8.異世界
ミロと別れてから一週間がたった。
毎日、公園を通りがかっては、異世界のゲート辺りを覗きこんでいる。ふらっとミロが現れるのではないかと期待しているけれど、彼は一向に現れない。
ミロ、どうしているんだろう。元気なのだろうか。ケガなどしていないだろうか。連絡方法も分からず、やきもきしているだけの日々が続いている。
ミロに貰ったメダルの様な宝石を見るたび、涙がこぼれそうになる。
今日も学校帰り、友人達と寄り道もせずに公園に来た。いつものようにベンチに座り、ミロが消えていった木の辺りを眺めていた。すると、きらりと光る点のような物が目に留まった。
「何だろう?」
近づいて覗き込んでみた。
すると渦巻いた光が大きくなり、体が自然と引き込まれていった。急な出来事で声も出なかった。またたく間に吸い込まれていくような感覚で、どうする事もできない。
「もしかしたら異世界に行けるの? その前に死んでしまったらどうしよう」
何が何だかわからないまま数秒が過ぎ、急に背中を押された感じになり、ドサっという音とともに転げ落ちた。
「痛い……」
少し手足を打ち付けたようだ。
「ここは?」
暗闇で何も見えない。手で地面を触ってみると、草むらのような気がする。
「あっ!」
遠くに、いくつもの小さな丸い光があるのが見えた。緑や金やブルーなど。何だろう。蛍なのかな。それともイルミネーションかな。
あれこれ考えていると、どんどんこちらに近づいてきた。月明りで微かに見えてきたのは、小さな動物だった。
「あれは、猫だ」
10匹ほどの猫が近づいてくる。数匹いると、恐怖で固まっていた。
「この黒髪は、敵国の者だな。捕らえろ」
「いや、ちょっと待て。これはミカリス様の物では?」
胸に付けていたメダルに猫が反応した。そう、これはミロに貰った物。この猫達は、ミロの仲間なんだと少しほっとした。
いつの間にか、猫達に囲まれ睨まれている。怖さはあるけれど、何だか可愛い。毛が長かったり、短かったり。共通点といえば、色が薄いグレーで銀色っぽいことだろうか。
猫に囲まれ威圧感はあるが、ミロに会えるかもしれないと思うと、緊張が解けた。
「ついてこい」
リーダー格っぽい猫に命令された。
「はい」
素直に返事した。
「あの、すいません。暗くてよく見えないのですが……」
そう言うと、リーダー格の猫が鋭い眼で私を睨んだ後、人間に姿になった。
突然、私は抱きかかえられた。お姫様抱っこをされている。
このまま、どうなるのか少し不安になった。けれど、抱きかかえてくれて優しいなと思った。そして、とても暖かい。
私はリュックを持っていたことを思い出した。
「私のカバン、知りませんか?」
「これか?」
一匹の猫が背中に背負っている。
「それです。ありがとうございます」
リュックを背負った姿が可愛いすぎて、笑みを浮かべてしまった。私が笑顔なので、抱きかかえている男性が不審そうな顔をしている。この人、よく見るとキリッとした顔立ちでカッコイイ。ミロは中世的な美少年だが、この人は男らしい感じだ。私は急に恥ずかしくなり、全身が熱いと感じていた。




