10.王子と少女
ニキアは今、最高に幸せな毎日である。愛するリリシアがずっと側にいる。
リリシアも初めのうちは囚われの身で戸惑っていたが、ニキアが自分を大切に思ってくれている事を感じ、嫌な気分ではなかった。むしろ、居心地が良くニキアとの何気ない会話を楽しく思っている。
「おはよう、リリシア。今日もすごく可愛い」
「ニキア様。そういうのは、もういいです」
リリシアは、くすくす笑っている。
「ニキア様、朝食にしましょうよ」
今日は天気が良いので、外に出て食べる事にした。二人は家の外にある木造の長椅子に並んで座っている。
リリシアが作った野菜スープは絶品である。ニキアはスープを飲み、パンを食べ喜びをかみしめている。
ニキアの城の料理の方が豪華だが、彼女の作ってくれた物は人生で一番美味しいと感じている。
「君は料理の天才だよ。こんな美味しいスープ初めてだよ」
ニキアは嬉しさのあまり涙目だ。
「ニキア様は大袈裟です。お城ではもっと美味しい物を食べていたはずよ」
リリシアは、ぷんと口を尖らせている。
あぁ、なんて可愛いんだ。リリシア。ニキアは胸の高鳴りを抑えるのに必死である。それに結婚相手は彼女以外には考えられない。
あまりじっと見続けると、リリシアが恥ずかしがるのでチラチラ横目で見ている。
最近、リリシアは僕が見つめると頬を赤らめる時がある。もしかして、彼女も僕の事を意識してくれているのだろうか。いやいや、それはないか。どうなのだろうか。ニキアは自問自答を繰り返している。
「ねぇ、ニキア様。あなたは第一王子でしょ。いなくなって心配されているはずよ。
それに、ここも見つからないかしら?」
「僕がいなくなったったところで、誰も気にとめないさ。第四王子までいるしね」
ニキアは少し寂しげな表情で話した。
「ここは僕が結界をはっているし、当分は大丈夫だよ。それに君の事は全力で守るから」
ニキアは、リリシアの手を強く握った。
「ニキア様。ありがとうございます……あの、ちょっと近いです」
「あ、ごめん」
ニキアは手を放し、赤面しながら下を向いた。
リリシアはニキアに近づかれたり手を握ったりされると、ぼーっとしてしまいドキドキする。このまま一緒にいていいのだろうかと思い悩んでいた。
お互い黙ったままボンヤリと前の景色を見ていると、急に弓矢が飛んできた。
「危ない!!」
ニキアがリリシアをかばい左腕に矢が刺さった。
「きゃー、ニキア様……」
リリシアは驚きのあまり体が動かない。
ニキアはすぐに矢を抜き、弓を打ってきた男に飛び掛かり一発で打ちのめした。
「リリシア、大丈夫かい?」
「ニキア様こそ、腕から血が……」
「君が無事で良かった。これくらい、かすり傷だよ」
その時、倒れていたはずの男が立ち上がり短剣を持ってリリシアとニキアに向かってきた。
「やめてーーー!」
リリシアは叫び、それと同時に辺り一帯に青い光が放たれた。
ニキアと男が黒いカラスの姿になり倒れこんでいる。
「ニキア様、ニキア様」
カラスの姿のニキアに覆いかぶさり、泣き叫ぶことしかできないリリシアだった。




