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プロローグ:香り
カサブランカの香りが漂っている。むせ返るほどの濃厚な香り。
この香りは、あいつを思い出す。
あいつが好きだったカサブランカ。
なぁ、お前は今どうしてる。
千歳には逢えたか。
今は千歳と一緒にいるのか。
二人でお前達の子供を見守っているんだろうな。
祥子。
俺の最愛の祥子。
俺はお前と逢えて、幸せだった。
お前はどうだった?
俺は、千歳に怒られるだろうな。あいつは俺に対して容赦がないから。
祥子。
今年のお前の誕生日はカサブランカを持って行くよ。
待っていてくれ。