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5 マルーン 「集まった人々」

これまでのお話


怪獣グラファナスと遭遇した、子どもたちの知らせを受けて、呪い師のアナは、村の長たちを呼び出しました。

5.長老会とその他の面々


 さて、アナたちが待っているところに太った背の低い男が汗をかきながら走ってきた。ウル・ク(牡牛)のマルーンだ。都会の貴族に憧れる田舎の貴族、の真似をする三文役者みたいな服を着ているとアナは思った。あの上着だけでいくらするのだろうと思っていたが、これから話し合いをするのに機嫌を損ねる手はないので口には出さなかった。マルーンはウル・ク衆の代表だが、アナに言わせれば牡牛でなくネズミだ。ウル・クのくせにペラペラと内容のないことをしゃべるばかりで仕事はできない中年の男だ。ウル・ク衆が忍耐強くて寛容なことをいいことに代表として出てくる。どうも、貴族の真似事がしたくて仕方がないようなのだが、所詮は田舎の農夫に過ぎない。ちなみにこの村には貴族(地主)はいない。この辺りの人々にとって、貴族とかいうのは昔話に出てくる登場人物という認識だ。

 年老いたウル・クが歩いてきた。歩みが遅いのは両足とも膝から下が義足だからだ。まわりの人々より頭ひとつ以上でかい。筋肉が盛り上がっていて、ウル・ク(牡牛(おうし))としても特別でかい。その男が使っている義足はデマル老特性だ。ちゃんと生きてる足のように動くのだが、いかんせん目方が重すぎる。農業酪農組合の代表、ブ・タンク・シニアだ。話のわかる男だ。アナもよく知っている。今でこそ農業に力を入れているが、元々は村きっての暴れん坊だった男だ。今では、頭はすっかり禿げ上がり、代わりにもじゃもじゃの髭を生やしている。

 職人組合からはキニ(口)のサウリーナ女史が来た。まだ若いのに有能で弁もたつ。細身でキリリとしていて、鋭い。年下の女と結婚してからは少し丸くなった。

 狩猟漁労組合からはデル(鹿)の長老ホッシーノ爺さんがきた。今季の代表はパントーだがいま猟に出ているそうだ。パントーはむさ苦しいウル・ク(牡牛)みたいな中年男のデルで、狩りはうまいし人望もあるが、ウル・ク並みに愚鈍だと言われている。一方、年老いたホッシーノにはデル(鹿)らしい軽快さが失われていない。

 そこに素早いフルルー(鷲の目)の少年が走ってきた。あまりの速さに、急にそこに出現したかのように見えた。

「デマルが、今忙しいって」

 どうもセッコ・フルニ衆(石と骨とかまどの連合)の代表は来れないようだ。それにしても、こんな細っこいフルルーの弟子をあの爺さんは取ったのだろうか?いや、プシアキだろう。デマルじいさんはそれこそたくさん孫がいるから。アナよりだいぶ年上だが、まだまだ現役の偉丈夫だ。まぁ、今回の議題では特にこれといって意見はあるまい。フルルーの少年はそれだけ言うとぱっと何処かへ行ってしまった、フルルーらしく。

 小グリフ連合からは、まだ青年と言えるようなマルーイエボー(城壁)のイエルシーダが来た。今期は代表ではなかったはずだが、代表のピシス(魚)のロシールと言う中年女が用事があるとかで、代わりに来たそうだ。イエルシーダはよほど慌ててやってきたらしく、汗だくで、シャツのボタンも掛け違っていた。ボタン付きのシャツとは洒落たものだ。

 そして、また少年が走ってきた。今度はキニ(口)の少年だ。

「メジルは治療中だって。俺が言葉を伝える」

 メジルはギミラ(薬の手)の長老だ。彼には少年が念話で話を伝えるらしい。向こうにはキニ(口)の看護婦がいるから、何か意見があれば言ってくるだろう。メジルは、事実上の小グリフ連合のまとめ役である。彼の存在は他の衆と組合にも影響力が大きい。

 集まれる者が集まったところで、アナはケアールの話を話して聞かせた。アナの言葉は簡潔で要点を得ている。

 ネズミのマルーンがすぐに口を開いた。

「今は繁忙期だ。ここでウル・ク衆から人手を出せば、収穫に大きく影響することは指摘せねばならん」

 とるに足らないドードーの婆さんがもたらしたニュースより、今年の収穫の方が大事だというのは、マルーンにとって明らかだった。農業酪農組合のブ・タンク・シニアはウル・クらしくまだ口を開かない。そこにホッシーノが口を挟んだ。

「まあ、まず誰かが見に行かねばなるまい。それに念のために今年直す予定の石垣を直しておかねばなるまい。どうせやらなきゃいけないことだったんだから」

 そういうことで、他の長老たちもそれに同意したので、早速パントーに連絡をつけることにした。グラファナス探しには、優秀な狩人のパントーが適任だろう。また、職人組合はマルーイエボー衆と話し合って、石垣の修理をする手筈を整えることになった。この後、重い石を運ぶにあたりウル・ク衆の手を借りようとしたのだが、マルーンが人手を出し渋り、石垣の工事は遅れることとなる。


さて、次回はパントーを追跡するお話です

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