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ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた 〜なぜか歴代最高の名君と崇められているんですが、誰か理由を教えてください!〜  作者: 八又ナガト
第三章 冥府の大樹林編

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46 もう一人の主人公②【クロエ視点】



 決闘開始から、約五分後――




「【加速する矢(グンっと伸びろ)】! 【螺旋の矢(ぐるっと回れ)】! 【風を纏う剛弓(全部ブチ抜け)】!」


「な、何ぃぃぃ!? まさかこの俺が、ただの平民に敗北するなどぉぉぉぉぉ!」




 クロエの放つ弓が全て直撃し、アクスが地面にひれ伏す。

 こうして決闘はクロエの勝利で決着がついた。


「まっ、こんなもんね」


 勝利したクロエは、満足気にそう告げる。

 実際のところ、クロエとアクスの能力値(レベル)はほとんど同じ。

 だが普段から狩りをしていることや、つい二日前にブラゼク(強化後)と戦った経験があるおかげで、戦闘スキルに関してはクロエの方が何倍も上手だった。


「……納得できるかぁ!」


 だが、ここでアクスは不満げに声を張り上げる。

 クロエは一つため息を吐き、声をかけた。


「なによ、何か文句でもあるの?」


「当然だ! 平民の身でこの俺を負かすなど絶対に許せん! おい、お前たち!」


 アクスがそう叫ぶと、取り巻きの者たちも武器を構える。

 どうやら次は集団で襲い掛かってくるつもりのようだ。


「ええい、面倒ね」


 クロエは険しい表情で再び弓を構える。

 だが、その直後だった。



「おい、何だこの騒ぎは!」



 修練場全体に、凛とした声が響き渡る。

 視線を向けると、そこには青色のセミロングが似合う少女がいた。

 彼女はクロエに気付くと、驚いたように目を見開く。


「君は確か……クロエくんだったか」


「何よ、エレノアじゃない」


 2日ぶりの再会。

 2人が旧友のように話し始めるのを見て、アクスたちは表情を変える。


「こ、ここでエレノア・コバルトリーフだと……? それに、彼女と親し気に話すアイツはいったい……!?」


 エレノアは一年生でありながら、既に生徒の域を超えた実力者だと有名だった。

 加えて実家にも力があるため、学園で彼女に逆らおうとする者はいない。


 クロエたちが会話をしている隙に、アクスたちはそそくさと逃げていくのだった。



 その後、事情を聞いたエレノアはコクリと頷く。


「なるほど、経緯は分かった。彼らの行為については、私の方から生徒会に伝えさせてもらおう」


「助かるわ、エレノア」


「お礼を言うのは私の方だ。学園で起きたトラブルを解決してくれて感謝する」


 そんな会話を繰り広げた後、クロエは言いがかりをつけられていた女生徒たちに視線を向ける。


「……エレノア様と……親し気に……」

「平民で……強さ……」

「……とっても……こいい」


 3人は顔を合わせ何かをボソボソと呟いている。

 アクスという脅威がいなくなった喜びを噛み締め合っているというところだろうか。


 そう推測しながら、クロエは3人に近づいていく。


「大丈夫だったかしら、3人とも? 今後また絡まれるようなら、エレノアに相談してちょうだい。私が学園に来れるのは数か月後からだから」


 これでやるべきことは全てやり切ったと、満足して頷くクロエ。

 だが、彼女にとって最も予想外なことが起きたのは、この直後のことだった、


 女生徒三人はキラキラとした目でクロエを見つめる。

 そして、口を揃えてこう言った。



「「「ありがとうございます、クロエお姉さま!」」」


「…………は?」



 訳の分からない感謝の言葉に、一瞬頭がフリーズする。

 数秒後、ようやく言葉の意味を理解した。



「ちょ、ちょっと待ちなさい、お姉さまって何のこと?」


「戦闘時の立ち居振る舞い、卓越した弓と魔術の腕前……それはまさに、私たちが憧れとする理想像――すなわちお姉さまです!」


「言っている意味が分からないんだけど!? というか強さだけなら、アタシよりエレノアの方がよっぽど上でしょう!?」


「もちろんそれだけではありません! お姉さまは平民でありながら上級貴族に屈せず、エレノア様とも親し気にお話しされています。その在り方に私たちは憧れたのです!」


「な、なるほど……ってなに納得しかけてるのよ私! というか、そもそも学園生ってことはあなたたち、アタシより年上よね!? どう考えてもお姉さま呼びはおかしいでしょ!」


「いいえ! お姉さまとは()()()()()! 年齢など些細な問題です!」



 3人は次々とクロエがお姉さまな理由を語りだす。

 その勢いがあれば、アクスたちを追い返すことなんて簡単だったろうにとクロエは思った。


 その後も、3人の称賛は止まることがなく――




「「「お姉さま! お姉さま! お姉さま!」」」




 3人は一丸となって、お姉さまコールを始め出した。

 それを聞きながら、クロエは両手で頭を抱える。


 そして、



(何でこうなったのよぉぉぉぉぉおおおおお!!!)



 心の中で、力強くそう叫ぶのだった。



 これ以降、3人はクロエの気高さについて他の下級貴族たちに広めていく。

 その結果、『アルテナ・ファンタジア』において貴族に復讐するため入学した時とは一転。

 この世界においてクロエは、入学前にもかからわず学園内に『クロエお姉さまファンクラブ』が設立される程の人気を博するのだった。

次回からはお待ちかねのクラウス視点となります。

どうぞお楽しみに!

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