13 ジョージョー(いたずら小人)たち
普段グリフの力をできるだけ秘密にしているジョージョーたちも、グラファナスという脅威の前に、思案します。
13 ジョージョーたち
どのグリフ衆も自分たちだけの秘密がある。しかしジョージョー(いたずら小人)はとりわけ秘密の多いグリフだ。
シローは30代の男。グリフ衆集会で椅子に座り、テーブルの上でコーヒーの入ったククサ(木でできたコップ)を無意識にくるくる回していた。手も触らずに。
「シロー、やめてよそれ」ヨーコが言った。二十代の女である。そう言いながら、触らずに砂糖入れを動かして、さらにスプーンも動かして、自分の紅茶に砂糖を入れた。
「すまん」シローは習慣的に謝って、ククサの回転を止めた。
そんな2人のやりとりの間も、椅子が動き、本が飛び、窓が開いたり閉まったりしていた。
だからジョージョーの集会は嫌なのよ、とヨーコは思った。何から何までじっとしていることがない。どこで何が急に動かないとも限らない、と言うより、何かが絶えず動いている。それはある程度仕方のないことだった。というのも動物は大概、体のどこかを絶えず動かしているものだからだ。それがジョージョーとなると、あたりの物体全てにそれが当てはまる。とはいえ、もし誰かが、たとえば、そこにあるコップを取ろうとしたら、その体や腕が動くのが見えるし、その結果「ああ、そのコップを取ろうとしてるのだな」と周りの人は予測がつくし、そうやって体や行為がぶつからないようにお互い気が使えると言うものだ。しかし、ジョージョー同士ではそれができない。同じジョージョー同士でも力を感知し合うことができないからだ。それがヨーコをイラつかせた。
それどころか、直接形なら自分のしていることが大概はわかっているのだが、間接型だとそれさえもはっきりしない。勝手に物が動くのだ。
シローは直接型完全体で、ヨーコは間接型だった。つまりどう言うことかと言うと、シローは心で念じたとおりに物を動かし、さらに完全体なのでその感覚がある。たとえそれが暗闇の中でも感覚どころか視覚的にも見えている。これが、アスランのように同じ直接型でも不完全体だと、その感覚がない。だから直接目で見て力を振るうしかない。しかし、不完全体はその分出力が高い、つまり力が強いと言われている。
ヨーコは間接タイプだ。間接型は、念じたとおりに物が動くと言うわけではなく、まずモジョと呼ばれる「影」とか「しもべ」とか言うモノを念じ出す必要がある。ちなみに、ヨーコのモジョは小さなハムスターほどの丸いモノで、2本の足と2本の手がある。これは作り出した本人にしか見えない黒い影にすぎないが、本体の命令で動く。だからさっきヨーコは自分のお茶に砂糖を入れたとき、砂糖入れを動かしてさらにスプーンを動かして、といちいち念じてはいない。ただモジョに砂糖を入れるように命じただけだ。あとはモジョ、いやモジョたち(複数作り出せる)が勝手に動いてくれる。
どちらの力も一長一短がある。直接型は自分のやっていることがはっきりしてるが、同時に他のことはできない。間接型は一回命じて仕舞えばあとは自動的に物事が進んでいく。命じた本体は、モジョが何をするのか感知していない。直接型のジョージョーは間接型を無責任だと非難することもある。
「ささ、静かにしなさい。ジョージョーがこの問題に何ができるのか考えないとね」長老のネリが言った。もう八十を超える婆さんだ。
「伝統的には連携を取りながらも、基本は個人で戦うのがジョージョー流だ」同じく長老爺さんのベッロが言った。
「とは言え、モジョの合体魔法という手もあるのよ、ベッロ」中堅所の女、ミムラが言った。
「あくまで切り札だ!人の目の前でやる魔法じゃない」ベッロは言った。
「でもジルは出るんだろ?」シローが言った。
「ジルじゃないわ、シスタージル。それにシロー、隠れてばかりいて悪い評判が立ちやすいジョージョーから前衛への立候補で、ジョージョーの評判も上がったわ」シスタージルは自分の名前を訂正して、さらに自分のやったことの正当性をアピールした。シスタージルは二十代の美しい女性で、いまは、体の線にぴったりしたジャンプスーツを着ている。「戦闘服」だそうだ。
「まあ、目立つことが好きなシスタージルとしてはそれで満足なんだろうね」シローは皮肉ではなく、事実として言った。
「まあ、ジル、シスタージルがうまくやるなら、かまわないよ」ネリが結論づけた。うまくやるというのは、ジョージョーの力をうまく隠しながら、ウル・ク(牡牛)達の間で立ち回るということだ。何しろ、世間一般ではジョージョーは小さな物や人が持てるくらいの物を動かすと思われているからだ。しかし、本当のところ、ジョージョーで最も力の弱い物でも、馬車を馬ごと屋根の上へ持ち上げられた。不完全体で力の強いものとなれば、本人以外どれほどの力があるのか知る由もなかった。
長老のネリの知識によれば、ジョージョーの力はグリファナスのフレアに阻まれる。直接魔法での攻撃はできない。もっとも、どんな怪力の男だって素手では戦わないのと同じ理由で、ジョージョーも素手ではなく、剣や槍などを動かしてそれで攻撃する。物体の持つ質量と形と硬さという物がなければ、どんなに強い力でも無駄になってしまうというものだ。だからシスタージルには2本、デマル製の斧を渡した。あれならば多少なりとも活躍できるだろう。さてさて、ネリは考えた、いったいどうやって村のために戦おうか。村のために何をすればいい?生意気なミムラの考えは、あながち悪くないかもしれないね、ネリは考えていた。
さて、大人たちが慌てて話し合いを重ねている時、子供達はどうしているのでしょうか




