ウィルソン家の庭にて①
「メアリー、君は知っていたのかい?兄上のこととか…」
「テイラー家の跡継ぎが変更するかも知れない、ということは昨日お兄様から聞いたわ。でもそれが私の婚約の話と繋がるなんて、考えてなかった。私もまだまだよね」
気心の知れた幼馴染同士だけになり、2人は砕けた口調で話し始めた。
「君は、本当はどう思っているんだ?フレッドはああ言っていたが、君は…フレッドを好きだっただろう?」
メアリーは答えなかった。
2人の間に沈黙が流れるまま、庭の奥のガゼボについた。
「このガゼボは変わらないな」
「小さい頃はよくここでお茶会の真似事をしたわね」
「…座ろうか」
アンドリューはメアリーをエスコートして、ガゼボにソファに座らせた。
しばし2人で静かに庭を眺めていると、侍女がティーセットを運んできた。
侍女がお茶を入れ、静かに下がっていくのを見ながら、メアリーは話し始めた。
「私のデビュタントは、我が家で母が主催して開いてくれた夜会だったわ。私のお誕生日だったの。私はお誕生日が遅いから、デビュタントを済ませていたクロエやアンドリューも来てくれたわよね。そして勿論、フレッドも」
「フレッドはお父様に許可をもらって、ファーストダンスを踊ってくれたわ。私ね、とても嬉しかったのよ。ダンスの後、ご挨拶回りをする時にもずっとエスコートをしてくれたわ。そして、少し休憩するために、このガゼボに来たの」
「そこで、『僕たちの結婚は王命によるものだけれど、僕は君が好きだ。生涯君を大切にすると誓うから、僕と結婚してください』って言ってくれたの。今でもその時の事をはっきり覚えているわ。私は嬉しくて、恥ずかしくて、どうしていいかわからなくて、とにかく頷く事しかできなかった。私も好きですって、言えなかった。それからなんだかタイミングもなくて、好きですって気持ちを言えなかった」
「だからね、先日、このガゼボで、将来を誓ってくれたこの場所で、『君の言葉には愛がない』って言われた時、ちょっと納得してしまったのよ。確かに、きちんと直接、好きって言った事ないものって」
アンドリューは静かに話を聞いていた。
言いたいことはあったが、メアリーはそれを求めていないと思ったからだ。
「私は口うるさかったと思うのよ。フレッドは、プライドが高いから、自分が正しいと思うかどうかだけで判断して、他人の話を聞かない事があったから、私が間に入って諌めることもあったし、私が代わりに物申すこともあった。特に学園に入ってからは、未来の公爵夫人としての人脈作りや家裁の事を公爵夫人に習う事に忙しくて、フレッドとじっくり話をする時間が少なかったと思う。だけど…」
「だけどそれは、君がフレッドを大切だと思っていたからだろう?」
アンドリューは初めて口を挟んだ。
これまで、いつだって気丈だったメアリーが、静かに涙を流していたから。
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