↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

勝手に嘘つき呼ばわりされてパーティから追放されそうなので、どうにか抵抗してみようと思いました

作者: ふたーなる
掲載日:2026/09/23

 「お前とは一緒に冒険できない。悪いけど、みんなもそういってるんだ」


 そうやって人のせいにして、ずっと俺を追い出したそうにしていたじゃないか。


「へ〜、それはいいアイデアですね」


 メンバーは皆首を傾げている。


「だから、すまないがここで帰ってくれないか?」


「まだ残りたい場合は、どうすればいいですか?」


 リーダーのハンスが苦笑する。


「お前を危険な目に合わせるわけにはいかないからな」


「じゃあ、なんでそっちの二人は危険な目に合わせて良いんですか?」


 すると弓使いのアシュリーが「正直に言うわっ」と啖呵を切った。

 こんな、冒険の途中で揉める冒険者がどこにいるんだがね。


「皆、あんたにうんざりなのっ。あんた、ずっと空気読めてないのわかってるの?」


「・・・例えば?」


「今だってそうじゃん!」


 アシュリーは持っている弓をギュッと握りしめる。


「いつも嘘ついて仕事をろくにやらないし、それに私のことエロい目で見てるんでしょ?ほんと、気持ち悪い!!」


「別にね、お二人は気持ち悪くないですもんね?三対一ですよ?」


 ハンスはまだ苦笑を浮かべている。


「とりあえず、あんたとは誰も一緒にいたくないの」


「え〜、お二人はどうなんですか?」


 俺はハンスと、僧侶のグレッドに話を向ける。


「ハンス、俺も代わりに正直に言わせてもらうよ。お前のこと、みんな嫌いなんだよっ!!」


「でも、それって感情の話ですし、それだけで追い出すっていうのは、あんまり良くない気がするんですけどね」


 するとグレッドは俺の胸ぐらを掴んで「お前、もう喋るな」と唾を飛ばしてきた。


「喋らせてくれないなら、俺帰りませんよ」


 ハンスが「まあまあ」と言って俺とグレッドとの間に割って入ってくる。


「俺思ったんですけど、自分でそういうことを言わないで部下に言わせる人って、あんまり上に立つ人物としてふさわしくないと思うんですよ。とすると、まずはハンスがリーダーにふさわしいか決めたほうが良くないですか?」


「お前は、もう喋るなよ」


「だから、喋らせてくれないなら、俺は帰りませんよ。せっかくだし大事なことなんでもう一回言いますよ。喋らせてくれないなら俺帰りませんよ」


 グレッドは持っていた杖をボキ、と握りしめる。


「あんた、それにこの前嘘ついたじゃん。私たちの報酬自分だけ多くもらってたよね?」


 俺はすぐに「嘘じゃないですよ」と否定する。


「は?私、しっかりとこの目で見たもの!嘘つくなんて、最低よ!」


「じゃあ、言わせてもらいますけど、俺、多分この中で一番正直者ですよ」


 グレッドはまたもや「殺すぞ!」と俺を脅迫してきたので、俺は「まあまあ」と言って彼を落ち着かせる。


「まあ、皆さんの言いたいことは十分わかってますよ。確かに、皆さんにはコソコソと隠し事をしていました。しかし、見方を変えてみてください。俺、自分に対してめちゃくちゃ正直ですよ!これ、わかりますか?金がほしい、アシュリーちゃんの着替えを覗きたい。まだ、追放しないでほしい。これって、めちゃくちゃ自分に正直だと思いませんか?」


 するとグレッドが「ふざけんじゃねえ」とまたもやこちらにつばを飛ばしてくる。


「いや、ふざけてないんですけど。嘘つかれました。俺、嘘つかれましたよ!!」


 すると、ハンスが一歩こちらに寄ってきて「みんな、わかったよ。俺が、責任を持ってこいつを追い出すよ」と言ってきた。


「いや、え?これは、罪ですよ?もし、追放されたことで俺が死んだら、原因は誰にあると思いますか?」


「お前がさっき言ってただろ?リーダーとして責任を負わないのはリーダーにふさわしくないって」


 めんどくさい。


「でも、人殺しのリーダーにも誰もついていかないと思うんですけどね。そこんとこ、どうなんですか?それに、人に言われたからってそうやって急にリーダーぶっちゃって、良くないと思いますよ」


 俺がそういうと、後ろの二人は「こんな奴置いて先に行けばいいんだよ」と声を合わせてきた。


「でも、それで後悔しないと言い切れますか?その、考えてみてくださいよ。俺を連れてくことでする一〇〇パーセントの後悔と、俺を置いていくことでする時限爆弾の後悔、どっちが怖いですか?そうやって、目先の後悔したくなさに目がくらむと、後で痛い目見るのはみなさんの方ですよ」


 そして俺は「これは、皆さんのためを思って言っているんです」と付け足す。


「でも、お前を置いていけば後悔しないかもしれないじゃねえかよ」


 グレッドが立ったまま貧乏ゆすりをしながらそう言ってきた。


「でも、それって俺のしてきたことと変わらないと思いませんか?俺は、「バレないかもしれない」と思って金をちょっと多くもらってたし、「バレないかもしれない」と思ってアシュリーちゃんの着替えを覗いていたわけだし、なんなら追放されてもそれだけはやめませんからね。それに、「追放されないかもしれない」と思って、今こうやって反抗しているんですから、それって同じだと思いませんか?」


「同じなわけないでしょ!!あんたと一緒にしないで!!」


「あ、出ました出ました。もう、俺ずっと待ってましたよ!!」


 アシュリーちゃんは、一歩引いてグレッドの後ろに隠れた。


「一緒にしないでって言いますけど、一緒ですよ。もっと、自分の気持ちに気がついたほうがいいんですよ。ね?」


「だから、さっきから正直に言ってるじゃないの!!あんたには、とっととパーティから出ていってほしいの!!」


 グレッドの後ろから顔を出して、そう反論してくる。


「まあまあ、感情的になると見落としがちになってしまうことって色々あるじゃないですか。一旦、落ち着いて話しましょうよ」


「黙れ!お前のことが気持ち悪いって言ってるだろ!!そんなこと言って、お前こそ、ほんとは「追放されるんじゃないか」って足ブルブル震えてるんじゃねえのかよ」


「でも、それを言っちゃうとやっぱり俺は正直者ってことになりますよ。嘘つき、というのは嘘ってことですか?」


「は?お前が昔ついた皆に隠し事してたんだから、お前は十分嘘つきだろ?」


 俺は「こりゃ、話にならん」というジェスチャーをしてから「リーダー」とハンスのことを呼ぶ。


「リーダーとアシュリーちゃんって、実は夜中にコソコソとしてますよね?」


 するとハンスはすぐに「そんなことはしていない」と否定してきた。


「してないし。それに、あんたは気持ち悪いけどハンスは別なの」


 アシュリーも加勢してきた。


「まあ、今のは嘘ですからね。とりあえず、結局皆さんは俺を追放したくない、という結論に行き着いたんですかね?」


 俺がそういうと、またもやグレッドが俺の胸ぐらを掴んで「ふざけんじゃねえぞ」と言ってきた。


「いや、別にいいじゃないですか。皆さんは、そうやって一瞬の不快感を避けようとするから、そうなるんですよ。追放なんて短絡的な考え方にね。もっと、よくよく考えてください。まず、大事なことを言いましょうか」


 そして、俺はすっと短く息を吸って「リーダーは、これが皆のためになると思って、俺を追放しようとしているんですか?」とリーダーに尋ねる。


 ハンスは「そうだ」と頷いた。


「では、そこには私情はまったく挟まれていない、と」


 今度は、頷かずに無言のまま腕を組んだ。


「私情が挟まる決断って、どうなんですか?皆さんも、嫌われたら終わりってことですよ。いいんですか、こんな簡単に人を追放するようなリーダーで?せめて、「俺はこいつが嫌いだから追放する」って言ってくれた方が良いですよね?」


 すると、ハンスは腕組みをやめて「じゃあ、俺はお前が嫌いだから追放する」と言い直してきた。


「あ、ほらこれ。嘘つきじゃん!!さっきまで、ずっと嘘ついてたんですよ。そしたら、俺と罪が同じですよ。追放というのが罰なのだとしたら、同じですよ。嘘ついてたんですよ」


 アシュリーは「別に、さっきから言ってたじゃん!私たちは、あんたと一緒に冒険したくないから、ずっとそう言ってるの」とグレッドの体に隠れるのをやめてまっすぐと俺に言い放った。


「じゃあやっぱり、嫌いってだけで俺を追い出すのはおかしいと思うんですよ。別に、金なら返しますし、アシュリーちゃんの着替えを覗くのもやめますよ」


「リーダー、もう行きましょうよ」


「・・・そうだな。すまんが、お前は追放だ。これは、俺の判断だから、恨むなら俺を恨んでくれ」


 そういって、三人はくるりと踵を返した。

 もちろん、俺はそんな三人について行った。

 そして、後ろから「いや、それでほんとに後悔しなですか?」と三人に詰め寄る。


「だって、森の中に一人置いてかれて生きて帰るなんて、至難の技ですよ。それで俺が死んでも、皆さんは後悔しないって言い切れますか?言い切れないなら、やめたほうがいいですよ。皆さんは、俺の好きなところとかないんですか?」


 三人は俺のことなんか無視して、てくてくと歩き続けている。


 俺はスピードを上げて

 

「後悔の恐ろしさを皆さん、なんにもわかってないですよね。自分の好き嫌いくらい我慢して行けばいいじゃないですか。その、後悔っていうのは、もっとわかりやすく教えてあげますよ。

 

 もし、皆さんが冒険の中でピンチに陥ったとして、その時に「俺のことを、あのとき追放していなかったら助かったかもしれない」と思うことがある可能性を、考えないんですか?別に、俺だって皆さんのピンチだからって逃げたりしないですよ。俺、正直者ですもん。

 

 皆さんみたいに、自分に嘘ついたことないので。正直ですから、ピンチのときに体張るくらいしますよ。ね?そのときに俺のことを思い出して「あいつがいれば」なんて思いたくないでしょ?だって、死ぬ前に嫌いな人のことを思い出さなきゃいけないんですよ。それって、良いことですか?死ぬにしても、もっと良い死に方があるんじゃないですか?


 そりゃ、俺がいることで皆さんの精神的負担はどんどん増えると思いますけど、でも、それって精神的な負担ってだけで、ピンチのときにはそんなもの関係ないですよ。俺がいたほうが単純に生存率が上がるし、後悔しない確率が上がるってことですよ。


 どうせ、冒険なんて一生やるものじゃないし、皆さんが自分の人生を不幸なまま終わらせてもいいっていうなら、俺は快く追放されますけど、皆さんが「そんな人生は嫌だ」っていうなら、俺は残りますよ」


 と歩きながら言う。


 俺は息する間もなく、言葉を浴びせ続ける。

 すると、三人が走り出した。

 もちろん、俺はスウウッと息を吸ってから彼らの横に並んで


「もっと自分に正直になってくださいよ。その、一時のために自分の人生を棒に振ってもいいんですか?後悔するのは、皆さんの方ですからね。


 だって、人生ですよ。今、皆さんは俺に人生を握られているんですよ。そんな人生でいいんですか?俺なんかに人生握られてるんですよ。それって、良いことなんですかね?別に、冒険がうまくいったとしても、老後にふと俺のことを思い出したら、苦しむんじゃないですか?じゃあ、一つ提案ですけど、ここは追放するんじゃなくて俺に恩を売るのはどうですか?


 そりゃ、皆さんは「人間は変わらない」っていうのを信じてますから、それくらいで俺のことが好きになったりはしないと思いますよ。でも、今のこの状況を利用して「追放するはずだったんだけど、それはやっぱり可愛そうだからやめてあげる」っていう方向に舵を切れば、俺に恩を売ることに成功しますよ。


 そうすれば、俺が何か皆さんの気に障るようなことをしても、「お前、追放するぞ」って脅せば解決ですよ。そうすれば、皆さんの罪悪感もだいぶ軽減、それに、俺の行動もだいぶ監視できるじゃないですか」


 三人は、こちらには耳を傾けるつもりはまったくないみたいだ。


「まあ、いいですよ。そうやって自分に嘘をつき続ける皆さんと、自分に正直で居続けた俺とで、どっちが幸せな人生を送るかって、火を見るよりも明らかですもんね。皆さんは、後悔という名の莫大な負債を抱えて一生生きていけばいいんですよ。どうせ、皆さんは冒険の途中で人を追放するような人間ですよ。ね?その汚名も残るんですよ。


 近所のおばさんとかに「お隣の〇〇さんって、冒険の途中で仲間を追放したんですって、」「え、怖い!!私も追放されちゃう!!」って噂話にされればいいじゃないですか。俺は、これから生きようが死のうがなんにも関係ないですからね」


 すると、ハンスが立ち止まる。他の二人もハンスが止まったのを見て、立ち止まった。


「・・・俺、こいつを街まで届けてくるから、二人はここらへんで待っててくれないか?すぐ戻るから」


 くそ、こいつ!!


「リーダー、・・・いいんですか?」


 ハンスは「うん」と言ってゆっくりと頷いた。


「おい、行くぞ」


 俺は放心状態でその場面を見ていたのだが、ハンスが俺の手を引っ張っていくので、俺はそのままハンスに引かれていった。

 先程まで走ってきた道を折り返す。


「・・・・・・・グスッ、」


「・・・え?どうしたんだよ?」


「・・・後悔しますよ、リーダー」


 ハンスはまじまじと俺の顔を見てくる。


「・・・お前こそ、正直になったらどうなんだよ?」


 ・・・・・。

 リーダー!!


「・・・俺、そんなに嫌われてたんですか?」


「そりゃ、そうだよ」


「・・・・別に、嫌われてても一緒にいちゃだめなんですか?」


「まあ、皆が納得しないからね」


 俺は流れる涙と鼻水をそのままにリーダーに質問を重ねた。


「・・・しかたなくないですか?その、いいじゃないですか。俺だって、自分がどんな人間かわかってるんですよ」


 リーダーはまっすぐ前を向きながら「・・・まあ、二人の気持ちは残念ながら変わることはないからな」と言った。


「もっと、早く正直になってればよかったんだよ」


 そこから、リーダーはずっと俺の愚痴を聞きながら一番近い街までついてきてくれた。

 まだ全然泣き止んでいなかったけど、そんな俺にリーダーは笑いながら「まあ、冒険が終わったら顔くらいだしてやるよ」と言った。

 

 俺は彼に大きく手を振った。

 彼も手を振り返してくれた。そして、くるりと踵を返して森の中に戻っていった。


 俺は涙と鼻水を腕で拭う。

 そして、それを適当な木の幹になすりつける。

 正直になろう。

 俺は、リーダーのあとを追って森に入った。


 


読んでくださり、ありがとうございます。

ぜひ、他の作品も見てほしいです


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。