68 我らが救世主!【セディーア視点】
クラウス・レンフォードの庇護下に置かれて数日。
エルフ族の面々は、これが夢ではないかと思ってしまう程、充実した日々を送っていた。
各々から報告を受け、全容を把握している族長のセディーアは、そのことを誰よりも深く理解していた。
まず何よりも大きかったのは、クラウスから直々に【冥府の大樹林】の管理権がエルフ族に渡されたこと。
クラウスは国王陛下の命によりこの地に来ており、その張本人直々の指令。
これはエルフ族がソルスティア王国の国民であると正式に認可が下りた証であり、長きにわたる逃亡の日々に終止符が打たれることを意味していた。
さらに、だ。
この大樹林には、自然に詳しいエルフ族であっても相手にしたくない魔物や植物が数多く存在している。
そのため、これまでも限られた区域に結界を張り、その範囲内で暮らすことしかできなかったのだが……クラウスはその対策も完璧だった。
なんと、精鋭揃いの王国騎士団まで貸し出してくれ、強力な魔術によって領地を広げる手伝いをしてくれたのだ。
既に開拓済みの荒地を中心にエルフ族は里を広げていき、その結果、たった数日で彼女たちの居住領域は驚くほどの拡大と発展を遂げていた。
深い感謝を込め、セディーアは何度もクラウスにお礼を伝えようとするも――
「何から何まで……クラウス殿、其方は本当に……」
「口は謹んでおけ、セディーア。俺は俺のために動いているだけだ。何も言うことは許さん」
「……!」
――こんな調子で、受け取ってもらえることはなかった。
これだけの施しを無償で行う、まさに聖人としか思えない心持ち。
セディーアが何度、感動に打ち震えたかは分からなかった。
さらに、これだけでは終わらない。
ここまでは里全体の発展についてだが、他にも喜ばしいことがあった。
それはクラウスの指令で諜報部隊へと所属することになった、エルフ族の若者たちについてだ。
彼女たちの多くは、数十年前、エルフ族がこの地に住み着き始めてからの記憶しかない。
周囲から見つからないよう身を隠し、淡々と生きるためだけに生活する……そんな物寂しい日々を送ってきた。
しかしクラウスの配下として活動する日々は、実に充実したものとのことだった。
特に、若者の中でも以前から情報収集などを務めていた金髪セミロングの少女リンシアは、クラウスの素晴らしさについて日々、熱く語り続けていた。
「我が主はとても素晴らしいお方です。一見しただけでは意図の分からない指示に思えるのですが、実行を終えた頃には全ての意図を理解することができ……そのどれもが非常に効果的かつ、善良な者のためになっているのです。マリー師匠にもお伺いしたところ、それが我が主という存在であり、これまでも同様の行為を多くの者に施してこられたのだとか……我が主の元で働けること、このリンシア、心より嬉しく思っています。この身全てを捧げる覚悟で、引き続き精進します!」
――と、心酔ぶりがすさまじかった。
元々、正義心に満ちていたリンシアにとって、クラウスの在り方がそれだけ魅力的だったということだろう。
しかも彼女たちにとっては、今回の『幻影の手』を遣わした主導者であるマルコヴァールを捕えるための捜査に力を尽くせることも喜ばしかったようだ。
エルフ族の問題をクラウスに全て任せきるのではなく、自分たちも解決に尽力したいという思いがあるからだろう。
我が主はそんな私たちの意を汲んでくれていると、これまたリンシアは目を輝かせながら語っていた。
何はともあれ、そんな風にして日々は過ぎていく。
「クラウス殿……心より感謝する。其方は救世主を超えた救世主だ!」
真正面からではお礼を受け取ってくれないことを重々承知しているセディーアは、一人小さくそう呟く。
するとその時、いまだにエルフ族から恨まれ続けていると勘違いしたままのクラウスが「はーっはっはっは!」と高らかに叫ぶ声が、辺り一帯に響く。
それを聞いたセディーアたちは、一層やる気を増して邁進するのだった。
キャラ紹介。
リンシア:数々の暗躍用魔術を得意とする、諜報部隊のNO.2。
クラウスを崇拝しており、その点でマリーとも非常に息が合い、長年クラウスに仕え続けその意図を理解できる(できていない)マリーのことを師匠と崇めている。
忠犬の資質あり。以上。
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