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3.妹の行き先

 木造の門が少しあいていたので、こっそりと覗いてみた。

 綺麗に手入れされた庭で、年配の女性が庭の花に水を撒いていた。


「すいません。山代さんから聞いて来ました。以前住んでいた斉藤さんが、何処へ引っ越したのか知りませんか?」


 「あら」 

 その女性は驚いたが、初対面にも関わらず、にこやかな表情で自宅に通してくれた。


 応接間だろうか。広めの和室に絨毯を敷き、上等そうなソファがある部屋に通してくれた。

 

 緊張気味で固くなった私に、

「よく来てくれたわね。どうぞ」

 と、優しく話しかけ、温かいお茶を出してくれた。いい香りで、とても美味しいお茶だった。

 

「斉藤さんよね。リリちゃんという猫を飼っていたわね」

リリちゃん……ミロの妹なのだろうか。可愛らしい名前だ。


「あの、どんな猫ちゃんですか?」

 引っ越し先を聞かないといけないのに、つい気になり尋ねてしまった。


「お嬢さんの猫ちゃんと同じ色合いで、毛足の長い、可愛い猫ちゃんよ」

 グレーで長い毛のモフモフ。可愛いに決まってる。


「孫がリリちゃんとよく遊んでいてね。引っ越す時は、とても悲しんでいたの」

「そうなんですね。引っ越し先は、知っていますか?」

「ちょっと待ってね」

 そう言うと、女性は部屋の外に出ていった。


 すぐに戻ってきて、手にポストカードを持っていた。お寺か何かの写真が印刷された、絵ハガキだった。


「これね。先月、斉藤さんが引っ越し先から送ってきてくれたのよ」

 

 私は、ハガキを手渡され戸惑っていた。すると、斉藤さんからシルバーの猫を連れた人が尋ねてきたら、新しい住まいを知らせてほしいと頼まれていたと教えてくれた。


 加賀屋さんにお礼を言い、早々に家を出た。とても素敵な人だった。リリちゃんに会えたら、改めてお礼を言いに行こうと思った。


 斉藤さんの新しい住所は奈良県だった。現在の時刻は、午前10時半。奈良は小学生の遠足以来だ。ここからだと、電車で一時間半くらいで行けるはずである。


「今から奈良に行こうよ」

「そうだな」

 ミロのグリーンがかった瞳が、キラキラと輝いている。とても綺麗だった。

 ミロと目が合った時、胸がドキッとした。真っ赤になった自分が恥ずかしくなり、思わず目をそらしてしまった。

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