65 配下を手に入れた!(絶望)
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大樹林を燃やし尽くした直後、大量の悲鳴が辺り一帯に響き渡った。
「「「……………………」」」
騒がしい前方とは逆に、この場は奇妙な沈黙に包まれる。
少し後ろの様子を窺うと、騎士たちは青ざめた表情を浮かべ、マリーはいつも通りの笑み。
そしてソフィアは、なぜかまだ両手で自分の口を押えながら「クラウス様に、こんなに激しく求めていただけるなんて……」と何かをブツブツ呟いていた。
小声なためよく聞こえないが、そう大したことではないだろう。
それよりも、問題はこの悲鳴についてだ。
まず間違いなく、俺の魔法に何者かが巻き込まれてしまったのだろう。
「ク、クラウス様、これはいったい……」
すると、騎士の一人が困惑した表情で問いかけてくる。
もしかして、罪のない国民を間違えて殺めてしまったのではないか――そんな不安が騎士の表情からは見て取れた。
だが、ここで俺はあえて笑みを浮かべた。
(いや、むしろこれはチャンスだ)
国王から任された大樹林を好き勝手に破壊するだけに留まらず国民を殺めたとなっては、俺の評価は一瞬で地に落ちる。
それでこそラスボスを目指す悪役にふさわしいというものだろう。
だからこそ、逆に俺はこの状況を利用してやると判断した。
「問題ない。初めから全て、俺の計画通りだ」
「そ、それはつまり……?」
「直接見せた方が早い、行くぞ」
そう告げ、俺はマリーにソフィア、そして騎士たちを連れて歩き出した。
さあ、今度こそ、俺のラスボスとしての道が続いているはずだ!
◇◆◇
「「「お待ちしておりました、クラウス殿!!!」」」
「………………は?」
向かった先で俺を出迎えたのは、焼け野原と化した大地と、その奥に立つ100人を超える人々――いや、正確には違う。
彼女たちの耳は一様に先が尖り、男女関係なく極上の美貌を有している。
――すなわち、エルフ族の集団だった。
(何だ、何が起きている!?)
想定していなかった事態に、さすがの俺も少し動揺する。
エルフ族といえば、「アルテナ・ファンタジア」においては設定でしか存在せず、実際にキャラクターとして出現することはなかった幻の存在。
過去の確執のため、人族や魔族の前に出ることはないという話だったが……なぜ、そんな奴らがここに?
(いや、待てよ)
ふと視線を彼女たちの奥にやると、数百人は暮らせるであろう里が広がっていた。
つまり、エルフ族はここ『冥府の大樹林』を住処にしている。
そして先ほどの悲鳴から分かる通り、俺の魔法による犠牲者は必ずいたはず。
恐らく、それは彼女たちの仲間であり、仇を討つべく俺を待ち構えていた――大方その辺りだろう。
奇しくも俺は、エルフ族と人族の間に新たな因縁を生み出してしまったようだ。
確かソルスティア王国にはエルフ族との関係を復活させようという試みがあるが、住処すら分からないことで頓挫しているという話もある。
ここで関係をこじれさせてやれば、そのままアルデンから俺への悪評に繋がるに違いない。
(想定とは違ったが……むしろ、それよりもいい結果に終わるかもな)
俺がそう確信した直後だった。
先頭に立つ金髪ロングの女性が一歩前に出て、なぜか俺に深く頭を下げる。
「私は族長のセディーアという――そして感謝する、クラウス殿! 其方が『幻影の手』を殲滅してくれたおかげで、我らがエルフ族は命を救われた!」
…………ん?
待て、おかしな単語が聞こえて気が……
「今、『幻影の手』と言ったか?」
「ああ、そうだ! 奴らに我々の身柄が狙われており、まさに万事休すだったのだが……其方のおかげで見ての通りだ!」
そう言って、セディーアと名乗った女性は焼け野原となった大地に視線をやる。
正直、まだ全く意味が理解できていないが……どうやら俺が魔法で倒したのは一般人ではなく、マルコヴァールの配下である『幻影の手』だったらしい。
っていうか、待て!
元々俺はマルコヴァールを配下に加えるため、『幻影の手』との繋がりを明らかにする証拠を求めようとしていた。
しかしセディーアいわく、『幻影の手』は俺の魔法によって殲滅。
俺は自らの手で、肝心な証拠を消し飛ばしてしまった形になる。
「…………」
突然すぎる事態に思わず立ち尽くしていると、その間にも次々とエルフたちが前に出て、頭を下げていく。
「残虐な者たちを一網打尽にした先ほどの魔法、とても素晴らしかったです!」
「弱気を助け、強きを挫く……風に乗ったお噂を耳にした時から、その在り方に憧れておりました!」
「まさしく、貴方こそ私たちの救世主! 心より感謝いたします!」
排他的な種族とは思えぬ程、こちらに好意的な態度を見せるエルフたち。
呆然とする俺をを見て何か勘違いしたのか、セディーアが自身に満ちた力強い表情で口を開く。
「当然、言葉だけで礼を終えるつもりはない。救世主であるクラウス殿に深い感謝と敬意を示し――我らエルフ族は今日より、其方の配下に加わろう!」
………………は?
意味の分からない理屈に衝撃を受ける俺の後ろでは、騎士たちが一斉にわぁああああと歓声を上げていた。
「あのエルフ族が従属を示しただと!? これは奇跡だ!」
「クラウス様が仰っていた計画とはこのことだったのですね!」
「さすがは私のクラウス様です」
「……私の、ご主人様ですよ?」
それぞれが思い思いの言葉を口にしているが、もはや俺にはどうでもよかった。
くそっ、くそっ、くそっ!
いったい俺が何をしたって言うんだ!
極悪人のマルコヴァールを配下にするべく脅しの材料を探したり!
超強力な魔法による自然破壊でストレスを発散してみたり!
気付かないうちに誰かを巻き込んだりしただけなのに!
何でこうなったぁぁぁぁぁあああああ!!!
俺は歓声の中で、シクシクと涙を流すのだった。
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