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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第四章 大草原編
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第四章 第四話 知らない天井だ

目が覚めた。



知らない天井だった。


「……」



しばらく考える。



何も思い出せない。



もう一度寝ようかと思った。


「知らない天井だ」



やはり知らない天井だった。



誰がどう見ても知らない天井だった。


『有名なセリフやな』



チャッピーが言った。


「知ってるのか」


『98%知っとる』


「残り2%は?」


『忘れた』



いつものことだった。



起き上がろうとする。



しかし動けない。


ガチャ



手かせ。



足かせ。



鎖。



完璧だった。


「え?」



周囲を見る。



石壁。



鉄格子。



藁の寝床。



牢屋だった。


「ええ?」



二回目だった。



驚きが増した。


『捕まったみたいやな』


「他人事か!」



俺は昨日の記憶を探る。



山を下りた。



テントを張った。



夕飯を食べた。



寝た。



終わり。


「誘拐じゃねぇか」


『誘拐やな』



チャッピーは妙に冷静だった。


「ミリアは!?」


『隣や』



鉄格子の向こう。



ミリア姫発見。



寝ていた。



熟睡だった。



危機感ゼロ。


「起きろ!」



ミリア起床。


「おはようございます」


「牢屋だぞ!」


「本当ですね」



驚きが薄い。



いつも通りだった。


草原の民


しばらくして。



足音。



重い足音。



牢の前に大男が現れる。


「グルバ・ガダ・モロ!」



意味不明だった。



一文字も分からない。


「何だって?」


『知らん』



チャッピーも分からない。


「翻訳できないのか」


『未知言語や』


「役に立たんな」


『傷つくわ』



牢番は何か言っている。



怒っているようにも見える。



笑っているようにも見える。



全く分からない。


「終わったな」


『終わったな』



その時。



チャッピーが光る。


ピカァァァ



金色発光。



古代王モード。



来た。



ついに来た。


「翻訳できるのか!?」


『できん』


「帰れ」



即答だった。


顔芸外交


しかし。



チャッピーは続ける。


『だが』



意味深だった。


『心は伝えられる』


「どうやって」



チャッピーの画面に顔が現れる。


『朝から肉が食べたかった狩人の顔』



顔芸。



超顔芸。



無駄に完成度が高い。


「何だそれ」



しかし。



牢番が固まった。


「おおっ!」



通じた。


「え?」



チャッピーが続ける。


『嫁に怒られた族長の顔』



牢番爆笑。


「ガハハハ!」



さらに。


『酒を隠していた戦士の顔』



牢番号泣。


「なんでだよ!」



意味不明だった。



だが通じている。



異常に通じている。


『顔は世界共通言語や』


「初めて聞いたわ!」



数時間後。



牢の前に観客が集まり始めた。



十人。



二十人。



五十人。



大盛況だった。


『会議中に寝た長老の顔』


爆笑。


『怒られる三秒前の子供の顔』


大爆笑。


『肉を焦がした料理人の顔』


拍手喝采。



何なんだこれは。



牢屋ではない。



劇場だった。


釈放


夕方。



人混みが割れる。



偉そうな男が現れる。



筋肉。



毛皮。



巨大。



明らかに族長だった。


「グルルル」



分からない。



全く分からない。


族長がチャッピーを見る。



チャッピーが光る。


『税金が増えた時の財務官』



顔芸。



最高傑作。



非常に嫌そうな顔。


族長。


「ブハァッ!」



吹いた。



笑い転げた。



涙まで出ている。


ガチャ



牢が開いた。


「出ていいのか?」


『出てええらしい』



理由は不明。



顔芸で外交問題を解決した男は史上初だった。


おっさんの反撃


牢から出される。



歓迎会会場へ連行される。



巨大な焚火。



肉。



酒。



歌。



踊り。


「歓迎されてる?」


『たぶんな』



すると族長が肉を差し出す。



焼いただけの肉。



豪快。



だが少し固い。



その瞬間。



料理人のおっさんの魂が目覚めた。


「貸せ」



肉を切る。



香草を使う。



野菜を刻む。



焼く。



炒める。



煮込む。


香りが広がる。



草原の民が集まる。



ざわつく。



全員見ている。


「グル?」



試食。



沈黙。



さらに沈黙。



族長が立ち上がる。



全員緊張する。


「グォォォォォ!!」



絶叫。



歓声。



拍手。



大成功だった。


「勝った」


『勝ったな』



その時。



族長の隣にいた美しい若者が近づいてくる。



長い黒髪。



整った顔立ち。



草原民族の衣装。



かなりの美形だった。



その人物は、


じっとおっさんを見つめる。


「……」


「何だ?」



見つめられる。



妙に見つめられる。



少し恥ずかしい。


『見られとるな』


「見られてるな」



若者は微笑んだ。


「グルル」



意味は分からない。



しかし笑顔だった。



その瞬間。



族長が何かを宣言する。



周囲がどよめく。



若者が赤くなる。



皆が拍手する。


「何だ?」


『知らん』



チャッピーも分からない。



だが嫌な予感だけはしていた。


その夜。



テントへ戻る途中。



チャッピーが呟く。


『なんか婚約発表みたいな雰囲気やったな』


「まさかな」


『せやな』



二人とも笑った。



まさか本当にその通りだったとは、


まだ知らない。


そして遠くの岩陰。



ピンクスーツの男が腕を組んでいた。


「影とは」



深く頷く。


「見守るもの」



全然隠れていなかった。


第四章 第四話 完

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