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【書籍化決定】この結婚が終わる時  作者: ねここ
第二章 ロラン・ジュベール

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ライバルの出現

 

 ロランは目を見開き立ち上がった。

 (ジゼルを狙っている……どういう意味だ?)

 ロランの顔色が変わる。立ち上がった衝撃で椅子が倒れ、メイドが、キャー、と悲鳴を上げた。ロランは冷静さを取り戻そうと、コホン、と咳払いをし、メイドが起こしたその椅子に再び座った。

「お祖父様……それはどういう意味でしょうか」

 ロランは平静を装う。だがテーブルの上で握られている両手は強く握られた。まさかシャルロット以外にジゼルを狙う人物が、それも敵国の王だという事実がロランの動揺を大きくした。そして、『狙う』という言葉の意味。命を狙うのか、それとも……。


「ロラン、その意味はな、ジゼルはこの世界で唯一ドラゴン王の主人となる人間。その影響力は計り知れない。マチアスは知っての通り野心溢れる王だ。そんな男がジゼルを我が物にしたいと思うことは不思議ではない」

 ベルトランはそう言ってロランを見た。ロランの思考は停止している。想像もしていなかった展開に奈落の底に突き落とされたような衝撃を受ける。

 (ジゼルを奪われるかもしれない)

 この事態にロランは動揺した。

 (居ても立っても居られない。今すぐにでも別邸に戻りたい)


 ベルトランはロランの思考を読んだかのように言った。

「ロラン、心配はない。ジゼルは大丈夫だ。ロランがいない間は別邸の近くにモーリスがいる。それに影もおる。何があってもジゼルを危険な目に遭わすことはないし、その身を捕らえられることも無いと断言しよう。ただな、ブルレックの動きは気になっておる。マチアスは狙った獲物を手に入れる力もある。ロラン、注意するんだ。どう出てくるかわからんからな」

 ロランはベルトランの言葉を聞いて心に暗い雨雲が広がった。しかし、いつ降るかわからない豪雨に警戒し続けることは難しい。だからと言って気を緩めたら激しい雨に流される。

 (シャルロットに加えマチアスまでも)

 ロランはこの現状に奥歯を噛んだ。シャルロットをお茶会に出席させ、その間シャルロットの自室に潜入する。そのための下準備をするためにここに来た。それを後回しにすることができない中ジゼルが狙われていると知りロランは手も足も出ない状況になった。けれど幸いなことに、とりあえず今、ジゼルの安全は守られている。ベルトランの部下モーリスは強い。大魔法使いのロランでさえその能力は計り知れないと思わせる不思議な人物でありベルトランに絶対的服従している信頼できる人間だ。

 (ありがたい)

 ロランは心の中で礼を言った。

 だが、マチアス。ロランからジゼルを奪おうとしている男の出現にロランは首を絞められたように息が詰まった。

 (ジゼルを奪う……)

 想像するだけで心拍数が上がる。マチアスは五ヶ月すぎる前にジゼルを手に入れようと動くのか、それともその後に動くのか。それともすでに動いているのか。

 強烈な不安がロランを襲う。

 (ジゼルを奪われたくない!)

 ロランは瞳を閉じ冷静さを取り戻すようゆっくりと深呼吸した。ロランが今何を感じているのか探るようなベルトランの視線に気が付きロランは我に返った。

 (今、この気持ちを悟られてはダメだ)

 ロランはなんでもないというように微笑みを浮かべ、穏やかな口調を使いベルトランに言った。

「お祖父様、ありがとうございます」

 ベルトランはロランの変化を感じつつも、ロランの考えを理解している訳ではない。ベルトランはその言葉に頷き言った。

「ロラン、お前は一週間ここに滞在すると聞いた。先ほども言った通りジゼルについては心配はない。ワシは出かけるが、ブルレックの動きだけは注視しておくのだ」

 ベルトランはそう言って紅茶を一口含み、そのまま立ち上がり去っていった。


 ロランはベルトランの話があまりに衝撃的だったため、そこから動けないでいた。


 マチアス!ブルレック王国の若き王!


 燃え上がる敵対心、マチアスの存在がロランの心に火をつけた。

 (よりによって私からジゼルを奪おうとするなど)

 身を焦がすほどのドス黒い気持ちが湧き起こる。王座を手に入れるだけで満足すれば良いものをジゼルを我が物にしようと考えるなど!!もちろん選ぶ権利はジゼルにある。だが、ジゼルの気持ちを無視しこの結婚と同じように、ジゼルの意思を尊重せず行動を起こすならばロランは黙っていない。

 (だが、万が一ジゼルがマチアスを選んだら?)

 ロランの心に暗い影がさす。今の状況でジゼルが幸せだと、幸せにしているとは到底いうことが出来ない。ロランは唇を噛んだ。


 他国の晩餐会で一度だけマチアスを見たことがあった。マチアスはブラウンの短い髪にグリーンの瞳、背も高く甘いマスクからは想像もできないほど自信に溢れた強いオーラを放っていた男。


 ロランは髪をかき上げ立ち上がった。

 シャルロットのことで燻っている場合ではない。早く決着をつけジゼルと向き合わなければ。

 ロランはランスロットを呼び、お茶会当日にシャルロットの部屋に忍び込む作戦を立て始めた。



 

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