12.私の中の能力
一人の少女が黒い鳥を抱いて泣いている。その鳥は傷を負いぐったりとしている。
私は、その鳥の美しさに見とれてしまった。カラスに似ているけれど、少し違う。
「リリシア、その鳥は?」
「お兄様。この方はルトネルド王国の第一王子、ニキア様です。私を庇って怪我をされて……」
「リリシア……あの能力が出てしまったんだね」
ミロがリリシアに近づき肩を抱いた。
「ミロ、どういう事なの?」
「リリシアは、人間に戻れなくさせてしまう能力を持っているんだ」
ミロの説明によると、人間に戻れなくなってしまってからは、じきに記憶まで失い完全に動物になってしまうそうだ。
私は、傷ついた鳥の姿の王子に近づいた。
「痛いでしょ。可哀そうに。傷の手当てをしてあげないと」
私は、右手を鳥にそっと置いた。
一瞬、指先から黄色い光が出ているように見え、手の平が熱くなるのを感じた。
すると、傷つきぐったりとしている鳥が少し宙に浮き、みるみるうちに人間の姿になった。
「ニキア様!」
リリシアが泣きながらニキアにしがみついた。
「リリシア、泣かないで。僕は平気だよ」
ミロやレイク、そして他のみんなも驚きのあまり言葉が出ない様子だ。
「モモ、君は一体何をしたんだ?」
ミロが私の肩を抱きながら聞いてきた。
「私、何をしたの……ただ助けたいと思っただけなのに」
「本当にスゴイよ。君には何度も助けられている」
私は意味が分からず、ただただ呆然としていた。ミロにしっかりと抱きしめられているというのに。
「あの、お取込み中すいませんが、どういう事なのでしょうか?」
レイクが尋ねてきた。
私とミロは、我に返りさっと離れた。
「モモは、どうして治癒魔法を使えるのだろうか? 何か理由があると思うのだが」
ミロが顎に手を当て考えている。
私はニキアをじっと見た。彼は多少の傷はあるようだけれど、人間の姿をしている。
「あなたは伝説の聖女様ですよね。本当に感謝しかありません」
ニキアが頭を深く下げ、お礼を言っている。
「本当に、本当にありがとうございます。聖女様」
リリシアも涙を流しながら、私の手を取っている。
「聖女って……私は普通の高校生だから」
私が戸惑っていると、リリシアとニキアは寄り添い、恥ずかしそうにお互いをちらちらと見ている。
「どういう事?」
ミロが、寄り添う二人を睨んでいる。
「お兄さん。僕はリリシアさんと結婚したいと思っています」
「はぁ? お兄さん?」
ミロが見た事ないような、怒った顔をしている
「ニキア様、やめてください」
赤い顔のリリシアが、ニキアの腕を引っ張った。
「お兄様。結婚とかは、私にはまだ分かりません。けれど、ニキア様は私を守ってくれました。大切な人です」
真剣な顔で、リリシアはミロを見ている。
「リリシア」
無邪気に笑うニキアが、リリシアを抱きしめた。
「妹を守ってくれた事は感謝する。しかし、妹を連れ去った事といい、この件はゆっくりと話を聞こう」
無表情すぎて恐ろしいミロ。かなり怒っているよね。
リリシアとニキアは立場は抜きにして、とてもお似合いだと思う。銀髪の美少女と、黒髪のイケメン王子。ビジュアルが尊すぎる。
この二人のカップルは、私の推しになりそうです。ゴメンね、ミロ。




