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はじまり
「君は、少し、気遣いを覚えるべきじゃないか?」
彼、フレデリック・エバンスの言葉に
彼女、メアリー・ウィルソンは顔を上げた。
「君は、僕のやる事全てに口を出してくるだろう?」
メアリーは記憶を辿った。
確かに、彼が学園でやろうとすることに口を出す事はあった。
「君が僕の事を思って言ってくれるなら理解出来るが……」
「君の言葉には、愛がないんだ」
フレデリックは一気に話した。
しかし、メアリーは黙ったまま、ティーカップの中の紅茶を飲んだ。
「愛がない君と、このまま婚約を続けるのが苦痛なんだ」
「だがこの婚約は家同士の約束。簡単に覆すことは出来ない。だから、君がもう少し、僕に対して言葉を控えてくれないか」
メアリーが音も立てずにカップを置いた。
「……わかりました。」
この日から、メアリーとフレデリックの関係は、大きく変わるとこになった。