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12  ひとりぼっちのグリフ

各々のグリフ衆は集まってグリファナス退治の相談をしています。

でも、村でただ1人のケムリである売るにはいくところがありません

12. 一人のグリフ lonely glyph


 アンフォラとは壺のことである。油やぶどう酒を運んだり、穀物や木のみを運んだり、輸送や保存によく使われる器である。この辺りではよくつかわれている。

 あるセッコ(石と骨)のアンフォラ屋では、数人のセッコが素焼きのアンフォラを作っていた。セッコは職人が多く、この村で何か作っているのはたいがいセッコである。しかし、アンフォラ作りは伝統的な仕事で、工夫を凝らしたがるセッコの中ではあまり人気のある仕事ではなかった。しかし、親方のセッコは心が暖かく広かったので、皆楽しく働いていた。

「今日はもう閉めるよ。グリフ衆集会があるからね」親方は言った。今、村はグリフィナスのことでもちきりだ。職人組合の会合も先程終わったばかりだが、夜にはグリフ衆の集まりがあるらしい。親方の宣言の後、セッコたちはぞろぞろと店を出ていった。

 そうやって数人のセッコ(石と骨)たちが行ってしまうと、ピシス(魚)が一人残された。ピシスは数が少ないし、これと言って目に見える力がない。特徴としては生命力が強かったり、長く息を止めていられたりするし、力も強かった。が、ウル・ク(牡牛)やソーン(巨人)には敵わなかった。なのでピシス衆は川での漁をする者の他は、多くは職人や農夫として働いていた。


 気の良いセッコ(石と骨)たちと働いていると、普段はこんな寂しさは感じないが、こういう時は少し疎外感を感じる。しかし、すぐに年配のピシス(魚)がやってきて、連れ立ってピシス衆の集まりへ向かった。グリファナス狩りではピシスはそれほど役には立たないが、それでもなにかやることがあるかもしれない。二人は連れ立ってグリフ衆の集まりへ赴いた。

 ヨモツ(墓穴)、ナルー(波に乗るイルカ)、ジョージョー(いたずら小人)、ピシス(魚)、オー(沈黙)と言ったグリフ衆は数が少ないのだが、それぞれ秘密の集会を開いているようだ。

 さて、職人のピシス(魚)が少し寂しさを感じていた頃、村の反対側に行くところがない少年が一人いた。

 ケムリ(煙)は一人しかいないのでグリフ衆の集まりはない。家の人たちはみんなウル・ク(牡牛)なので、勇ましい集会へ嬉々として行ってしまった。ウルは仕方なくアナの家に来たが、アナは留守で、ツノの曲がったヤギが草を食んでいた。

 ランプに火をつけ、窓を開けて風を入れた。鹿のスープが残っていたので温めて食べた。そうしていると、黒猫が二匹やってきてウルの足元にまとわりついた。エラとイルーだ。二匹の黒猫は見た目はほとんど区別つかないが、エラの目は青く、イルーの目は緑色だ。赤ん坊の時からこの家に出入りしているウルは後ろ姿でも二匹の区別がついた。二匹には干し肉をなん切れか渡した。ふと、ウルは思った。猫は何年くらい生きるのだろうか。ウルは今年15になるが、この猫たちはウルが覚えている限りこの家にいる。猫というのは結構長生きなのかもしれない。

 ウルは1人でいることには慣れていたが、今はアナまでもいない。まじない師は他の人がわからないことをするので、疎まれがちなのだが、それでもやはりグリフ衆の集まりはある。ケムリでいると言うことは、呪い師でいることより、ある意味疎まれているようなものなのだなと、ふと思った。まあ、それは初めからわかっていたことだ。ウルの家は大家族だが全員ウル・ク(牡牛)だ。体が丈夫で力が強いことがそのグリフの力。小さくてひ弱なウルはすぐ病気になったし怪我もした。おばさんとおじさんはその度にオタオタして、ウルを抱えてギミラ(薬の手)のもとを訪れた。そのうち、おばさんは仕事で家を開けるときにドードー(土偶)のアナにウルを預けるようになった。(ウルを取り上げたのはアナである。ドードーは優秀な産婆でもあるのだ)。そう言うことはよくあることで、ウルはアナのところにいることが多くなった。なので、おばんさよりアナの方が少し母親っぽい感じになっている。いやむしろ寮母さんと言ったところか。アナはドードーなので出産や育児がうまいが、子供をかまう方ではない。上手いこと放っておくタイプだ。

 ウルは暇なので、見て覚えたドードー(土偶)の技を試してみることにした。乾燥してあるハーブを何種類か取り出してきて、庭に出ると、小さく焚き火をし、そこにそれを焚べた。ハーブの香りがして、煙が上がる。

 ドードー(土偶)が何かを占うときに使うハーブだとウルは思っていた。なのでケムリ(煙)のウルにはとくに意味はないはずだった。ウルはその匂いが好きなのだ。そうしながらケムリのウルは、焚き火からあがる白い煙を細くしたり、辺りに広げたりと、なんとなくいじっていた。

 その煙の中にチラチラとたまに何かが写る。羽虫でも飛んでいるのかと思ったがどうも違う。ウルの煙感知に何か引っかかる。新月の夜早くハーブの香りに釣られてきたのは妖精か森の精霊か。ウルはそういえば、アナのそばにいるときにちょくちょく、このようなことがあったことを思い出した。しかし、妖精たちはいつもウルには構うことなくドードーのアナと関わっていたし、ウルもあまり彼らに関心を持っていなかった。なので、彼らの話を聞いた事も無かった。

 妖精の方では、ハーブのいい匂いに釣られて出てきただけだった。いつもならそうやってここに来るとドードーのアナがいて、からかいがいがあるのだが、今日はいないようだ。一体誰が香を焚いているのだろうと妖精は思った。というのもウルは自分の周りに煙を纏わせていたので、人間の匂いを隠し、また妖精から魔法的に自分の姿を隠していたので妖精にはウルの姿が見えなかったのだ。それで、妖精たちは誰も居ないと思い込んで安心して話を始めた。


「森が騒がしいね」


「嫌な奴が来てる」


「乱暴者」


「どっか行けばいいのにね」


「子供たちは大丈夫かな?」


「子供たちは弱いよ」


「でも乱暴者は強い」


「竜の火があればねー」


「子供たちも持ってるのでは?」


「さぁ、まだ持ってるかな?」


 それから妖精たちは飛んでいってしまった。からかう相手のアナが留守だからだろう。そしてウルは寝てしまった。


さて、寝てしまったウルにはこれから何が起こるのでしょうか

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