表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【5/15 書籍、電子書籍発売】この結婚が終わる時  作者: ねここ
第二章 ロラン・ジュベール

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

117/120

今宵契りを交わす

いつもこの結婚が終わる時を読んでくださってありがとうございます。


この度5月15日、GAノベル様より書籍、電子書籍の発売が決定いたしました。

下記リンクより予約ができるようになりました。

https://www.amazon.co.jp/dp/4815637881

イラストは早瀬ジュン先生です。


よかったらイラストだけでもご覧ください。ジゼルが息づいています!

詳しくは活動報告、またはXをご覧いただければ幸いです。

ありがとうございました。





「今宵契りを結ぶ」


 朝食を終えた後、城に向かう準備をしながらジゼルに告げる。


 ジゼルはその瞬間目を見開き動きを止めたが、すぐに顔をあげロランを見つめた。


 心の温度を表すようなジゼルの眼差しは、戸惑いに揺れている。

 

 ロランは上着を羽織り、戸惑うジゼルに優しい眼差しを向けた。

 戦いが始まる前にジゼルの温もりを感じたい。そう言えたなら……そんな思いが胸を掠める。

  

「――わかりました」


 少し間を置きそう言ったジゼルの両手は胸の前で強く握られた。ジゼルが感じた喜びも悲しみも、握られた両手からこぼれ落ちる。

 

 その姿を見て心がズンと重くなる。ジゼルがニ回目の契りを思い出したのだとわかったからだ。

 あの最悪な契り。ジゼルを苦しめたあの契りはロランも思い出したくはない。だが心の奥底はジゼルに対する愛で溢れていた。


 ジゼルは一旦俯き、覚悟を決めたように顔を上げる。先ほどの不安が消えたような笑顔が目の前にある。ジゼルは目を細め、エミリーから受け取ったハンカチを差し出した。


 その優しい笑みを見て、制御していた感情が動き出す。

(もうあんな思いはさせない)

 ロランも目を細め、差し出されたハンカチを受け取り握りしめた。

 

 ジゼルに思いを伝えようと口を開く。

「…………」

 だが、誓約に縛られている今、何一つ言うことが出来ない。

 

 愛の誓約。


 愛の言葉はシャルロット以外伝えることはできない。ジゼルへの気持ちが昂った時、その感情に愛があれば制約により言葉が出せない。これこそが愛の誓約の真骨頂。口先の言葉ではなく心にくいこむ恐ろしい誓約魔法。魔力の高いロランはその魔力が故、拘束力も強い。

 

 シャルロットの束縛はロランを苦しめ続ける。

 何も考えず誓約を結んだ過去を毎日、毎時間、毎秒悔やんでいる。 


 返事を待っているジゼルに「なんでもない」という様に首を横に振る。言葉が紡ぎ出せない今、ロランにできることはそんなことだけだ。


  *

 

 できるだけ自然に、いつも通りを心がけ、馬車へと歩き出す。


 数日前、ブルレックの首都から国境に向け軍が動かされたと報告があった。大凡五千の兵士。国境に来るまでに四、五日かかる。そんなに多い人数ではないが油断はできない。防御魔法に特化している白魔法使いがいるブルレック軍は侮れない。


 それに比べこちらの兵力は三百。黒魔法使いはロランのみ。白魔法使いはいない。だが五千ならば、なんとか凌げるだろう。ランスロット達ジュベールの影もいる。兵士達と共に影の一人を国境に向かわせた。ロラン自身も明後日には国境に入ると決めた。


 だからその前に、ジゼルの温もりに触れたい。これはロランの切実なる思い。


 ロランは馬車の中からジゼルを見つめた。

 儚げなその姿に唇を結ぶ。

 

 ブルレックの王マチアスはジゼルを狙っている。マチアスにジゼルを奪われるなど想像もしたくない。

 指一本触れさせない。

 

 

 結婚して三ヶ月、もうすぐ四ヶ月を迎えるが、ジゼルに真実を告げることができない。

 多くの問題を抱えている状況はどれもジゼルを追い詰めるものだからだ。


 あの日、ジゼルが泣いていた理由はいまだにわからない。

 

 別邸の誰かが裏切っているのではないかという疑いが芽生え始める。疑いたくないけれど、言葉では伝えられない愛情を視線や態度で示しても、悲しげに笑うジゼルの姿に、ボタンを掛け違えそのまま進んでいるような現実に、説明のつかない違和感を感じ始めている。


「フー、問題だらけだ」


 ロランは深いため息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ