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ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた 〜なぜか歴代最高の名君と崇められているんですが、誰か理由を教えてください!〜  作者: 八又ナガト
第一章 モブ悪役転生編

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14 騎士団を弱らせよう!

 領民から不幸にも感謝されてから数日後。

 俺は執務室で頭を抱えていた。


「くそっ! どうして俺が動くと、常に結果がいいように受け止められるんだ!」


 まるで俺をラスボスにはしないよう、謎の力が働いているとしか思えない。

 どんなに手を尽くして周囲に被害を及ぼそうとしてもうまくいかない現状に、俺の心は追い詰められていた。


 しかしここで、俺は発想の転換を行う。


「いや、待てよ……それならいっそのこと、俺が表舞台に出ない手段を選べばいいんじゃないか?」


 シェフを牢獄に入れた際も、泥棒の少年を捕らえた際も、魔物を町に解き放そうとした際も。

 俺が中心になって動いたからこそ、あんな結果になったと考えられる。


 しかし、マリーの手によって汚れた招待状をウィンダム侯爵に送り返したことがあったが、それによって俺の評価が上がったという噂は聞こえてこない。

 となると、途中に俺以外の別の存在を挟むことによって、運命の強制力を回避できる可能性が高い。


「そうと決まれば、次は具体的な方法だな」


 俺は計画に巻き込む共犯者を誰にするか考え始める。


 この計画が成功すれば、俺だけでなく共犯者の評判も地に落ちることだろう。

 となると、俺が憎しみを抱いている相手を巻き込むことができれば、同時に復讐もこなせるということ。

 まさに一石二鳥だ。

 

「ん? これは……」


 ふと机の上を見ると、騎士団からの報告書が目に入った。

 先日のキングホーン・ボア捕獲に関する事後報告が書かれているようだった。


 そうだ、思い返してみればあの日俺が領民から感謝される羽目になったのも、そもそも騎士団の報告書を見たことがきっかけ。

 すなわち、全部騎士団のせいと言えるだろう。



 ちなみに騎士団の正式名称はレンフォード騎士団といい、俺が直轄する組織だ。

 騎士団の中には貴族も数多く存在し、その辺りはほとんどが平民の警備兵とは少し違っている。

 いずれにせよ領主直属の配下にもかかわらず俺に迷惑をかけるとは、許しがたい奴らだ。



「よし、決まりだな。共犯者は騎士団にしよう」


 共犯者選びが終わったところで、最後に具体的な作戦を考える。

 騎士団に復讐すると同時に、俺の評判を下げる革命的方法は何かないだろうか。


 騎士団の者たちが誇りとし、さらに民から信頼を向けられる理由はその強さにある。

 ということは、その強さという牙城(ピース)を崩すことが今回の計画成功に繋がるはずだ。


 作戦内容をより詳細にいうと、何らかの手段で騎士団の戦力を削いだうえで、重大な作戦に向かわせる。

 するとどうなるか? 当然作戦は失敗する。

 騎士団への信頼がなくなると共に、それを命じた俺の評判は今度こそ地に落ちることだろう。



「ふはははは! いいぞ、考えれば考えるほど素晴らしい作戦だ!」



 俺はひとしきり高笑いしたのち、騎士団の駐屯地に向かうのだった。



 ◇◇◇



 レンフォード騎士団の団長を務めるローラ・エンブレスは、もともと領地すら持たない弱小貴族の娘だった。

 しかしながら武術の才には恵まれ、20代前半という若さにして団長の座についた。


 剣を振るい、民を守ること。

 それだけを目標に日々修練を重ねることで、他の中小領地に比べて非常に高い戦力を維持してきた。

 そのことがローラにとって何よりの誇りでもあった。



 だからこそ、領主のクラウスから『一か月間の強制休暇を与えると共に、その期間は一切の訓練・戦闘禁止』が命じられた時は驚きに目を見開いた。



「なぜだ!? 私たちの戦力が維持されているのは、練度の高い日々の訓練があってこそ! それを禁ずるなど、領主様はいったい何を考えているんだ!?」


 憤慨するローラだったが、そんな彼女に賛同してくれる声はごく少数だった。


 多くの者が突然与えられた長期休暇に喜び、だらしない日々を送り始める始末。

 さらには、



「まあまあ、領主様の命令なんだし、何か意味があるんでしょうよ」


「そうですよ。先日のイージス・バードだって、領主様の機転がなければ町が崩壊していたかもしれないんですから」


「団長もこれを機に、少しは休むことを覚えましょうよ」



 他の団員たちは盲目的にクラウスのことを信じきっていた。

 確かにクラウスはここ最近、数々の素晴らしい手腕によって領民のためになることを行ってきた。

 しかし、だからといってこの命令に何かの意味があるなど、ローラにはとても信じることができなかった。


「私たちがくつろいでいる間に、敵が攻めてきたらどうするんだ? 警備兵だけで町を守るのは不可能だろう!」


 そう考え、ローラはたびたび一人で剣を握り、極秘で特訓を行おうとした。

 しかしその度にタイミング悪くクラウスが現れるせいで、それすらも叶わなかった。

 周囲は領主を素晴らしいお方だというが、ローラだけはクラウスが悪意を持って自分たちに接しているとしか思えなかった。



「いったい、この領地はどうなってしまうんだ……」



 空を見上げ、絶望の言葉を零すローラ。



 しかし、それから一か月後。

 クラウスの命令の裏にあった真の狙い(・・・・)を理解し、ローラは思い知ることになる。


 クラウスが偉大なる領主であると同時に、稀代の策略家であったということを!

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[一言] 知 っ て た
[一言] マリーさんの 恋敵登場
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