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ショートショート6月〜5回目

テンションバリ上がり!!!…からの。

作者: たかさば

……あー、ツマンネ


変わり映えしない、火曜の…朝


いつもと同じ、メシ

いつもと同じ、しけた顔

いつもと同じ、テレビの音


……昨日は、面白かったな


見たことのないやつとの対面

初めて会うやつとのふれあい

見知ったやつの、意外な反応

見知ったやつの、おかしな表情


思い切り……はしゃぎ過ぎたせいかな

何もない日常が、つまらなく感じる


ああ……何か、いいことないかな


例えば、愉快な侵入者

例えば、柔らかくてうまいメシ

例えば、新しい仲間

例えば、やわらかい手触りのもの

例えば、聞いたことのない声

例えば、すごく良いにおい


……ふぅ


……ため息を一つ、ついたあと、いつもの作業に……没頭する


俺の、日課

俺の、使命

俺の、生きがい


………集中しろ


……集中するんだ


……より良いものを、生み出すために

……より心地よい日常を、過ごすために


気持ち良く……、出し切らねば


ため込んだものを、すべて!!

不要なものは、排除せねば!!


より糧となるものを、溜め込むために!!

より屈強な、自身を育むために!!


………!!!!!!


……おお!!!


なんという…素晴らしい出来だ!!!


……この艶!

……この重み!

……この存在感!!!


こんな素晴らしいものを生み出すとは…まさに、奇跡!!!


俺、すごくね?!

俺、かっこよくね?!

俺、めっちゃいい仕事してね?!


こんな芸術作品……、他の誰にも…生み出せやしない!!!


俺、めっちゃすげええええええええええ!!!


うひょぉおおおお!!!

断然テンション、上がって、キタ――(゜∀゜)――!!!


見ろ!!

この俺の産物を!!

見ろ!!

この産物を生み出した俺を!!!


すげえ、すげえよ!!

隠しても隠しきれない、俺の魅力!!!

すげえ、すげえよ!!

離れても漂ってくる、俺のオーラ!!

すげえ、すげえよ!!

体中にみなぎる、俺のパワー!!


あふれ出すエネルギーを抑えきれない!!

あふれ出す喜びが隠しきれない!!

あふれ出す本能に従う事しかできない!


おお…おおお、おお、おおおおおおお!!!


テンション、フルマックスうううウウウウウウウウウ!!!


地を駆け、崖をのぼり、山のてっぺんに立ち!!!

雄たけびを上げて、眼下を見下ろし!!!

一気に飛び降りて、勇姿を見せ付け!!!


うっひょぉおおおおお!!!


きんもち、イイイイイイイイイイイイ!!!


今の俺に勝てるやつなんざ、どこにもいねえ!!!

今の俺だったら、怖いものなんかない!!!

今の俺なら、何でもできる!!!


……よし!!!


今日は、台所の大冒険……、したらぁアアアアアア!!!


だッ!!!!

だだだ、ドドド!!!

がっしゅ、ガシュ!!!


タッ、タタタ…ぶに!!



「ちょっと!!!人の足を…堂々と踏んでくな!!!」



!!!


ヤバイ、めっちゃ…怒ってね?!

マズい、このままでは……!!!



……がしっ!!!



わあ!!!


肩を掴まれ、ひょいと持ち上げられ、顔をのぞき込まれて!!!



「も~!!ホントしっぽの長い猫はしょうもないな!!!なんで毎回毎回うんこしたあと暴れるのさ!!!しかも出しっぱなしで砂もかけずに!!!誰が拾ってると思ってんだ!!生暖かいブツをビニール越しとはいえ手で掴むこっちの身にもなってよ!!もうさあ、いい加減落ち着いたらどうなの!!!同い年の白い猫は優雅に脱糞するのに、アンタときたら…6歳にもなって恥ずかしくないんですか!!!いいですか、大人の猫というのは、うんこハイを乗り越えて紳士としてのふるまいを……」


あ、アアア!!!


お母さんの説教、始まった――(゜∀゜;)――!!!


俺これちょー嫌いなんだよね、あ~も~、早く終わってくんないかな…

なんで俺ばっかり…ほかの猫は涼しい顔をしてるのにさあ…


「目を逸らすんじゃない!!!そもそもアンタはこのうちに来てから一回も落ち着いたためしがないじゃないの!!あの温厚な姐さんを怒らせたのは伊達じゃないね、今頃雲の上から激しく威嚇してるよ?!天にのぼった時に相当おこられることになるから覚悟しとけ!!先代の黒すぎる猫だってめちゃめちゃ呆れてるからね、ここまで暴れたのはアンタだけだし!!イケメン猫のお気に入りのタワーも壊してさあ、絶対に折檻されるね!!!ホントおもちゃの扱いの悪い…てゆっか爪長くなってるじゃん、も~ホント成長期の猫ってのは世話の焼ける…はい、動かない動かない!!!」


ねえ、なんでこの人、毎回毎回くどくどくどくど…文句、言うの……?


他の猫はちょこっとシャーとかいうくらいなのにさあ…

お姉ちゃんだって背中撫でて笑うくらいなのにさあ…


はぁ~


「ちょ!!!いっちょ前にため息を…つくなっ!!!」


爪の先を丸くされた俺は、しょぼしょぼと…二階への階段を、のぼること、しか…できなくて……


……テンション、下がるわ~


なんかいいこと、ないかな……

弟、面白い子供…連れてこないかな……


バリ上がりだったテンションがすっこんだ俺は、いつものタオル置き場の上を陣取って……


大あくびをしてから、目を…閉じ……、ぐう………


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