表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【5/15 書籍、電子書籍発売】この結婚が終わる時  作者: ねここ
第二章 ロラン・ジュベール

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

140/143

揺るぎないロランの意思


 ロランは目の前に立つシャルロットを見てジゼルを守るよう一歩前に出た。

 マリアンヌの姿はない。ランスロットも居ない。


 一体何が起きたのかとパニックになりそうな気持ちを堪え、目の前のシャルロットとの対峙に集中することにした。


 強力な魔法が使えない現実に崩れ落ちそうになる。だが、今、ロランの魔力が下がっている事実をシャルロットは知らない。


 それだけが救いだった。

 

 ロランはシャルロットと向き合う。

 シャルロットもロランを見つめる。


 一切瞬きしない不気味な瞳、喉元に刃を突きつけられたような沈黙がロランを襲う。


 シャルロットはこの場を支配したことを察し、ジゼルを見てわざとらしく泣き出した。


 シャルロットの執着心は正気の沙汰ではない。

 泣き出す姿に込み上げるのは嫌悪感のみ。ジゼルと心が通じ合えた今、シャルロットの行動はロランにとって悍ましい行為にしか思えないのだ。


 だが、ロランは知らない。

 

 シャルロットはジゼルに向け演技をし、ジゼルは嘘の新聞記事を信じたまま今ここにいる。


  

 ジゼルは突然深呼吸をし、ロランに握られている手を引いた。

 ロランは目を見開き、すぐにジゼルの手を掴む。


 その行動に戸惑ったジゼルがロランを見上げる。が、今は説明している時間はない。一刻も早くこの状況から抜け出さなくてはならないのだ。


 ロランは拒絶感を露わにし、シャルロットを睨んだ。

 

 シャルロットは涙を滲ませロラン達を見つめる。お茶会の時に戻ったようなシャルロットの不気味な行動にロランは怒気を孕ませ言った。


「シャルロット、ここは危険だ、広間に戻れ!」


 イラつくロランの言葉を聞きシャルロットの口角が上がる。が、泣き顔は崩していない。


「ロラン! お願い! そばに居て……」


 シャルロットはハンカチで目元を覆う。

 

(……そばに居て?)

 

 その言葉の意味がわからずロランの動きが止まる。

 恋人同士だった頃ならまだしも、今更そんな演技をしても既にロランはジゼルを選んでいる。

 

 何の効力も持たないその言葉にロランは眉を顰めたが、ジゼルは繋いでいる手の力を抜いた。

 ロランはジゼルの指に指を絡ませ再び握りしめ、シャルロットは悲しみを装いながらその様子をじっと見つめる。

  

 ロランはシャルロットを牽制したい。だが、シャルロットの真意がわからない今、過度に刺激することは避けなければならない。


「シャルロット、()をおいていけない」


 シャルロットの不可解な言動にロランはあえて『妻』という言葉を選んだ。

  

「嘘でしょ? ロラン!!」


 シャルロットはロランの言葉に衝撃を受けたようにハンカチを目元に当てる。ざめざめと泣くその異様な光景にロランは息を呑んだ。


(何か、が、おかしい……?)

 

 ロランは改めてシャルロットを見る。オーバーリアクションに見えるシャルロットの態度は、ジゼルだけに向けられていることに気がつく。ジゼルもシャルロットの言葉を聞き顔色を変えた。


 二人だけに共通する何かがあることに気がつく。

 

「シャルロット様、ご、誤解です! 私は今帰る所で、つ、妻ですが私は形の上でそうなった者で、ロラン様はシャルロット様を深く愛しておいでです。……あの記事で仰ったように私の仕返しを恐れ表面上私に優しくして下さっているだけです。ですが私はあと十日後には去りますからもう何もしませんから、あ、あのロラン様、もう大丈夫です。酷いことなどしません。シャルロット様も泣かないで下さいませ!!」


 ジゼルは思い詰めたように一気に話し、その言葉を聞いたロランに戦慄が走った。

 

(シャルロットを愛している? あの記事? ジゼルの仕返し? 一体何を言っているんだ!?)

 

 何一つ身に覚えのないこと、全く知らないことを口にするジゼルに、ずっと感じていたあの違和感が姿を現した。

 

「……この方は何故、ここに?」


 ロランに考える隙を与えないかのように涙ながら話し出すシャルロットに、ロランは益々混乱する。


(……シャルロットの罠……?)

 

 ジゼルが言っていることは全くわからない。

 シャルロットの思惑もわからない。


 だが、今は、考える隙も迷う時間もない。

 ロランはロランの真実に従いシャルロットを牽制する以外選択肢はないのだ。


「出かけていたら城が攻撃された。魔法が使えない妻を置いて行くわけにはいかない。そばで守るために連れてきた」


 ロランはシャルロットを見極めるように睨みつける。

 

「……ロラン……なぜ?」


 シャルロットは唇を震わせる。

 

(……なぜ?)


 それはロランが聞きたい言葉だ。


「い、今から帰る所ですから……ご安心ください。もうお会いする事もありませんから、お許し下さい。」


「!?」


 だが、ジゼルは全く見当違いな言葉を口にした。


「ロラン様、あの記事に書いてあった偽りの優しさなどもういらないのです。安心して下さい」

 

 ジゼルは瞳に涙を滲ませながら穏やかな口調でロランを見上げる。


 ロランはその言葉を聞き混乱する。


(あの記事? 偽りの優しさ?)

 

 全く身に覚えないことを口にするジゼルにロランは言葉を失った。


 ジゼルが信じ込んでいるものの正体はわからない。だがシャルロットと対峙している今、隙を見せるわけにはいかない。そして、優先事項はジゼルをシャルロットの狂気から守ること、シャルロットに主導権を握らせてはならないのだ。


 ロランは混乱する頭と感情を振り払うよう深呼吸し、ジゼルの手を引っ張り自らの胸に抱き寄せた。 


 この一貫した行動だけが真実なのだ。


「え? ロラン様!?」


 ジゼルは驚いたように目を丸くしロランを見上げ、ロランはジゼルを抱く腕に力を入れる。


 得体の知れないシャルロットの罠にジゼルが囚われたとしても、ロラン自身がシャルロットを拒否すれば良いのだ。


 ロランはジゼルを胸に抱きしめながら爆発しそうな怒りを堪えシャルロットに言った。


「あの記事? 妻が言った言葉の意味はわからない。だがシャルロット! 私は妻の側を離れることはしない!!」


 ロランは絶対に揺るがない意志と一貫した態度をシャルロットに示した。

 シャルロットはその言葉に唇を震わせている。


 たとえジゼルを騙したとしてもロランがシャルロットを拒絶し続ければジゼルも真実を見つけられる。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ