所を桐吾の拳が貫いていた。


「このくらいは避けるか…身体能力は剣崎より上か。なら」

 桐吾は光に向かって、連続の蹴りを繰り出す。


「この…僕に…僕に向かって…お前!重い………」


 桐吾の蹴りを受け止める光。銃を抜くとは思わないが、光はどの様にして戦うのだろうか。


「受け止めるか…ならば!」


 受け止められたその蹴りをそのまま上に振り上げ、叩き下ろす。


「痛ッ……お前…ふざけるな!」


 今度は左腕で桐吾の踵落しを受け止めると、右手で桐吾に殴りかかるが、桐吾は余裕でそれを避ける。


 距離を離した桐吾に対して、頭に血が上った光はブーツの内側からナイフを取り出す。


 それは果物ナイフなどではなく、殺傷能力を追求したそれ様のナイフに見える。


「そうか…そうか…そうかッ! 紅兎 光、お前は知っているんだな…俺が求めている世界モノを…」


「お前の欲しい物なんて興味ない!はぁ、やめだよ、やめ」


 そう言って光はナイフをもとあった場所に戻した。


 急にテンションの上がった桐吾に、逆に光は興冷めしてしまったようだ。


「おいおい、俺をもっと楽しませてくれよ、紅兎 光」


「いいや、一時休戦だ。剣崎、お前もどうにかしろ、そこで笑っている場合か」


 光はナイフを戻した訳ではなかった。今度はジャケット下のホルスターから、右手で銃を抜き。何もない方向に銃を向ける。宗、桐吾共に光のその行動に首をかしげるが


「そこの君は…人間ではないな?姿を現すがいい」


「私の存在に気が付くとは………君は選ばれし者の様ですね、ですが残念です」


 姿を現さず、その声だけが聞こえる。


「残念?獲物がそっちからやってきたんだ…僕には喜ばしいことこの上ないのだけれどね…剣崎、そこの上級生を連れて今は帰ってくれないか?」


 と、宗に提案するが。


「「断る」」


 光の前に立ち、桐吾と宗はその見えざる声の主に向かい、


「残念ってのは、ここから俺たちを帰さないってことを意味しているのか?」


「その通りです」


 すぐ様に声だけが返ってくる。


「ってことは面白いことになるに決まっているだろ? 光、手を貸してやるよ」


「まったく、あの学院ってところには馬鹿しかいないのか?」


 ッふ、と笑い光は左手にも銃を持ち、声の主に備える。


「まったく…人間とは面白い存在です…私の主は盤石の態勢を整えるまでは私を戦場に出そうとはしない…のですが、私の防衛線の中に入ってきたあなた方がいけないのですよ。さぁ、自分のNO'Sを召喚しなさい、人の身程度では私の攻撃を防げませんよ?」


「ッち…出てこいNO.06」


 光は仕方がなく、NO.06を呼び出す。のだが、


「おおぅ………人が急に…NO'Sってなんだ?」


 NO.06の出現に驚きを隠せない桐吾。


「なんだよ、NO'Sって、おい光!」


「うるさい! そんなことを今は説明している場合じゃない!僕とNO.06でどうにかするから君たちは手を出すな…脅しじゃない、本当に死ぬぞ?それはそうと、そろそろ姿を現せよお前NO'Sなんだろ?」


「嗚呼………こんな素晴らしいマスターなら、私も颯爽と戦えたのでしょうが…仕方がありません」


 足音が聞こえる。カチャ、カチャと、金属の音が、そして、何らかの武器を振るう音と共に声の主が姿を現した。


「私はNO.01『天空の公王』リュード・ガルレオン………騎士のNO'Sでは…私の攻撃を防げませんよ?」


 その男は金属性の額あての様な物を額に付け、銀色の輝きを放つ鎧に包まれた騎士の様な出で立ちをしていたが…彼のその言動は騎士のものには思えないそう、それは騎士よりも上位の存在…


「皇位のNO'Sだと…だがな…」


 光は驚いているようだったが、


「これは都合がいい。こちらのNO.06は兵のNO'S…竦みの上ではこちらに分がある様に思えるが?」


「光、相手の力量をそれだけで判断していいものなのか?」


「判断の確定はしていないさ。NO'Sの竦みは皇位、騎士位、兵位の3つに大きく分けられ、皇位は騎士位に、騎士位は兵位に兵位は皇位に強い。そして敵は皇位、NO.06は兵位だ大前提としては有利であるだろ?」


 と、疑問をもった宗に答える光、多少の余裕はあるようだ。


「そうですね、大前提ではあなたの言うそれが正しい………ですが、皇位つまり我々王には騎士や兵には無い力があるのですよ…それをここで使うことになるのは致し方ありませんね、みなさん、ここで死になさい」


 NO.01の死亡宣告の直後、NO.01が背中に背負っていた彼の武器であろうそれを構える。その武器は大剣なのか、槍なのか、そのどちらにも共通する姿に見える。


「ラングラッド…」


 NO.01が距離も関係なくその槍の様な大剣(大剣の様な槍)で突きを繰り出すと、その動作に呼応する様に剣先(穂先)が伸びる。


「危ない!」


 いち早く、その形態の変化に対応したのは宗であった。


 桐吾と光を突き飛ばし、自らもそれをギリギリのところで避ける。


「やれやれ、随分と目のいい人間だ…一撃で力尽きた方が楽ですよ?」


 次の攻撃をとても受けられるような体制にない、宗に狙いを定めるNO.01。身構えようとそちらに視線を向ける宗の、眼の前に


「そうはさせねぇええええ!」


 NO'S NO.03リオンが突如現れ、NO.01の武器を弾き上げた。

………

……


「NO.01…いいや、リュード、アンタもなのか?」


「………どなたですか?私は、あなたの様な人を知りません。どいていただけますか? 邪魔ですよ」


 NO.01はその武器を構えなおす。


「おい、お前…邪魔をする気か?」


 光たちを守るように登場した、NO.03リオンの背後にいるNO.06がリオンを睨む。のだが、


―――乾いた夜の空気に光の放った威嚇射撃の銃声がよく響いた。


「NO.06少し黙っていろ…おい、お前…また僕の邪魔をするのか?」


「そんなこと言っている場合じゃない! 相手はお前のNO'Sでどうにかできる相手じゃないんだぞ!状況をよく見ろ!」


 光を諭そうとするリオンだったが、光はリオンに銃を向ける。


「状況をよく見るのはお前の方だ。お前の前後にいるのは敵だ。僕たちを勝手に自分の仲間に数えるんじゃない」


 リオンに敵意を向ける光。


「敵かよ!っち…桐吾さん、すみませんが、俺は少し本気出さないといけないみたいですね…」


 と、宗の腰に二本の達が出現する。


「視覚を偽るか…やはり、君も魔術使いか。それにしても随分と物騒な物を」


「お前に言われたくないッ!冗談はこれくらいにして…おい、アンタら、こっちは四人、アンタらは敵同士…ってことは、乱戦ってことでいいなッ!」


 腰の刀のうちの一本を抜き、構える。飛燕を退けた刀、夢幻だ。だが、そのことを知る者は一人もいない。


「お前たち…おい、NO.06のマスターお前、関係ない者たちを…」


「それこそ、僕の知ったことではないよっ痛てッ!」


「紅兎、目の前の敵に集中しろ…それに、何やら集まってきている…よからぬ気だ…」


 この事態を観察するためにマスターとNO'Sが何らかの手を回しているのだろう。


「やれやれ…どうでもいいですが、そろそろはじめてもいいでしょうか?」


 NO.01が呆れたようにこちらを見ている。


「待て、俺の話を聞いてくれ!」


「黙れ。敵の言葉などに聞く耳は持たない!いくぞ、NO.06僕は、あいつらのマスターを探す。この場は任せる!」


 リオンの言葉を遮り、光とNO.06は戦闘行動を開始した。


「桐吾さん、俺たちは普通の人間だ。まともに戦ったら死にますよ?」


「剣崎、俺をそこらの人間と一緒にするな」


―――一緒じゃないですかと言おうとしたが、宗は口を開くのを止めた。


「桐吾さん!」


 桐吾の背後から、何者かが桐吾目がけ短刀を投げつける。


「誰だ!」


「群れてるなぁ…群れている…斬らせてもらおう…我が凍てつく刃で…」


 刀を武器とするNO'Sが突如として現れる。


「NO'Sか…」


「俺はNO.04…いざ、尋常に撥ねられろ!」


 桐吾の首を狙った一撃を放つNO.04。だが、その一撃は宗によって防がれる。


「桐吾さん、こいつは俺が!」


 NO.04に一撃をあびせ、NO.04はそれを避け、標的を宗に変えた様だ。宗はNO.04を引き付ける様にこの場を離れて行った。


「あいつ…普段よりいい動きを…」


 本気でやっていなかった宗に若干の苛立ちを覚えたが、今はそれどころではない。


「…俺はどうすればいいんだ?」


 疑問が残る。この状況…敵はNO'Sという人の見た目をした人以上の存在の化物が、今ここに三人。敵であるNO.01、NO.03と光のNO'Sであり、味方?であるNO.06。と、そしてこの場に残された霧夜 桐吾………。


 ―――この場に残り何をなす?常人より少しばかり強いというだけで、俺はただの人だ。人の枠を超えてはいない。


 ―――俺にできることなどない。あの者たちは、人の枠の外側…超えた者たちだ。


 ―――なら俺は…どうすればいい。何をすればいい…。俺は…俺は…俺は…。


「俺は…戦いたい。あの者たちと戦える力が欲しい」


 ―――俺の望みは…この退屈な日常から解き放たれることだ。


 ―――だがそれは、力尽きて倒れることではない。生きて、生きて、生き抜いて、俺がこの世界に君臨し続けることだ。


「俺は!」


 桐吾の目の前の地面に突如魔方陣が出現する。


「な、なんだこれは…!?」


 驚いた桐吾は少し後ずさった。あまりの光景に自分の知りうる知識では対応できない現状に狼狽えるではなく、彼は只々…。


「俺の…世界が外れた………」


 その表情は歓喜というには歪んだ表情であった。

………

……

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