63 幻影の手、壊滅 ①
後書きに【大切なお知らせ】があるので、そちらの確認もどうぞよろしくお願いいたします!
――クラウスが『冥府の大樹林』に来るよりしばらく前のこと。
マルコヴァールの配下である『幻影の手』は、幾つかの理由からこの地を根城にしていた。
一つは、自分たちの身柄を隠すのにこれ以上に最適な場所はないということ。
強力な魔物が数多く存在しているこの場所は、ソルスティア王国の国土でありながら、人が足を踏み入れることがない。
そして実力のある人間と魔族が共存する『幻影の手』からすれば、出現する魔物にも十分に対処が可能だった。
もう一つは、ある集団を支配下に置くため。
この環境を隠れ蓑にしようと考えた存在は、決して『幻影の手』だけではない。
その希少性と高純度な魔力を有しているという特性から、古来より様々な存在にその身を狙われた種族――『エルフ族』が集落を作り上げていたのだ。
彼女たちもまた、その類稀なる魔法の才能から、この過酷な環境をものともしなかった。
さらに、エルフ族はその歴史から代々身を隠し暗躍するための魔法に長けており、周囲から存在を隠し通してきたのだ。
しかし約10日前。とある偶発的な事件によって、エルフがこの大樹林に暮らしていることが『幻影の手』にバレることとなった。
その報告を受けたマルコヴァールはこれ幸いにと、エルフの集落を捜索するよう『幻影の手』に命令を下した。
配下にするにせよ、高値で売りさばくにせよ、エルフ族は彼にとって喉から手が出るほど欲しい人材だからだ。
それからしばらく経ち、『幻影の手』はとうとうエルフの集落を見つけるに至る。
そして強引に支配下に置くべく襲撃を行おうとした、ある日のことだった。
ドドドドゴゴゴゴォォォォォォォォォォン!!!
突然、大樹林全体に爆音が鳴り響いた。
『幻影の手』の面々は、一気に混乱に陥る。
「なんだ!? この爆音は!?」
「森の一部が何者かによって破壊されたようだ!」
「何だと!? 辺境伯からは何も聞かされていないぞ! いったいどうなっている!?」
遠く離れた自分たちの根城を巻き込みかねない程の馬鹿げた威力に困惑しつつ、彼らは素早くマルコヴァールに連絡を取った。
そして判明する。
なんと過去に魔王軍幹部を二人も倒したというクラウス・レンフォードがこの地に来ており、王命により大樹林を破壊しつくしているという。
まさか自分たちの居場所がバレ、殲滅を試みているのでは――『幻影の手』はそう戦慄した。
その後も毎日続く破壊。
もはやエルフの集落などよりも、自分たちの命と住処が脅かされる事実に彼らは戦々恐々としていた。
「いったい何がどうなっているんだ?」
「これだけの力を持っている者がいるなど信じられん……」
「このままだと我らの住処はもちろん、目標であるエルフの集落が先に滅ぼされかねんぞ……」
しかし数日後、風向きが変わる。
突然、破壊の規模が10分の1まで減少したのだ。
なぜかは分からないが、これ以上のチャンスはない。
「今日にでも戦線を後退させるつもりでいたが、これも何かの思し召しに違いない。数日以内にエルフの集落襲撃を完遂し、配下に加える。その後、安全帯地まで撤退するのだ――よいな?」
「「「はっ!」」」
リーダーを務める魔族・ガーディの言葉に頷く一同。
しかしこの時、彼らは知らなかった。
この選択が、彼らにとってさらなる悲劇を生み出すということを――
◇◆◇
――一方。
エルフの集落に暮らす者たちもまた、破壊の爆音が鳴り響く日々の中、選択の時を迫られていた。
「いったい、どうすればいいと言うのだ……」
一人の女性が不安げにそう呟く。
陽光を受けて輝く金色の長髪と、豊満な胸、そして肌の多くを露出した衣装に身を包む彼女の名はセディーア。
この集落に暮らすエルフ族の族長である。
彼女は現在、大きな悩みを抱えていた。
少し前。同族の一人が『幻影の手』と名乗る組織に遭遇し、身柄を狙われた。
何とか集落まで逃げ切れたものの、斥候の調査によると、彼らはその後も自分たちを捜索し続けている様子だった。
ありとあらゆる存在から身柄を狙われてきた過去を持つセディーアは、これを非常事態と判断。
仲間を守るため、集落全体を結界で覆い、なんとか身を隠していた。
しかし、その直後から毎日のように、森で爆音が鳴り始めた。
これは恐らく、『幻影の手』が自分たちを探すために片っ端から森を焼いているのだろう。
このままだと、集落の存在がバレる――いや、燃やし尽くされるのも時間の問題。
どう対応するべきか、集落の中で意見は真っ二つに割れることとなった。
「集落の放棄など無意味! 私たちに他の行き場所などありません!」
「しかし、このままだと全滅の恐れもあります。せめて子供たちだけでも逃がした方が……」
「それこそ無謀でしょう。ここは応戦すべきです!」
通常であれば、過酷な環境であろう『冥府の大樹林』。
しかしこんな場所にたどり着くまででも、セディーアたちは数十の拠点を転々としてきた。
ここに集落を築いてから既に数十年。
ここ以上の場所がそう簡単に見つかるとは、とても考えれられなかった。
さらに、だ。
答えが出るまで待ってくれるほど、『幻影の手』は優しくなかった。
爆音が収まり始めていたと思ったある日、彼らは結界を破り、集落に攻撃を仕掛けてきた。
「くっ……何としてでも追い返すぞ!」
セディーアの指示のもと、100人余りで必死に抵抗。
数ではこちらが上回っているが、敵には強力な魔族が何体も存在していた。
最終的には押し切られ、とうとう敗北するかと思った――まさにその直後だった。
ドドドドゴゴゴゴォォォォォォォォォォン!!!
「「「――――――――!?!?!?」」」
これまでで最大の爆音と共に、地獄の業火が集落の手前まで届く。
その業火は驚くことにエルフ全員を避け、『幻影の手』の者たちだけを完全に焼き尽くしていった。
長くなりそうだったので、前編後編に分けさせていただきました。
後編は来週投稿予定です!
それからなんと! 特大発表があります!
この度、GA文庫様より本作の書籍化が決定いたしました!
イラストレーターはもきゅ先生で、発売日は2024年12月15日(曜日の関係で、13日から書店に並ぶ可能性もあるようです)。
既に表紙やキャラデザも公開されており、店舗によってはSSなどの特典もついて来ます。
さらにさらに! ゲーマーズ様では、ヒロインたちのイラストを用いたB2タペストリーが特典となっています!
書籍用に新規に書き下ろしたイベントを元に仕上げていただいてより、もきゅ先生のおかげでとてもエロ……素晴らしすぎる仕上がりになっています!
有償ではありますが購入する価値が十分にあると思うので、ご予約などしていただけたら幸いです!
こちら、特設サイトのURLです。
https://ga.sbcr.jp/special/mobakuyaku/
ぜひこちらでキャラデザや特典の方をチェックしてみてください。
皆さんのイメージ通りか、それ以上のものが待っているはずです!
ここまでこれたのは皆さんの応援あってのことです。
本当にありがとうございます! この調子でアニメ化まで目指して頑張っていこうと思うので、ぜひお買い求めください!
どうぞよろしくお願いいたします!!!
それからもう一つお知らせがありますので、↓の大切なお願いにご協力いただけるとすごく嬉しいです!
【大切なお願い】
本日より新作
『死にゲー世界のモブに転生した俺は、外れジョブ【ヒーラー】とゲーム知識で最強に至る』を投稿しました!
https://ncode.syosetu.com/n8402ju/
タイトルから分かる通り、本作と同じゲーム内モブ転生物で、無双パートや可愛いヒロインなどが多く登場します。
ぜひモブ悪役と合わせて読み進めていただけると幸いです!
大変面白い出来になっていますので、ぜひご一読ください!!!
↓のリンクからもいけます!




