表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/19

9 バレリア 「治療」

9.アンスールの家


 アンスールの家は村人のホールから程近い、木と石と漆喰でてきた快適な家だ。庭を抜けて玄関を開けると奥から妻のバレリアが出てきた。バレリアはすぐに孫のポーンに言いつけてタオルと水を用意させた。ポーン(10歳)はウル・ク(牡牛)らしい勤勉さと怪力を発揮して仕事を進め、アンスールとバレリアから過度の称賛とご褒美の飴をもらった。二人は孫を溺愛していた。二人には孫は15人いたがその全員を甘やかしていた。

 前庭の木のベンチに腰を下ろした大男たちは清潔なタオルと水でなんとか身なりを整えていた。その間にバレリアはコルネの手を取り、「診断」していた。バレリアはギミラ(薬の手)で、得意は「診断」。患者の手を取ることで、患者の体が手に取るようにわかる。

 体内の水の流れ、エネルギーの流れ、筋肉や血管の形や働き。皮膚の状態、内臓や脳の状態。コルネの素晴らしい肉体の輝きは、髪の毛一筋ほども問題がなかった。

 次にパントーの手を取った。中年を過ぎた逞しい男の肉体。長年酷使され、今強力な獣と戦って傷ついている。しかし慢性的な機能の低下は見られず、むしろ活性化していた。まだまだ下腹部に生命のマグマが活発に活動しているようだ。バレリアが息を吹きかけて魔法の力を送り込むと、パントーの肉体はたちどころに癒された。

 次は、若いデルの青年。バレリアは名前を知らなかった。見たところ多少外傷はあるようだが擦り傷だ。「診断」でも特に問題はなかった。パントー同様若々しいマグマが湧いている。年齢から言えば当然だ。狩人のデル二人はずいぶんグラファナス騒動に刺激を受けたのだろうか、生命力が活性化していた。また、これはギミラの本筋の力ではないが、その精神の素晴らしい輝きも感じられたのでバレリアは好感を持った。若者は治療が終わるとバレリアに丁寧に礼を言った。

 さて、ユエル(狼)はそこに横たわっていた。ポーンがきれいに傷口を洗い、特製の薬を塗っておいてくれた。これだけでもタフなユエルはすぐに回復するだろう。そこにメリッサがやってきた。さきほど村人のホールに常駐している怠け者のコーラに言って呼ばせておいたのだ。メリッサとバレリアは何度も治療の協力をしたことがあり、お互い信頼していた。

 ギミラが診断する。このユエルはフレアの中でグリフィナスと戦ったのだ。グリフィナスの爪と牙はこのユエルの皮膚と筋肉を切り裂いていた。致命的な傷はないものの大怪我だ。しかしすでに血は止まりかけている。ユエルの再生能力による。では身体の中はどうだろう。物理的には問題なかったが、魔法的には悪影響が出ていた。部分的に傷の周りに黒いわだかまりがある。バレリアはメリッサに目配せをした。するとユエルの身体に修復の魔法が流れ込んできた。ギミラはそれを細分化し最適化する。ギミラの力はそのわだかまりを癒し、ソーの力は筋肉をつなげ、皮膚を再生した。

 ギミラとソーの力を受けて、みるみる傷が治った。ソー(針と糸)のメリッサは目を見張った。バレリアとは何度も治療をしているがいつも驚く。メリッサはソーの中でも修復の力が秀でているが、この大怪我ではそれでもひとつづつ丁寧に治していかなければならなかっただろう。当の本人のウォーフも驚いていた。ユエルは肉体再生力があり、たとえ骨折でも一晩寝ればだいたい治ってしまうし、病気にも強い。しかし見てる間に傷口が消えていく様はそのユエルにも驚きだった。ウォーフは心から礼を言った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ