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ブラウン家の青天の霹靂

その日、サラ・ブラウンの生家では当主夫妻が青ざめた顔で手紙を握りしめていた。


ブラウン子爵家の領地は、王都から遠く離れている。

両親は領地から離れることはほぼなく、強固な人脈もない。

領地は特に貧しくもなく、困っていることもない。

兄は近くの領地の男爵家から嫁を貰って、既に家名を継ぐ準備をしていた。

父であるブラウン子爵は、サラには同じ子爵家か男爵家、もしくは裕福な商家あたりに嫁いで欲しいと考えていた。学園で出会いがあればいいし、身の丈にあった幸せを掴んで欲しいと思っていた。


サラは領地にいる時は、大人しくはないが、身の丈にあった幸せを望むような素朴な子だった。

少なくとも家族の目にはそう映っていた。


サラの社交デビューが公爵家の夜会になった時、子爵は恐れ多くも嬉しい気持ちだった。

公爵家の夜会ならば、身元のしっかりした、子爵家あたりの男性と知り合える可能性も多いだろうと。

それが、まさか自分が怪我をして、楽しみにしていた娘とのファーストダンスが踊れなくなった時は本当に不甲斐なかった。

そして、まさか公爵家の嫡男がファーストダンスを申し出てくれるとは、思いも寄らなかった。

主催の家の嫡男が、デビュタントと踊ることは何も珍しいことではない。

幸運を思い出に、学園でまた頑張ってくれているだろう。

ブラウン子爵はそう思っていた。


それが

まさか


「あなた、この手紙に書いてあることは本当なのかしら」

「ああ、信じられない…しかし、あの夜会でサラが公子と踊ったのは本当のことだ」

「でも、まさかサラが、婚約者のいらっしゃるエバンス公爵子息と恋仲になっているだなんて」

「エバンス家とウィルソン家の婚約は王命だぞ。確かに、サラは知らないかもしれないが…王命でなくとも、婚約者のいる者と必要以上に親しくするのはマナー違反だと知っているはずだろう」

「ええ。そもそもエバンス公爵子息が、婚約者様を差し置いて、うちのサラと懇意にするなんてそんな事…」

「だが、この手紙の送り主はウィルソン侯爵家のサイラス卿だ。王太子殿下の側近であるサイラス卿が、冗談や嘘でこんな手紙を送るはずがない。確たる物があってのことだろう」

「ああ、なんてこと…」

ブラウン子爵夫人は天を仰いだ。

「手紙には穏便に書いてあるが、これは、娘の味方して、王命である婚約を覆そうとするなら、王に反意があるとみなすということだ。家を潰されるかもしれない」

子爵夫人は顔色をさらに悪くし、今にも卒倒しそうなほどになった。

「私たちには守るべき領地と領民とそして息子達がいる。失うわけにはいかない」


子爵は、娘を案じる父の顔から、領地を守る領主の顔になった。


「急ぎ、王都へ向かう」


子爵夫人はなんとか倒れることなく、子爵夫人の矜持で頷いた。

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