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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

夕焼けは、君の色

作者: Uki
掲載日:2026/02/23

 僕は、君の背中を見ている時間がいちばん好きだ。


 ——なんて、絶対に言えないけれど。


 放課後の教室は、いつも少しだけ広く感じる。

 窓から差し込む夕陽が、君の黒髪を赤く染めている。


「まだ帰らないの?」


 そう聞く君の声は、何でもない顔をしているのに、やけに優しい。


「うん。……もうちょっとだけ」


 本当は、君と同じ時間に帰りたいだけだ。


 君は、バスケ部のエースで、クラスの中心にいる人。

 僕は、図書委員で、目立たない側の人間。


 なのに、どうしてだろう。


 体育館で君が笑った日から、僕の世界は少しだけ傾いてしまった。


 君が汗を拭いながら、無邪気に仲間と笑っていたあの日。

 その横顔を見た瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなった。


 ああ、これって。


 認めたくなかったのに。


 僕はきっと、君が好きなんだ。


「お前、最近ぼーっとしてるよな」


 机越しに、君が顔を覗き込む。


 近い。


 息が触れそうな距離に、心臓がうるさく鳴る。


「そ、そんなことないよ」


 視線を逸らすと、君は少しだけ困ったように笑った。


「なんかあったら言えよ?」


 ——言えるわけない。


 “君が好き”だなんて。


 放課後の廊下を並んで歩く。

 影が、長く伸びる。


 ほんの少し、肩が触れた。


 それだけで、世界が止まったみたいだった。


 君は気づいていない。

 気づかなくていい。


 だって君には、好きな人がいる。


 この前、部活の後に嬉しそうに話していた。

 隣のクラスの女子のこと。


 そのときの君の顔は、僕が知らないくらい、まっすぐで。


 ……ああ、やっぱり敵わない。


「どうした?」


 立ち止まった僕に、君が振り返る。


 夕焼けを背にした君は、少しだけ遠い。


「なんでもないよ」


 笑うのは、得意だ。


 好きだよ。


 言わないけど。


 言えないけど。


 君の隣にいられる時間が、なくなるのが怖いから。


 バス停に着く。


「また明日な」


 いつも通りの言葉。


「うん、また明日」


 たぶん、明日も好きでいる。


 この気持ちは、どこにも行かないまま、僕の中で静かに色づいていく。


 夕焼けは、今日も君の色をしている。


 そして僕は、その色に触れられないまま。

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