6.囚われた少女
長い銀髪の麗しい少女が目を覚ました。
「ここは?」
小さな窓から暖かい日差しが入り、心地よいベッドから体を起こした。
「目を覚ましたかい? リリシア」
煌めく黒髪で、茶色がかった切れ長の瞳を持つ青年が声をかけた。
「あなたは誰なの?」
「僕はルトネルド王国の第一王子、ニキア・フェルマレス」
少女は驚き、緑の綺麗な瞳から今にも涙がこぼれ落ちそうである。
「怖がらせてしまってゴメン。ずっと探していたんだ。君に会いたくて」
とニキアは言う。
「え? 私、あなたを知らない」
「僕だよ。青い花が咲く丘で、可愛い小鳥ちゃんと言ってくれたよね。一緒に遊んだよね」
ニキアは懸命に訴えた。
「ああ、あの時の。急に来なくなったから心配していたのよ」
◇
今から8年前、ニキアが11歳。
隣国が気になり、怖いもの見たさで鳥の姿になって訪れたのだ。ニキアの国は鳥の姿に変身できる鳥化人だ。
鳥と言っても、日本ではカラスに似た風貌である。けれど、この異世界では黒い羽が光り輝き、クチバシは黄金色で堂々とした佇まいである。
ニキアがブルギスト王国にこっそり訪れ、可愛らしい声で鼻歌を歌う少女を見かけた。
『なんて綺麗な女の子なんだ』
ニキアはすぐに心を奪われた。一目惚れだった。
「まぁ、可愛らしい小鳥ちゃん。黒い羽がとても綺麗ね」
リリシアが鳥化したニキアに声をかけた。
それから、毎日のように会っていた。言葉を交わす事はないけれど、ほんのひと時を一緒に楽しく過ごした。
ニキアは、リリシアの歌が好きだった。
第一王子として厳しく育てられ、優しい言葉をかけてくれる人は誰もいなかった。初めて人から温かく接してもらえた。
「羽が綺麗ね」
「飛ぶ姿がカッコイイ」
「目が輝いて宝石のよう」
「鳴き声が美しいわ」
リリシアの言葉は、とても優しかった。
誰かに認められるのは、こんなにも幸せな気持ちになると初めて知った。ニキアが生きる喜びを知ったのは、リリシアのお陰だと言ってもいい。
ニキアとリリシアの穏やかなひと時は、長くは続かなかった。
リリシアが黒い鳥と一緒にいるところを世話係に見られ、追い払われてしまった。
ニキアもまた、隣国へ行った事が国王に発覚してしまった。厳しく叱られ、しばらく監禁されてしまったのだ。
◇
「リリシア。君のチカラのせいで、わが国に狙われているのは知っているよね? 僕は君を守りたいんだ」
「ニキア様。なぜ?」
「僕はずっと君のことを想っていた。結婚してほしい」
「えっと……急に言われても。ちょっと無理かも……」
リリシアは、突然の告白に驚いたし、この王子はどういうつもりなのか心配になった。見た目はすごく気品があるのに、軽はずみすぎるし不安しか感じない。
あまりのショックなのか、ニキアが呆然としている。
「ニキア様。あの小鳥ちゃんに会えなくなった時はとても寂しかったわ。
でも、結婚とかは……。あなたのことを、よく知らないし」
「では、これから僕をもっと知ってほしい。君を誰より大事に思っている」
ニキアが真剣な眼差しで見つめてくる。
嘘ではないのだろうが、やはり戸惑ってしまうし信用できない。それにしても、ニキア様は美しい瞳をしているなとリリシアは思った。




