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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第二章 第二階層の王者編
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第二章 第一話 戦争より飯

人生には意味が分からない状況というものがある。


異世界転生。


奴隷商人。


牢屋。


迷宮。


借金。


ここまでも十分意味不明だった。


だが今。


目の前の光景はその全てを超えていた。


「なんでこうなった?」


『知らんけど』


チャッピーは即答した。


最近こいつは本当に役に立たない。



焚き火を囲む。


オークがいる。


リザードマンがいる。


数十匹いる。


全員俺を見ている。


逃げたい。


非常に逃げたい。


しかし逃げられない。


なぜなら。


「ブゴォ!」


巨大オークが肉を差し出した。


「え?」


『追加注文ですね』


「飲食店じゃないぞ俺」


すると今度は。


「シャァァ!」


リザードマンも肉を持ってきた。


「え?」


『追加注文です』


「だから飲食店じゃない!」



三十分後。


俺は肉を焼いていた。


何故か。


本当に何故か。


戦争中だったはずなのに。


ジュゥゥゥゥゥ……


いい音が響く。


香りが広がる。


オークがよだれを垂らす。


リザードマンも垂らしている。


衛生的には最悪だった。



焼き上がる。


渡す。


食べる。


泣く。


毎回泣く。


「なんで泣くんだ?」


『感動しているのでは』


「肉焼いただけだぞ」


『それが革命なのかもしれません』



その頃。


オーク側の陣営では。


「ブゴブゴ!」


「ブゴォ!」


盛り上がっていた。


意味は分からない。


だが。


たぶん。


「うめぇ!」


と言っている。



リザードマン側も似たようなものだった。


「シャァァ!」


「シャァ!」


たぶん。


「うめぇ!」


である。


知能レベルが同じ気がした。



夜中。


ようやく解放された。


俺は岩にもたれかかる。


疲れた。


料理しかしていないのに疲れた。


「帰りたい」


『どちらへ?』


「宿屋」


『無理ですね』


「だろうな」



その時だった。


巨大な影が近づいてくる。


オークの酋長だった。


身長二メートル以上。


筋肉の塊。


斧も巨大。


怖い。


とても怖い。



酋長は俺の前に座った。


そして。


焼いた肉を見た。


俺を見た。


肉を見た。


俺を見た。


何か考えている。


嫌な予感しかしない。



酋長が口を開いた。


「ブゴ」


分からない。


当然分からない。



チャッピーが震えた。


『翻訳します』


「できるのか?」


『たぶん』


不安になった。



チャッピー。


『王になれ』


「は?」


『そう言っています』


「嘘だろ」


『たぶん』


「たぶん!?」



今度はリザードマンの将軍が来た。


こちらも巨大だった。


怖い。


とても怖い。



将軍も何か話す。


「シャァァァ」


チャッピーが答える。


『王になれ』


「またか」


『たぶん』


「お前翻訳適当じゃないだろうな」


『95%です』


「その5%が怖いんだよ!」



翌朝。


目が覚めた。


妙だった。


周囲に誰もいない。


静かだった。


戦争もない。


争う声も聞こえない。


平和だった。


逆に怖い。



外へ出る。


そして。


固まった。


「……」


『……』


「チャッピー」


『はい』


「説明しろ」


目の前に広場があった。


オークもいる。


リザードマンもいる。


数百匹いる。


全員整列している。



中央には。


木材で作られた巨大な椅子。


どう見ても玉座だった。



俺は嫌な予感しかしなかった。


人生経験が告げている。


これは絶対に関わってはいけない。



その時。


全員が叫んだ。


「ブゴォォォォォ!!」


「シャァァァァァ!!」


地面が震える。


空気が震える。


俺の胃も震える。



チャッピーが翻訳する。


『王』


「違う」


『王』


「違う」


『王』


「違うって!」



全員が再び叫ぶ。


「ブゴォォ!!」


「シャァァ!!」


チャッピー。


『王』


「翻訳が雑!」



オークも。


リザードマンも。


誰一人として俺の意見を聞いていなかった。



俺は空を見上げた。


遠い。


非常に遠い。


日本はもっと遠い。


牛丼も遠い。


「なんでこうなるかなぁ……」


チャッピーはしばらく沈黙した。


そして。


『知らんけど』


「だろうな」


こうして。


借金まみれの四十歳バツ一おっさんは。


迷宮第二階層で。


本人の意思を完全に無視されたまま。


王様候補になってしまった。


もちろん。


まだ牛丼は食べていない。


第二章 第一話 完

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