第一章『開廷と、開き直り』
王子が死んだ。
よりにもよって、このわたくしの手によって。
動機は……そうですわね、ほんの些細なことでしたの。
「今夜の肉料理、少し焼きすぎている」と言われたことがきっかけで、思わずフォークを――その――ズブリと。
我ながら見事な突きっぷりでしたわ。なにしろ、王子殿下の心臓を一突きで沈黙させたのですもの。
誰よりも早く死因を見抜いたのは、刺した本人というこの皮肉。
「クラリス・エヴァンス公爵令嬢、王子殺害の現行犯として逮捕する」
「ふむ……どう見てもその通りですわね」
この場にいた誰もがそう思ったでしょう。わたくし自身も、八割方そう思っています。
けれど残りの二割――そのわずかな可能性に、逆転の糸口があるのですわ!
「でもわたくしはここから逆転してみせますわ!」
「……お前が刺したところを全員が見てたんだが?」
「目撃証言など曖昧なもの。わたくしの華麗なる弁論で、事実を真実に変えてご覧にいれます!」
わたくしはクラリス・エヴァンス。
公爵令嬢にして、完全なる犯人。
なのに、無罪を主張してみせますの。
これから始まるのは【犯人による逆転劇】
どこまで行っても犯人が犯人であるこの状況で、法廷は混迷を極めてゆくのでした。