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父と息子

「アンドリュー様、旦那様がお呼びです」


兄との話を終えて、部屋でくつろいでいたアンドリューは、執事の声を聞いて立ち上がった。


「すぐに行く」


「旦那様は執務室にいらっしゃいます」


「わかった。ありがとう」


父親との関係は良好だが、改まった話をするとわかっているので緊張していた。

知らずに廊下を歩くスピードが速くなる。

当主の執務室の前で、アンドリューは息を整え、身だしなみを確認し、ドアをノックした。


「父上、アンドリューです」


「ああ、入ってくれ」


ベルトラン・スミス公爵は執務机から立ち上がって、アンドリューを出迎えた。


「そちらにかけて話をしよう」


2人はソファに腰掛けた。

侍女がお茶の準備をして部屋から下がると、ベルトランは話し始めた。


「大体の事はサイラス・ウィルソンから聞いたようだな」


「はい」


「まったく、私が話す前に根回しをするとは、食えない男だ」


「サイラス卿は優秀な王太子殿下の右腕ですからね」


「辺境伯家から一報が入ってすぐに私の所に来て、隣国と縁のある令嬢を公爵家に迎える気はないかと言ってきた。我が家にとっても悪い話ではない。アルバートは辺境伯へ出す。うちには現状、女主人がいないから、公爵夫人としての教育をすでに受けている女性を迎えるのは我が家のためにもなるだろう。隣国とのパイプ、各所へ恩を売れるという利点もある。あとは」

「誰を嫡男にするかと言うことだ」


アンドリューは覚悟を決めた。


「私は、スペアとして当主教育を受けてきました。しかし、それをスペアだからと甘えた気持ちでは行なっていません。実際に自分で領地に向かったこともあります。兄上の手助けをするためにも有意義だと思い、検討してきました。これが今後の領地経営・改革案です」


アンドリューは持参した書類をテーブルに置いた。


「公爵家のため、己のために、上位貴族と優秀な下位貴族の子息と交流し、人脈を築いてきました。有力な商家の子息と懇意になり、会頭も紹介してもらっています。必ず、家の為、国の為に力を尽くします。ですから」

「私に公爵家を継がせてください」


そう言ってアンドリューは頭を下げた。


ベルトランは公爵の顔で書類に目を通した。

まだ詰めの甘い所はあるが、気付かされる点もあり、とても有意義なものだった。

(子の成長というのは早いものだな)


「アルバートもお前を推している。この書類もまだまだではあるが、よく出来ている。私は、お前を後継にする」


アンドリューは顔を上げた。厳しい顔をした父と目が合った。


「だが、慢心するな。常に周囲に気を張り巡らせ、俯瞰して物事を見るようにしなさい。決して奢ってはいけない。いいな」


「はい」


ふっと厳しい目を緩め、ベルトランは父親の顔になった。


「あとは、初恋を叶えられるように、頑張ることだな」


ベルトランの軽口に、アンドリューは驚きつつ答えた。


「無論です!」

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