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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

告白

作者:

 


 「好きなんだ」


 「え」


 突然のことに俺は言葉が出なかった。人生初のラブレターを貰い、待ち合わせ場所である中庭に行ってみると、突然、告白され、しかも、相手は同じクラスの男なんて、驚き以外出てくるわけがないだろう。


 しかも、俺より、遥かに身長が高いものだから、見上げなければ、相手の顔を見ることが出来ないのであった。


 ちなみに俺の身長は150ほどで、相手は190近い身長の高さである。


 柏原裕太。同じクラスで、スポーツ万能の超ポディテブなクラスの人気者。


 茶髪の髪を、後ろで、束ねていて、制服を着崩しているのが、特徴だ。


 一方、俺、中西佑真はというと、運動音痴で、取り柄は勉強だけの超ネガティブで、クラスでも、存在感ゼロに近かった。


 そんな自分とは全く、正反対の俺なんかに告白するなんて、どうかしているのではないかと思うほかなかった。


 (からかわれてるだけだよな)


 クラスの奴らか、友達と、グルになって、俺をからかおうとしているだけであろうと思っていたので、からかうのは止めてくれと、言おうと口を開いた瞬間、柔らかい感触を唇に感じたのであった。


 それはまぎれもなく、目の前の超ポディテブ長身男、柏原裕太の唇であった。


 (俺、男にキ、キスされてる)


 突然、告白され、しかも、相手は男のうえに、ファーストキスまで、奪われてしまうとは彼の考えていることは俺には理解不能だった。


 「なんで、急にキスなんか…」


 口付けられた感触を忘れるかのようにゴシゴシと唇を袖で吹きながら、訪ねた。


 「だって、かわいいからさ、つい、したくなったんだよ」


 「かわいいって」


 その言葉にかぁっと、頬全体が赤くなった。


 かわいいだなんて、普通、女の子に言う台詞のはずなのに、目の前の男の目は節穴なのだろうか…


 そして、そんな彼の台詞に頬を赤らめる俺も普通ではないのだろうか…


 (俺は男なのに、いつから、乙女になったんだ)


 まさか、俺は同性しか、愛せないホモなのだろうか。


 (そんなはずはない。だって、いままで、男なんか、好きになったことなんて、ないんだから…)


 (いや、でも、もしかしたら、そうなのかもしれない…)


 嫌なことばかりが、頭に浮かんできて、俺は頭を抱え込むしかできなかった。


 「どうかしたのか」


 そんな俺を見て、心配そうな顔をする柏原。


 「何か、悩みがあるなら、相談に乗ってやろうか」


 その悩みの元凶は「柏原裕太、お前だ」などと、ネガティブで、口下手な俺が言えるわけなどなかった。 


 言葉で、言えないかわりに俺は憎しみを込めた渾身の目で、柏原裕太を睨みつけた。

 

 しかし、彼には無意味なようである。


 「そんなに、見つめるなよ、照れるだろ」

 

 「……」


 もはや、呆れて、何も言葉が出てこなかった。


 顔を赤らめて、両手で、頬を抑える彼には俺の渾身の憎しみを込めた目は熱い眼差しに見えるようだ。


 「やっぱり、俺たちは運命の赤い糸で、結ばれてるんだな」


 うっとりしながら、目の前の男はそんなことを呟いた。


 (運命を感じているのは柏原裕太、お前だけであり、俺は絶望の青い糸をお前との間で、感じてるよ…)


 「そうかな」


 なんて、言えるわけないから、作り笑いを浮かべて、彼に微笑むことしか出来ない自分が情けなかった。


 「そうだよ。いやあ、嬉しいなぁ、佑真と、付き合えるなんて」


 「え」


 照れながら、頭をポリポリと掻く奴には悪いけど、俺は付き合う気はさらさらなかった。


 あまり、関わり合いのない、ましてや、男なんかと、誰も付き合おうとは思うわけがないだろう。


 だから、断ろうとしたのだが…


 「これから、よろしくな、佑真??」


 そう言って、幸せそうな笑顔を向けて、俺を抱きしめる男にそんなことを言えるはずがなかった。

 

 「さてと、告白も、無事、成功したし、そろそろ、帰るとしますか」


 「また、明日な、俺のかわいい愛しの佑真」などと、言いながら、手を振りながら、去っていった彼を見送りながら、またまた、恥ずかしさのあまりに頬が赤らんでしまった。


             

 「最悪だ」


 高校三年間、平和な学校生活を送りたかったが、どうやら、それは叶いそうもなかった。


 (明日から、地獄だ)


 まず、教室に入るときの皆の視線で胃が痛くなるだろうことは目に見えているので、その日の夜、俺は鞄に大量の胃薬を入れたのであった。


        おわり

 


 

 


 


 


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