昼下がりの吉田屋
俺は何処にでもいるごく平凡な高校生で、牛丼の吉田屋でバイトをしている。
……『嘘に事実を混ぜるとリアリティが増す』とよく言われるが、流石に30年の月日は誤魔化すことは出来ないようだ。
まぁ、そんなわけで本当の事は吉田屋でバイトしてるということだけ。オイラの名前はたかし。あと数ヶ月で48度目の誕生日を迎える、しがないサラリーマ……もうやめよう、悲しくなる。はい、そうです、フリーターです。
でもね、これでもがんばった方なんだよ? 自慢じゃないが、半年前はニートやってたからね。しかも、27年間も。大ベテランでしょ!
「なんか自分語りしたい気分になってきた」オイラはこうのたまうと、中二病をこじらせたガキがやりそうなポーズ——左手で顔を隠し、右手は左の方へ突き出す——をしてこう言った。
「それでは聞いてくれ」——今年48になるおっさんがこんなポーズをとっていたら、みんなもつい「シェーーーーーー! 」を期待してしまうのではないか? だが、だてに周り期待を裏切り続けて48年生きてきたオイラじゃない。これでいいのだ。
「富山さつきで『稲城越え』」満足そうな顔でそう言った。そうだ、ここで曲紹介をするのがオイラらしいや。




