6/9
5:出逢い
今回は短いです。
『あの、すいません。どいてもらえますか?』
その声で我に返った。
見上げていた青空から目を離すと、俺の目線のかなり下にティーンエイジャーくらいの女の子が立っていた。
その手には沢山のカサブランカを抱えて。
俺の身長は180を超えているが、彼女の身長は160cm無いのだろう。顔がかなり上がっている。
小さな彼女は俺を見上げて驚いた表情をしている。
「え…桐生総一郎…?」
「そうだけど、君、もしかして日本人?」
「はい。って、顔…どうしたんですか。痛そうですけど…。」
「あぁ…。なんでもないよ。」
「何でも無いってわけないじゃないですか。そんなに痛そうなのに。来て、私、ここにいる腕のいい医者知ってますから。ほら、来てくださいよ。」
「いや、もう治療してもらったから。」
「いいから、早く!後遺症でも残ったらどうするんですか、そんな男前の顔なのに、もったいない。」
もったいないって。
面白い事を言う子だ、仕方ない。今出てきた処置室に戻るとしよう。
カサブランカを抱えた彼女に、大人しく着いて行った。
それが、俺と祥子の出逢いだった。