くちびる。
わたしはあなたのくちびるを見ます。
ピンク色ではありません。
鮮やかでもありません。
むしろ、くすんでいます。
かわいていて、薄皮が浮きあがっています。
わたしはそれに、かぶせるようにくちづけて、歯で薄皮をつまむのです。
ひきむしりながら舐めるなら、きっと血の味なのでしょう。
……興奮しますね。
妄想がバレると困るので、くちびるを、見るのはやめて目を見ます。
あなたは、どうということがない顔で、わたしを見ています。
わたしは、どうということがない顔で、あなたを見ています。
生きてるってつらいですね。