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8 アンスール 「秘密の魔法道具と図書館」

8.秘密の魔法道具と図書館


 「村人のホール」は役所兼集会所兼図書館でもある。建物は太古のマルーイエボー衆がもてる力を結集して作ったらしい。今はもう伝えられていない歌と技で。その後何度かの大規模な改修を経て現在の姿になった。

 図書館は半地下構造で、巨大なすり鉢のようになっている。2本の螺旋状の道がぐるぐると一番下の泉のへ続いていて、その道の壁面が全て本棚になっている。本棚は大人の背丈ほどある。

 泉は静かでまるで鏡面のようだ。その池のほとりは平らで、机がいくつか並んでいた。エメラルドの眼鏡をかけたエメルラルダはそこに座っていた。彼女はアイラ(井戸のグリフ)の図書館司書で、図書目録を詳細に調べていた。

 司書は大概キニかセッコなのだが、エメルラルダはアイラだった。アイラは目に見えた特別な力を発揮しないし、数も少ないので軽く扱われがちだ。水脈を発見できるということだが、井戸も川もあるこの村では特に力の発揮のしどころがない。しかし、エメルラルダはいい司書で、グリフいかんにかかわらず、図書館での仕事を楽しんでいた。何を仕事にしようと、楽しんでやることがこの村の流儀だった。

 そんなわけでエメルラルダはいつもここで働いていた。気温も一年中変わらないし、音もほとんどしない止まったようなこの空間で、緑色のレンズのメガネをかけて、今日も朝から目録の整理をしていた。ここはいつも来客は少ない。子供たちが勉強のために、暇な村人が楽しみのために、主に恋愛物語を読みに、セッコが昔の技術を探しに、長老が昔の記録を探しにやってくる。この図書館は豊富な蔵書量を誇るが、各グリフ衆が独自に自分たちに関係のある本を持っていたり、口伝でいろいろなことを伝えてたりするから来館数はそれほど多くないのだ。

 この日はパスの長老の1人アンスールが、うろうろしていた。エメルラルダは不審に思っていた。いままでアンスールを図書館で見たことがなかったし、特に本を探しているようでもなかったからだ。暇なら本でも読めばいいのに、随分手持ち無沙汰なようだ。

 その静かな図書館に、開館以来最大の音が響いた。


ドカーーーン!!


 それから水柱が立った。図書館中央の池にコルネとコルネにつかまった大の男が3人、どこからか落ちてきたのだ。

「コルネ!なんとまさか!念には念を入れてと思ってここで待っておったが、やはり念には念を入れておいてよかった!あの魔法道具が役に立ったのだね」アンスールは自分が濡れることも顧みずにコルネに走り寄り、しっかりと抱いた。

「おおコルネよ、お前は無事なのか?一体何があったのだ。いやいや、まだ喋らんで良い。さあさあ、すぐに私のうちに来なさい。そんな濡れたままでは風邪を引いてしまう」 

 アンスールはコルネしか目に入ってないようだったが、エメルラルダはむしろ、ずぶ濡れの大男三人が気になっていた。まるで2、3日森で過ごしたみたいな匂いのする狩人三人が、なぜ彼女の神聖で清潔な図書館の真ん中で水浴びをしているのかが気になっていた。

 コルネがアンスールの腕の下から振り返る。するとさすがにアンスールも三人のずぶ濡れ男に気がついた。

「パントー、ウォーフ。それではコルネは見事仕事をやり遂げたのか!素晴らしい、さすが我がコルネだ!」

「長老会にいうことがある」パントー池の中から真面目に言った。

 アンスールはため息をついて、それから言った。「まぁ、とにかくみんなしてうちに来なさい」

 というわけで、五人はアンスールの家へ向かった。その前にアンスールはエメルラルダの手に幾らか金を握らせ「このことは他言無用で」と言うのを忘れなかった。

 最後には、濡れた床とそれに憤っているエメルラルダを残った。

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